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襲撃 Ⅲ

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「さて、これで全員だね。」
 
 拠点に戻るとそこには村の人間が集まっていた。
 やはり数は少なく、被害者も出たのだということが分かる。
 
「さ、彼等の処遇はアルフレッド君。君に一任された。生かすも殺すも君次第だ。」
「……。」
 
 正直、全員殺したい。
 が、レインさんに言われた事を思い出す。
 果たして、全員が全員殺されなければならない程の事をしてきたのか。
 
「……。」
「ひっ!」
 
 ふと、村人の一人と目が合う。
 恐怖に満ちた目だ。
 この火事も俺が引き起こしたのだと思われているのだろうか。
 根拠もなく、俺を犯人扱いしているのか。
 
「やっぱり全員……。」
「お兄ちゃん!」
 
 すると、村人の中に手を振っている子供の姿があった。
 その子供はクマのぬいぐるみを抱えていた。
 笑顔で、手を振っていた。
 
「……全員、どうするんだい?」
「……殺しません。」
 
 レインは少し嬉しそうな顔をする。
 遠巻きにグロールも見守っているが、どこか嬉しそうだ。
 
「復讐を続けていたら、違う俺を生み出してしまうかも知れません。もう、私怨で殺しはしません。」
「私達との契約はどうするんだい?」
 
 そうだ。
 そのことがあった。
 だが、断るつもりはない。
 
「勿論、続行します。勇者を殺し、魔王を殺します。」
「うん、なら良い。では、皆さん。各々好きに行動して下さい。我々はこの後の支援は致しませんので。」
 
 すると、生き残った村人達はあからさまに不安になったようだった。
 
「そ、そんな!村はもう人が住めるところじゃないぞ!」
「もうすぐ冬だ……。全員凍え死んてしまう!」
「その前に飯も無いぞ!」
 
 隣村までかなりの距離がある。
 数日かかるのだ。
 雪が降る前に移動するのは厳しいだろう。
 それどころか明日食う飯さえ無いのだ。
 
「……レインさん。」
「はい。どうしましたか?」
 
 レインさんはずっと俺の側にいてくれていた。
 恐らく、これから俺の言うことも予測がついているのだろう。
 
「近くの村まで『ワープ』させてあげられませんか?」
「勿論です!……と、言いたいんですが、人間の村は行ったことが無いんですよね。近くまでなら行けますけど、それでも二日はかかる距離ですよ?」
 
 少し考える。
 やはり、あれしか無いか。
 
「なら、俺もついていきます。そこで『キャンプ』を展開すれば雨風は凌げるでしょう。」
「はい!じゃあ、行きましょうか!」
 
 すると、一人の若者が前へと出てくる。
 その青年には見覚えがあった。
 確か、自警団の一番の若手だった気がする。
 将来は王国の警察になりたいとか息巻いていた。
 
「待ってくれ。俺はここに残る。」
「……何故?」
 
 男は明らかに敵を見る目でこちらを睨む。
 少し青みがかった髪は少し俺と似ている。
 少しでも状況が違えば虐められていたのはこいつだったかもしれない。
 
「お前は犯罪者だ。村に火を放ったのもお前だろ。何を考えているのか、見定めさせてもらう。」
「見定めて、どうする?」
 
 男はまっすぐこちらを見る。
 そういえば、自警団の中でウザいくらいに正義感の強いやつがいると聞いたことがあるが、こいつなのか。
 
「場合によっては、殺す。」
「将来警察を目指す人間の発言とは思えないな。警察なら捕まえて法廷に立たせるところだろ?」
 
 男は少し考えた。
 
「本当は今すぐ殺すつもりだった。お前がここにいる全員を殺すだろうと思っていたからな。だが、そうしなかった。それどころか助けようとしている。意味がわからない。」
「……俺も分からんよ。」
 
 こいつは見て見ぬふりをしていたやつだろう。
 特に恨みがあるわけではない。
 
「まぁ、好きにしろ。どうせお前のスキルで俺は殺せないだろうしな。よろしくなエドワード。」
「……好きにするさ。あと、気安く呼ぶな。俺は年上だ。」
 
 まぁ、こいつくらい残っててもどうということは無いだろう。
 好きにさせておくか。
 
「あ、そういえば。あの二人はどうなったんですか?」
「あぁ、あの陽炎部隊の二人ですか?あの人達はグロール副隊長お得意の拷問にあってます。」
 
 物凄い笑顔で可哀想な事を言うレイン。
 彼女達からしたらそれが普通なのだろう。
 
「ま、まぁ、なら任せておいて大丈夫ですね。行きますか。」
「はい!」
 
 エドワードを残し、村人達を『ワープ』させる。
 こんなにも楽が出来るのはレインさんのスキルのお陰である。
 感謝しなければな。
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