嫌われ王子はしてはいけない恋をした。 ~彼と私の1年間~

虹色金魚

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8、進捗

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「ユノ様はとても飲み込みが早いですね。」


 ジャスと暮らし初めてから3ヶ月程が立つ。


 ユノは毎日ジャスにより手入れされ、髪も整えるように三度程ジャスに切ってもらった。ユノ自身が適当に切っていた髪だったので、エラいことになっていたが、ジャスは器用に整えた。


 どうやらユノの髪は銀髪のようで、以前のねずみのような灰色のもったりペッタリした髪ではなく、サラサラとしていて、太陽を浴びるとキラリと輝くまでになった。瞳は濁った緑をしていたが、栄養状態が良くなったからか、キラキラと輝きだしている。まるで宝石の原石が磨かれていくようだ。


「いえ、ジャス先生の教え方が良いのです。」


「ふふっ、ではスワニ帝国の貴族達をおさらいしていきましょう。」


 ちょっと苦手な所を突かれて痛いが、頭をフル回転させてなんとか答える。


「今後の生活で大事な所ですからね。キチンと覚えておかなければなりません。素晴らしいです、ユノ様。」


「はい。」


 誉められて嬉しそうにするユノに、ジャスはすぐ隣から手を伸ばし、頭を撫でながらサラサラの髪を楽む。それから背中も撫で、脇腹にも手を添えて撫でる。 いい感じに肉がついてきて嬉しくなるが、くすぐったそうにしているユノが可愛くてしかたがない。


 ユノはジャスの掌の感触が心地よくて、もっと触れてほしいと思ってしまっていた。


 母が亡くなってからこんなに近くに人がいることが久しぶりで、しかも穏やかなジャスと四六時中一緒に居られるのが嬉しくてならない。


 こんなことは絶対に表に出せないが、ユノはジャスのことが好きだなぁ、としみじみ感じてしまうのだ。同性だから、親愛としての好き、だ。わざわざスワニ帝国から来てくださって、つまらない第7王子に教育を施してくれ、楽しく会話をして、生活面でもフォローしてくださる。スキンシップの激しさはきっとお国柄なのだろう、と思うが、実はドキドキしてしまうこともあるのだ。さっきだって……。


「では、今度は算術です。前回は……」


 いつもどこからともなく出てくる手引き書やノートを不思議に思いつつも、きっと魔法なのだろう、で済ますユノは、相当ジャスに慣れていた。








 シェールズ国には四季があり、今は暑くなる夏の始め。ただ、この日はかなり暑くなっていた。いきなり夏が来てしまったかのようだ。


 木々の緑や庭の緑が萌え、青空が眩しい。


「ジャス先生は、こちらの夏は大丈夫ですか?今日は特別に暑いですが。」


「話には聞いていましたが辛そうですね。 この暑さは特別でしたか……。」


 珍しく苦笑いをして答えるジャスに内心驚きつつも、


「私に任せてくださいね。」


と、張り切った。


 1人になって、この暑さを6回乗り切った。









 申し訳程度に誂えられた四阿で、足を井戸水に浸しながら2人並んで勉強に励む。


「ユノ様、これはとても気持ちよくていいですね。」


「はい。 どうしようもなくなった時の裏技なのです。 井戸水の温度はいつも変わらないようなので、夏には重宝します。」


 日に焼けたことのないような白く眩しい足を膝まで出し、桶に入れた井戸水に足を浸すユノは、美しさを隠せなくなっていた。







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