嫌われ王子はしてはいけない恋をした。 ~彼と私の1年間~

虹色金魚

文字の大きさ
9 / 19

9、驚きしかない

しおりを挟む
「スワニ帝国とシェールズ国では致命的に違う所があるのですが、それは何かご存知ですか?」

 ジャスと暮らし初めて半年程たった頃、ユノは難しい質問をされていた。

「ち、致命的に……ですか? 何でしょうか。 魔法……もそうですが、女性でも家督を継げる、とかでしょうか。」

「それも正解です。 ユノ様、かなりいい線いってますよ。 他にもあるのです。」

 いつもの四阿で、いつものように井戸水に足を浸し、2人並んで仲良くお勉強だ。 夏も盛りにって、色とりどりに花が咲き乱れ、夏にしか見られない虫が愛想を振り撒く。

 ユノは少し伸びた美しくキラキラする銀色の髪を耳にかけ、透き通るようなエメラルドグリーンの大きな瞳をジャスに向け、柔らかい白肌に右の掌を当てて、果実のような淡いピンク色の唇をツンと付き出している。

 何かを考える時の癖らしい。

 ジャスはそんなユノをすぐ隣からジッと見守った。

「ふふっ、難しいですか? そんなにツンとしてると唇が取れてしまうかもしれませんよ?」

 ジャスの男らしく筋ばった手がゆっくり動き、人差し指で優しくユノの唇をノックする。

「何か分かりましたか?」

 まさかジャスが唇に触れるとは思わず、顔を真っ赤にして口元を押さえたユノは、ちょっと涙目になりながらジャスに、

「分かりません、申し訳ないです……。」

 と、消え入りそうな声で謝った。

「ふふっ、いいのです。 シェールズ国では思いもしないようなスワニ帝国のルールですから。」

 ジャスはユノの腰を抱き、ユノの体を確認するように撫でた。 肉付きは更によくなり、ジャスを安心させる。 ユノはくすぐったさと安心感を覚えて、ついその掌にすり寄った。すると、ジャスは囁くようにユノにとって驚きの事実を告げたのだ。

「実は、スワニ帝国では男性同士、女性同士でも公に婚姻することが認められています。 もちろん貴族も例外はありません。」

 ジャスは更に畳み掛ける。

 掌にグッと力を込めて、ユノを抱き寄せ、まるで親密な恋人達が秘密の話をするように耳元で囁いた
「ユノ様のお相手の方なのですが、王族の、男性です。」


 ユノは目を見開いた。


 だって、シェールズ国は必ず男女婚をする決まりがあり、男同士、女同士は「禁忌されるもの」とされていたから。


 ユノは自分がどうなっているかも忘れて驚愕のままジャスに話しかけた。


「す、スワニ帝国では、男性同士でも女性同士でも、けっ、結婚することができるのですか?」


 ジャスとの距離も忘れて顔を見上げれば、吐息が触れてしまいそうだった。 目の前に急に広がったご尊顔に本能では恥ずかしくなり目を反らしそうになるも、本当なのか確かめたくて必死にメガネの奥の青いジャスの目を見る。 ジャスとの初めての距離にユノの顔は真っ赤になった。

「えぇ。そうなのですよ。 なので、ユノ様にも男性同士のアレコレを学んでいってほしいのです。」

 ジャスがユノの腰をクッと更に抱き寄せ、左手を緩く握る。

「えっ、あのっ、えっ……」

 真正面からジャスを見るような形になり、ユノは最早しどろもどろになって何も考えることが出来なくなってしまった。青い瞳に吸い込まれてしまいそうだ。

「私のことが嫌いでしたらどうぞ突き飛ばして下さいね? ユノ様……。」

 ユノは驚きと混乱でいっぱいいっぱいだったが、大好きなジャスを突き飛ばすことなんて絶対に出来ない。

 どんどんジャスのご尊顔が近づいてきて……、結果的にユノはおとなしくキスを受け入れた。


 足元の桶をユノの足が蹴ってしまい、ザバッと水がこぼれた。




ーーーーーーーーーーーーーーーー




お気に入り登録、しおり、エール、ありがとうございます!















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ずっと好きだった幼馴染の結婚式に出席する話

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 文章がおかしな所があったので修正しました。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...