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Snow
しおりを挟む「命の雫を吸ったヴァンパイアでも1つだけ殺す方法がある。銀のナイフで心臓をひと突きすればいいらしい。僕みたいに腕に刺さっただけなら徐々に灰になるだけ。まぁそれも普通のヴァンパイアからすれば致命傷だけど、命の雫を吸ったヴァンパイアなら再生の力の方が早いみたい。でも心臓をひと突きすればすぐに死んで灰になるって」
「それとソウに何の関係が?」
「周りにはきっとあいつとあいつの仲間がいると思ったから全部説明は出来なかった。だから一言だけ伝えた。もしヴァンパイアに襲われたらそのナイフで心臓を刺せって。そして銀のナイフを渡したんだ」
「ソウは? 受け取ったのか?」
「うん。最初は戸惑ってたけど、ちゃんと理解したみたい」
「ありがとう」
「いいんだ。お父さん達が死んでからアリスは笑わなくなった。だけど彼のおかげで笑顔を取り戻した。僕じゃダメだって気付いたから、せめてアリスの笑顔を守るために何かしたいって思った。それだけだよ」
「お前は永遠の命、欲しくなかったのか?」
「そんなものいらない。今も過去も未来も僕が欲しいのはアリスだけ。アリスがいないなら永遠の命なんて何の意味もないから」
「ユキ……ごめん」
「……4本の薔薇の意味。知ってる?」
「ソウが教えてくれた」
「そっか。迷惑だった?」
「そんなことない。最初は戸惑ったけど嬉しかった。俺のことをそんなふうに思ってくれていたなんて知らなかったから」
「ずっとアリスだけを見てきた。小さい頃からずっと。死ぬまで気持ちは変わらないよ。ってそれももうすぐか!」
とユキは笑った。
「ソウが間に合えば……」
でももう時間がない。
「大丈夫だよ。気にしないでいいから」
「何か俺にできることはないか?」
「じゃあひとつだけ」
「何だ?」
「僕が灰になって消えるまで……抱きしめてくれる?」
「……あぁ」
俺はユキが折れそうなくらい抱きしめた。
「ごめん。本当にごめん……!」
「ううん。今までありがとう。幸せになってね。僕の大好きな人……」
それからどれだけそうしていたのかはわからない。
ユキが灰になったあとも、残された服を抱きしめながら俺は初めて涙を流した。
しばらくしてその服を畳んでソファに置いた。
テーブルの上には俺たちが好きだったワインが入ったグラス。
畳んだ服の上には母さんがユキのために植えたSnowを4本。
「俺もお前のことが好きだった。友人として、良き理解者として。さよなら。大切な人……」
俺はまだ涙を止められないまま、テーブルの上に残したグラスに乾杯をした。
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