嫌われ王子はしてはいけない恋をした。 ~彼と私の1年間~

虹色金魚

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10、アレコレ。

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 ジャスと暮らし初めて10ヶ月。

 寒い冬に突入したシェールズ国は、雪まで降っていた。

 毎日ではないにせよ、窓の外は真っ白だ。暖炉の火は絶えず燃えていて、ジャスかユノが気付いたときに薪をくべていた。

「今日はかなり寒いと思ったら、朝から雪でしたね。」

 暖炉の前のソファの上で2人、大きな窓から外を眺めながら寄り添う。ユノの腰はジャスに抱き寄せられていて、ユノは嬉しそうだ。

「本当だね、ジャス先生。 今日は止まないかもしれませんね。」

 ジャスがすぐ横にあるユノの銀髪にキスを落とす。ユノは恥ずかしそうに少しだけ肩をピクッとさせた。ジャスのことを恋愛的な意味で好きになってはいけない。彼は教育係としてユノに付いてくれているのだ。それはユノにだって分かっている。だけど……だけど。
「あっ、ロイが来てくれましたよ。私が出ますね!」

 窓からロイがカートを押しながらやってくるのが見えたので、ユノは考えてもどうしようもないことを振り払って離宮の玄関に飛んで行った。

「おはよう! ロイ、ありがとう。 大丈夫だった?」

 ここの所いつもなのだが、ユノはロイの様子がちょっとおかしいように感じる。雪が降っているからだろうか。

「あっ、あぁ。 大丈夫だよっ! 雪、慣れてるからさっ、おれっ!」

 全く目が合わないのだ。オロオロと視線が泳ぎまくるロイが不思議でならないが、とにかく健康そうではあるので心配はしていない。

「そう……なんだ。 」

 少し悲しくなって微笑むも、ロイに、

「ほら、冷めちゃうだろ? 折角の出来立てだからさっ。」

 と言われてしまえば。

「うん。」
 と返事をしてカートを中に入れ、ロイに「また後でね」と挨拶をした。一瞬だけ目が合ってユノは嬉しくなった。







 ロイはダッシュでユノの離宮から離れると、しゃがみこんで赤くなった顔を両手で覆った。

「最近のユノ様、なに? あれ。もしかして色気ってヤツなのか?! とにかく何かが駄々漏れなんだよぉーっっっ」

 小さい声で悪態をついた。







「さぁ、ユノ様。 いただきましょう。」

「はい。」



 ソファに2人並んで食事にする。

 以前は対面だったが、いつの頃からか横並びになった。



「ユノ様、今日の予定なのですが。」

 朝からホカホカのスープやふかふかのパン、スクランブルエッグや縮み野菜の炒め物等をいただき幸せなユノは、ジャスを見上げた。

「はい。」

「この後は座学を、午後は……、また気持ちいいことをしましょうね。」

 顔を覗き込まれて意味深に囁くジャスに、ユノは顔を真っ赤にして「はっ、はいっ、よろしくお願いします。」と言った。 心臓はばくばくするし、ジャスの顔をうまく見られない。






ーーーーーーーーーーーーーーーー




本日2話目です。




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