紅に染まる鬼神《レイド》

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第1話 紅の鬼神

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「気持ち悪いんだよ。消えちまえ」

蓮斗の目の前にいた、初対面の鬼は唐突にそう告げた。

「一応聞いておく。お前、何で知らない相手にいきなり突っかかった?」

蓮斗はそう言い返したが、自分自身でその答えは分かっていた。それは……

「あ?決まってんだろそんなの、テメェのその紅の皮膚の色が気持ち悪りぃんだよ!」

「はぁ……またそれか」

どうやら蓮斗の予想は当たっていたようで、少し溜息をついた後、睨んだ。

「僕はこの容姿のせいで、今まで他の鬼から散々いじめられてきた。
他の種族を排斥するのがお好きなのか知らないけど、本来なら青い皮膚である鬼が、赤い皮膚だからと言うだけでいじめてくる」

「当たり前じゃねぇか。気持ち悪りぃんだからよ」

「更にそれだけではない。僕達鬼は時代の流れ的に、人間に差別されている。鬼が人間の生活を守っていると言うのにね。
だから僕は独り。いつも独り。誰にも好かれずいつも貶され虐められる」

「ふっ、ザマァ見ろ!」

「だから僕は変わった。もう誰にも屈しない。僕は……『強くなったんだ』」

刹那、鬼と鬼による激しい殴り合いが勃発した。彼らの拳は血に染まり、見たものが地獄絵図を想像するような有様になっていた。



                           ーーーーーー




「さてはて……貴方達は何故、今日という特別な日に限って殴り合ったのでしょうか?今日が貴方の通ってきたこの訓練所の卒業日だと、知らないはずがないでしょう」

まぁ怒られても当然か……と蓮斗は、歯痒い思いを噛み締めながらも、反省をしていた。何故なら、今日が訓練所の卒業日だからである。

「すいませんでした……これからはやりません……所長」

心にもないことを言うと、無性に苛つくが仕方がないことだ。蓮斗は心の中で軽く舌打ちをした。

「まぁいいわ。コードナンバー74、鬼名『蓮斗』。今回のことは不問にします。貴方も一応この1年間、骨人と戦う術をこの訓練所で頑張って教わってきましたからね。
この事は胸の奥にしまって、これから骨人戦闘部隊に属しその1人として頑張ってください」

「御意です。ただ一つ気になることがあるのですが所長」

蓮斗は浮かない顔で所長を見上げた。

「何ですか?」

「僕と殴り合っていた、もう1人の鬼はどこへ行ったのですか?逃げたのですか?」

瞬間、少し微笑んでいた所長の顔は一気に変貌した。眉間にしわを寄せ、目を鋭くし突如として言い放った。

「コードナンバー74、貴方は鬼の中の底辺です!何故他の者を巻き込もうとしているのですか!
彼はこの訓練所で主席、コードナンバー10、鬼名、『貴公』ですよ!
そんな事するはずがありません!」

これを聞いた蓮斗は、耐えられなくなり思わず叫んだ。

「なんで誰も外見や上っ面だけを見て、全てを判断するんだ!おかしいじゃないか!間違っている。
僕は間違ったことをしたか?否だ!
僕は侮辱されたから殴った。これのどこがいけないんだ!」

「コードナンバー74!黙りなさい!まるで反省の余地が見えません!あなたに少しでも期待した私が馬鹿でした。卒業式で思いっきり赤っ恥をかくといいわ!」

そう言うと所長は、説教部屋を出た。怒りに溢れた蓮斗を残して。



                          ーーーーーー



卒業式。それは若き鬼達が、1年間の訓練所での対骨人戦闘訓練の終わりを称える場であり、同時にこの先自分が骨人戦闘部隊の、第何部隊に配属されるかが決まる場でもある。
およそ毎年20人程の鬼が、この名誉ある場に立つのだ。そして蓮斗は今、その名誉ある場に立っていた。

「えぇ……諸君、汝らにはこの訓練所を出た後、人間を守る盾として、骨人を殲滅する矛としての活躍を期待する。
今ここに、汝ら21人の鬼の卒業を認める。途中で脱落した240人の鬼の分まで、頑張ってくれたまえ」

先程までとは180度違う所長の言葉は、恨みを持った蓮斗でさえ、心を動かされる感覚を味わせた。

「御意!この国の為に!人類のために!我ら鬼は決死の覚悟で参ります!」

「忠誠ありがとう諸君。ではこれより、個人個人による、それぞれの部隊の配属先を指名する。
まずは主席の、コードナンバー10 鬼名『貴公』」

「はい!」

「汝には、第1部隊についてもらう」

所長がそう行った途端、会場内は急にざわついた。

「おいおい久々じゃねぇの?第1部隊に行く子。あの花の第1部隊だろ?あそこは骨人駆逐数が飛び抜けて一位の、最強部隊じゃねぇか?」

「あぁ、こりゃ今年の卒業生は当たりかもな」

その中を、所長が鎮めると再び他の鬼の配属先を指定して行った。

「それでは最後、コードナンバー74 鬼名『蓮斗』」

「はいっ!」

「汝には、第23部隊についてもらう」

刹那、会場内が歓喜の渦に飲み込まれた。

「へっ、ザマァ見ろ赤い鬼!見た目も気持ち悪かったし、23部隊がお似合いだな!」

「23部隊って言ったら、別名『最終処分場』。問題児の巣窟じゃねぇか。やっぱり分かってらっしゃるわ、所長は」

これを聞いた蓮斗は、あまりの絶望感にひれ伏していた。

「23部隊って……嘘……だろ……殺人犯が入るような、完全実力主義の部隊。噂には聞いていたけど、まさか……」

そんな所を、所長は通りかかって一言いった。

「貴方にはお似合いよ。真っ赤な血の色の、醜い鬼さん」と。

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