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2部 3章
ヴァルガンの王女ララ
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アンリエッタに呼ばれてから二日が経ち、今日はヴァルガンの王女様が来る日となった。
私とメリッサ、そしてエリンシアはその訪問に立ち会うため、再び領主の館に訪れる。
レンはローラの見張りとしてお留守番だ。
まあ、ローラが何かするとは思えないけど、念には念を入れておこう。
仮に前に来た暗殺者が来たとしても、レンとローラの二人ならやられることはないだろう。
「それで、ヴァルガンの王女様はいつ頃くるの?」
「予定ではそろそろ来られるはずです……」
私がアンリエッタに聞くとアンリエッタはそう答えてくれた。
アンリエッタはどことなくソワソワしている。
まあ、それはそうだろう……相手は一国の王女……まあ、メリッサもそうではあるのだけど、メリッサの場合、今日来るヴァルガンの王女に自分が王女であることを証明してもらう立場である。
アンリエッタが緊張しないのも仕方がない……見た目はただの女の子だしね。
だが、そのメリッサもこのところの修行でかなり力をつけている。
今ならランクCくらいの魔物なら一人でも戦えるんじゃないだろうか?
私も驚くほどにメリッサの成長は早かった。
それだけ、自分の国を……そして父親を取り戻したいという思いが強いのだろう。
「アンリエッタ様!ヴァルガンの王女様がご到着成されました!」
門番の人が報告してくれる。
どうやら、到着したようだ……一体どんな人なんだろう?
「案内ご苦労……待たせたな」
入ってきたのは長身の女性で、茶色のショートカットの女性である……でも、普通の人とはちょっと違うところもあった……頭の上にライオンの耳のようなものが付いており……お尻からは尻尾が生えている。
………獣人である。
獣人自体は特に珍しいわけではないが、獣人のそのほとんどは冒険者や傭兵団に所属している。
それが、一国の王女が獣人だなんて、初めてだよ……。
とは言っても、それは結界の中の話である……そういえば、ヴァルガンは獣王国と言われているらしい。
この大陸では獣人の国があるということなのだろう。
獣人と言えば、その身体能力の高さである。
もし、彼女たちが味方になってくれるのならこれ程、心強いことはないのではないだろうか。
「ララ王女……」
「おお、メリッサ……大きくなったな!元気にしてたか?」
メリッサがその女性に話しかけた……ということは、この人がメリッサの言っていた王女様で間違いないんだね……それに相手もメリッサの事を覚えているとなると……。
「ララ……間違いないな?」
ララ王女の後ろから、もう一人獣人の男性が入ってきた。
その男性もララ王女と同じような特徴をしている。
細身に見えるがかなり鍛えられた筋肉をしているその男性はララ王女に尋ねる。
「ああ、レオ兄……メリッサで間違いないぜ」
「なるほど、ではあの書状に書いてあったことは真実ということか……」
レオ兄……つまり、あの人は王女様のお兄さんってこと?
じゃあ、王子様?……来るのは王女様だけじゃなかったんだ……。
レオ王子が言う書状と言うのは、アンリエッタが送った書状の事だろう。
内容はアンダールシアが何者かに乗っ取られたこと、そしてメリッサが濡れ衣を着させらていること……後、その裏にはレンシアの影があるかもしれないことを書いていた。
「この街の代表はそなたか?」
「は、はい、ラリアスの領主、アンリエッタと言います……レオ王子までご来訪していただけるとは……」
「本当は父上が来る予定だったのだが、レンシアが何やら嫌な動きをしているらしくてな……その代理だすまないな」
「いえ、滅相もございません」
アンリエッタは深くお辞儀をする……辺境の街の領主が自分の国ではないとはいえ、王子と王女と会う機会などほとんどないだろう……アンリエッタは凄く緊張していた。
「それで、メリッサ王女を助けた闇の魔女と言うのは?この場にはいないようだが……同席を許可したと聞いていたのだが?」
「ふぇ?」
目の前にいる私には目もくれず、あたりをキョロキョロと見回す。
いやぁ、仕方ないよね、魔女って聞いたらもっと陰険で地味な女性をイメージするのだろう。
笑い方もヒヒヒヒヒヒとか常に笑っていると思っているに違いない。
目の前にいるこんなプリティーな女の子が魔女と呼ばれているとは思わないのだ!……のだ!
「失礼だぞ、レオ兄……まったく、強そうな人間を見つけるとそうやって挑発するのはレオ兄の悪い癖だ……相手の強さくらい、レオ兄ならすぐにわかるだろう?」
「ふっ……詰まらなぬ妹だ……強いものと戦いたいと思うのは俺たち獣人の性《さが》だろう?」
「気持ちは分かるけどな……アンタが闇の魔女だろ?アタシはララ……アンタ強そうだな……それにそっちの女も」
ララは私の方を向くと笑いかけてくる、そして私の少し後ろにいたエリンシアにも声を掛けた。
そう言う、ララ王女とレオ王子もかなり強そうだ……獣人てみんなこんな感じなのかな?
「それに、メリッサも随分強くなったみたいじゃないか……見違えたぞ?」
「ララ王女……ありがとうございます」
「ハハハ、それじゃ、行こうか?」
私の顔を見ると、ララ王女はそう言う……。
……え、どこに?
「レオ兄も行くだろ?」
「当然だ」
「え?え?行くってどこに?」
ララ王女が私の手を引いてどこかに連れて行こうとする。
「ラ、ララ王女、お待ちください!一体どこへ行くのですか?」
アンリエッタが慌てて止めてくれる。
そーだそーだ、一体どこへいくのさ……。
「決まってるだろう、戦える場所だ」
「戦うって……なぜ、どうしてですかララ王女……」
アンリエッタが困惑する……もちろん私も困惑する。
唯一、メリッサが顔を引きつらせながらララ王女が何を言っているのか理解していたようだった。
いや、もう一人、レオ王子は早くしろと言わんばかりに目を輝かせている。
「メ、メリッサ?どういうことか分かるの?」
「あ、えっと……その……すみません、魔女様……私も今、思い出したのですがヴァルガンの方はとても好戦的で強い方に対戦を申し込まずにはいられない性格をしているらしいのです……以前、ララ王女がお城に来たときもセリシアナ……近衛の副隊長の者に戦いを挑んでおりました」
え、何……つまり、ララ王女は私と勝負したいっていっているってこと?
待って待って待って……どういうこと?
言っていることは分かるが、今日はそんなことをしに来たわけじゃないような……えっと、勝負受けてもいいのかな?私も別に戦うのは嫌いじゃないからいいんだけど……まず、今後の事を考えたほうがいいんじゃ……。ええっと……私は困ってエリンシアの方に目をやる。
「と、いうことは、レオ王子はワタクシの相手をしてくださるってことですの?」
「おお、なかなかノリが良いではないか女……いいだろう、俺がお前の相手をしてやる」
「女ではなく、エリンシアですわ……レオ王子」
「ほう、気の強い女……いや、エリンシアだな……楽しめそうだ」
すでにエリンシアはやる気であった……。
えー……いつもはしっかりしてるのに……なんで今日に限って……。
「カモメさんも受けなさいな……こういう方たちは強い人に敬意を払うものですわ……話し合いをしたいのなら、先ず、ワタクシたちの力を見せる必要がありますわよ」
エリンシアが私に小声で言う……なるほど……そう言うものなのか……そう言うことなら私も異存はない……思いっきり暴れてやろうじゃない。
「解ったよ、ララ王女……私もその勝負受けるよ」
「おお、さすが闇の魔女……話が分かるじゃないか!」
「でも、その代わり、この勝負が終わったら、メリッサの協力をしてくれることちゃんと約束してくれる?」
「さて、それはアンタの強さしだいかな?」
ララ王女はにやりと笑うと、そう言った。
そっか、エリンシアの言う通り、この人たちはこの戦いで私たちの事を見定めようともしているんだ。
話をするより拳を交える方がお互いを分かり合える……そう言った人種なのだろう……いや、純粋に戦いたいだけかもしれないけど……ウキウキと私の手を引っ張って訓練場へと向かうララの姿に一抹の不安を覚えながらも……私もララ王女との戦いを少し楽しみにしていたのだった。
私とメリッサ、そしてエリンシアはその訪問に立ち会うため、再び領主の館に訪れる。
レンはローラの見張りとしてお留守番だ。
まあ、ローラが何かするとは思えないけど、念には念を入れておこう。
仮に前に来た暗殺者が来たとしても、レンとローラの二人ならやられることはないだろう。
「それで、ヴァルガンの王女様はいつ頃くるの?」
「予定ではそろそろ来られるはずです……」
私がアンリエッタに聞くとアンリエッタはそう答えてくれた。
アンリエッタはどことなくソワソワしている。
まあ、それはそうだろう……相手は一国の王女……まあ、メリッサもそうではあるのだけど、メリッサの場合、今日来るヴァルガンの王女に自分が王女であることを証明してもらう立場である。
アンリエッタが緊張しないのも仕方がない……見た目はただの女の子だしね。
だが、そのメリッサもこのところの修行でかなり力をつけている。
今ならランクCくらいの魔物なら一人でも戦えるんじゃないだろうか?
私も驚くほどにメリッサの成長は早かった。
それだけ、自分の国を……そして父親を取り戻したいという思いが強いのだろう。
「アンリエッタ様!ヴァルガンの王女様がご到着成されました!」
門番の人が報告してくれる。
どうやら、到着したようだ……一体どんな人なんだろう?
「案内ご苦労……待たせたな」
入ってきたのは長身の女性で、茶色のショートカットの女性である……でも、普通の人とはちょっと違うところもあった……頭の上にライオンの耳のようなものが付いており……お尻からは尻尾が生えている。
………獣人である。
獣人自体は特に珍しいわけではないが、獣人のそのほとんどは冒険者や傭兵団に所属している。
それが、一国の王女が獣人だなんて、初めてだよ……。
とは言っても、それは結界の中の話である……そういえば、ヴァルガンは獣王国と言われているらしい。
この大陸では獣人の国があるということなのだろう。
獣人と言えば、その身体能力の高さである。
もし、彼女たちが味方になってくれるのならこれ程、心強いことはないのではないだろうか。
「ララ王女……」
「おお、メリッサ……大きくなったな!元気にしてたか?」
メリッサがその女性に話しかけた……ということは、この人がメリッサの言っていた王女様で間違いないんだね……それに相手もメリッサの事を覚えているとなると……。
「ララ……間違いないな?」
ララ王女の後ろから、もう一人獣人の男性が入ってきた。
その男性もララ王女と同じような特徴をしている。
細身に見えるがかなり鍛えられた筋肉をしているその男性はララ王女に尋ねる。
「ああ、レオ兄……メリッサで間違いないぜ」
「なるほど、ではあの書状に書いてあったことは真実ということか……」
レオ兄……つまり、あの人は王女様のお兄さんってこと?
じゃあ、王子様?……来るのは王女様だけじゃなかったんだ……。
レオ王子が言う書状と言うのは、アンリエッタが送った書状の事だろう。
内容はアンダールシアが何者かに乗っ取られたこと、そしてメリッサが濡れ衣を着させらていること……後、その裏にはレンシアの影があるかもしれないことを書いていた。
「この街の代表はそなたか?」
「は、はい、ラリアスの領主、アンリエッタと言います……レオ王子までご来訪していただけるとは……」
「本当は父上が来る予定だったのだが、レンシアが何やら嫌な動きをしているらしくてな……その代理だすまないな」
「いえ、滅相もございません」
アンリエッタは深くお辞儀をする……辺境の街の領主が自分の国ではないとはいえ、王子と王女と会う機会などほとんどないだろう……アンリエッタは凄く緊張していた。
「それで、メリッサ王女を助けた闇の魔女と言うのは?この場にはいないようだが……同席を許可したと聞いていたのだが?」
「ふぇ?」
目の前にいる私には目もくれず、あたりをキョロキョロと見回す。
いやぁ、仕方ないよね、魔女って聞いたらもっと陰険で地味な女性をイメージするのだろう。
笑い方もヒヒヒヒヒヒとか常に笑っていると思っているに違いない。
目の前にいるこんなプリティーな女の子が魔女と呼ばれているとは思わないのだ!……のだ!
「失礼だぞ、レオ兄……まったく、強そうな人間を見つけるとそうやって挑発するのはレオ兄の悪い癖だ……相手の強さくらい、レオ兄ならすぐにわかるだろう?」
「ふっ……詰まらなぬ妹だ……強いものと戦いたいと思うのは俺たち獣人の性《さが》だろう?」
「気持ちは分かるけどな……アンタが闇の魔女だろ?アタシはララ……アンタ強そうだな……それにそっちの女も」
ララは私の方を向くと笑いかけてくる、そして私の少し後ろにいたエリンシアにも声を掛けた。
そう言う、ララ王女とレオ王子もかなり強そうだ……獣人てみんなこんな感じなのかな?
「それに、メリッサも随分強くなったみたいじゃないか……見違えたぞ?」
「ララ王女……ありがとうございます」
「ハハハ、それじゃ、行こうか?」
私の顔を見ると、ララ王女はそう言う……。
……え、どこに?
「レオ兄も行くだろ?」
「当然だ」
「え?え?行くってどこに?」
ララ王女が私の手を引いてどこかに連れて行こうとする。
「ラ、ララ王女、お待ちください!一体どこへ行くのですか?」
アンリエッタが慌てて止めてくれる。
そーだそーだ、一体どこへいくのさ……。
「決まってるだろう、戦える場所だ」
「戦うって……なぜ、どうしてですかララ王女……」
アンリエッタが困惑する……もちろん私も困惑する。
唯一、メリッサが顔を引きつらせながらララ王女が何を言っているのか理解していたようだった。
いや、もう一人、レオ王子は早くしろと言わんばかりに目を輝かせている。
「メ、メリッサ?どういうことか分かるの?」
「あ、えっと……その……すみません、魔女様……私も今、思い出したのですがヴァルガンの方はとても好戦的で強い方に対戦を申し込まずにはいられない性格をしているらしいのです……以前、ララ王女がお城に来たときもセリシアナ……近衛の副隊長の者に戦いを挑んでおりました」
え、何……つまり、ララ王女は私と勝負したいっていっているってこと?
待って待って待って……どういうこと?
言っていることは分かるが、今日はそんなことをしに来たわけじゃないような……えっと、勝負受けてもいいのかな?私も別に戦うのは嫌いじゃないからいいんだけど……まず、今後の事を考えたほうがいいんじゃ……。ええっと……私は困ってエリンシアの方に目をやる。
「と、いうことは、レオ王子はワタクシの相手をしてくださるってことですの?」
「おお、なかなかノリが良いではないか女……いいだろう、俺がお前の相手をしてやる」
「女ではなく、エリンシアですわ……レオ王子」
「ほう、気の強い女……いや、エリンシアだな……楽しめそうだ」
すでにエリンシアはやる気であった……。
えー……いつもはしっかりしてるのに……なんで今日に限って……。
「カモメさんも受けなさいな……こういう方たちは強い人に敬意を払うものですわ……話し合いをしたいのなら、先ず、ワタクシたちの力を見せる必要がありますわよ」
エリンシアが私に小声で言う……なるほど……そう言うものなのか……そう言うことなら私も異存はない……思いっきり暴れてやろうじゃない。
「解ったよ、ララ王女……私もその勝負受けるよ」
「おお、さすが闇の魔女……話が分かるじゃないか!」
「でも、その代わり、この勝負が終わったら、メリッサの協力をしてくれることちゃんと約束してくれる?」
「さて、それはアンタの強さしだいかな?」
ララ王女はにやりと笑うと、そう言った。
そっか、エリンシアの言う通り、この人たちはこの戦いで私たちの事を見定めようともしているんだ。
話をするより拳を交える方がお互いを分かり合える……そう言った人種なのだろう……いや、純粋に戦いたいだけかもしれないけど……ウキウキと私の手を引っ張って訓練場へと向かうララの姿に一抹の不安を覚えながらも……私もララ王女との戦いを少し楽しみにしていたのだった。
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