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第25話 エゲツねぇ……

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 俺の丸薬を食べたワニの化け物だが…なんか暴れ始めた。
 別に俺達の元に来る訳でもない、その場で尻尾をブンブン回しながら足踏みをしている。

「ウゲゲゲゲゲッ!」

「なんかワニとは思えない鳴き声だな」
「あれは……苦しんでいるわね」

 更にダイルは激しく暴れる、そんなに不味かった? 俺のお手製丸薬。
 なんか面白いので見ていると、あのワニ口から泡を吹き始めたぞ。

 そしてぶっ倒れた………マジか。
「なあ、あの丸薬本当に毒薬とかじゃないんだよな?」

 一応その筈なのだが…。
 タニアがそっと近づき生死を確認する。
「……生きてるわね、本当に気絶してるだけみたいよ」

「その丸薬。間違っても料理に入れるなよレックス」
「……気をつけます」

 どうやら俺の丸薬、結構使えるみたいだな。
 あまりの不味さに魔物が気絶するって相当だぞ、まさかそこまでの効果があるとは。

 まさかオッサンのお手製って所に更なる不味さが加わった可能性を否定出来ないんだよな。
 いや、まさかな…オッサンが作ったから更に不味くなったなんて事はないだろう。

 その後はツバイパーティがダイルを解体する、どうやらワニらしく肉も食べるし革も売れるらしい。

 しかし肉は腐らないのだろうか?
「肉は全部食うぞ、少し土臭いがちゃんと食べられるからな」
「旅の途中で狩りして食料を調達するのは基本よ」

 成る程、ツバイとタニアが言うのならそうなのだろう。
 あのザイルってヤツ?さっきから新人冒険者の女子二人とだけ仲良く話をしてるよ。

 解体が終われば直ぐに出発である、そして数時間後、俺達は目的地である湖に到着した。
 かなり広い、そして綺麗な湖である。

「よしっここで野営するからテントの設置をするんだ、そしてそれが完了したら今度は釣りについて教えるぞ」

 釣りか、確かに魔物をひと狩りするよりかは俺にあった食料調達方法だ。
 この世界の食べても問題ない魚について少しでも聞いておきたいな。

 もちろん釣り道具とかない、なんとその場で自作するらしい。
 なんか子供の頃に作った様な木の枝に糸を括り付けたヤツだ、こんなんで釣れるのか?

「水場で気をつける事は、やはり魔物だ。水場に棲んでる魔物は水を飲みにきた生物を不意打ちして仕留めるヤツが多いからな」

 成る程~と新人冒険者男子二人と相槌を打つ。
 自分よりずっと強い魔物に不意打ちまでされたら俺死んじゃうよ。

「その手の魔物がいるかどうか見分ける方法とかないんですか?」
「そこは魔法かスキルの出番だな…魔物も馬鹿ばかりじゃないから中々に難しいんだ」

 難しいのか、俺の丸薬を湖に放り込んだらいけるか?
 ……駄目だな、魚が食えなくなる可能性を感じる。可能性の話だけどな。

 そして調合によって手先のきょうさがアップした俺はテキパキと釣り竿を自作する。
 よしっ完成だ。

 次は釣りだ、この湖ではとくにこれといった穴場はないらしくどこで釣っても大差ないとのこと。
 まあこれだけの人数で釣ってるんだ、多分皆で食える量は確保………出来るか?

 そして二時間、俺達は本気で頑張った。
 しかし全く釣れなかった、川での釣りを完全に舐めていた。

 と言うか熟練冒険者のツバイパーティの連中もゼロだった、使えね……いや。
 なんとタニアがめっちゃ釣っていた、何あれ凄い。一人ずつが三匹は食える数を釣っているぞ。

「タニア凄いですね、一人だけ大量じゃないか」
「ああっアイツは釣りのスキルを持ってるからな」

 なにそれ、スキル一つでここまで差が出るってのか?マジで凄いな。
 マイルのグリフォンも確かスキルが必要だったような……。

 くそっ俺もスキル欲しい、魔法が使えないならチートなスキルが……駄目か。あのクソガキ神は本当にクソなので俺になんの力も寄こさないんだよ。

 あのクソガキ神を思い出すとムカついてくるので今は別の事に集中する。
 今日はワニ肉と魚で料理する、まあ香辛料を使って焼くだけだがな。

 ちなみにこの世界の魚は普通に魚だ。
 色が緑色とか黄色とか赤色の……まあ川魚としちゃ珍しい色合いだが俺の世界にもカラフルな魚はいるんだ、このくらい…。

「なんだ?この魚にザリガニのハサミや足が生えてるヤツは」
「何ってクラブフィッシュだよ、美味いぞ?」

 異世界舐めてたわ。

 そして湖に魔物はいなかった、まあ本当はいるのかも知れないが襲われなかったのでいないと思っとこう。
 もう少し湖から距離を取ってテントを張れば良かった。

 そして野営をして翌日、今度は新人だけで釣りを挑むが大敗。朝ご飯はワニ肉だけとなった。

 その後湖を出発して魔物との戦闘を二度ほどこなして(この時にツバイパーティが大活躍した)また野営。

 そんでカルカトにやっとの事で帰還した。その後は報酬とか倒した魔物の素材を換金(俺はワニ皮の金の一部しかもらえなかった……クソ)して解散となった。

 んで宿にて。
「ぐっ!……き、筋肉痛がまた……」

 あの丸薬は飲んでたのに、どうやらファンタジーな世界のアイテムでも効果には限度があるらしい。
 当たり前か。

 そして翌日もしつこい筋肉痛に悩まされながらまた寺院にて新たなレシピを求める俺だった。

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