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ワンコ系同僚と一緒に暮らすことになりました~大嫌いなアイツとシェアハウス!

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 鈴木ことりは、会社の終了を告げるチャイムの音を聞くとがたんと一気に立ち上がった。そして、すさまじい勢いでかばんを持ち、退勤のカードを押した。それもこれも大嫌いなアイツと帰りが一緒にならないためだ。

 鈴木ことりは、カーテンやカーペットを取り扱うメーカーのOLで営業事務をしている25歳だ。焦げ茶色に染めた肩までの髪に茶色の瞳。平凡な見た目に中肉中背の身体。性格は大人しく、内気。つまりはどこにでもいる20代のOLだ。短大を卒業し、国内大手のメーカーに就職した。新卒で営業事務に配属されて、可もなく不可もなく5年間勤務してきた。平凡そのものの日常。

 そのことりの愛してやまない平凡な日常ががらがらと音をたてて崩れたのだ。きっかけは親友の菜摘に誘われたシェアハウスだ。20代の男女が1つ屋根の下で暮らすことに最初は抵抗があった。だが、菜摘から知らされた格安の家賃と立地条件が好条件だったのだ。それにつられて了解した自分をことりは後に呪うことになる。

 シェアハウスに引っ越しして、挨拶に回った初日。お隣の部屋にタオルを持って部屋の扉をノックして、「はい」と男性の声がする。その声にことりは嫌な予感がした。かちゃりと部屋の扉が開かれて、出てきたのは会社の同僚の阿部颯太。ことりが会社で組んでいる成績優秀な営業でイケメンだが童顔な見た目に高身長なスタイルの良さ、人懐っこい性格から社内で人気があるのだ。
 だけど。
 ことりは颯太が大嫌いだ。
 恵まれた見た目に何でもできる器用さ、誰にでも愛されるそんな颯太が嫌いだった。

「え? 鈴木、お前がここに引っ越してきたのか?」
 最初は戸惑っていたが、次第に笑顔になり嬉しそうに笑う。まるでことりが大嫌いなワンコを連想させる笑顔。ことりは、内心の苛立ちを隠すように颯太に微笑みかける。
「お隣だね。よろしく」
 ことりはそんな自分も嫌いだった。

 シェアハウスで颯太と一緒に暮らすようになってから何故か会社でも彼はことりを構うようになった。平凡な日常が非日常に侵食されていく。ことりは、怖くて仕方なかった。
「ことり、最近阿部くんさ、ことりのことやたら構わない?」
 お昼休みに会議室でことりがお弁当を食べていると、社内で美人で有名な香織がことりに話しかけてきた。香織は、颯太のことが好きなだとで有名だった。ことりは食べていたコロッケをのどに詰まらせそうになる。
「いやだ、香織。香織の勘違いよ」
 ことりは苦笑いしてごまかす。
 香織は目についた社員やパートを苛め抜いて退職させることで有名だった。ことりも目をつけられたらただじゃすまない。

 その日からシェアハウスまで一緒に返ろうとする颯太を振り切る日々が始まった。
 そうすると颯太は朝一緒に行こうとするようになった。
 朝の弱いことりは、必死に早起きして出勤するようになる。
 いたちごっこだ。
 その内、ことりは不思議に思うようになる。
 何で颯太はこんなに自分に固執するのだろうと。

 週末の午後、ことりは平日の食材の買い出しに行っていた。週末にまとめて食材に手を加えて冷凍しておくのだ。自転車で抱えきれないくらいの食材を購入してきた。自分の部屋まで買い物袋を抱えて歩いていると、颯太にぶつかる。
「ご、ごめんね……」
 ことりが謝る。
「荷物持つよ」
 と颯太がことりの持っている荷物を半ば強引に奪った。二人で階段を昇る。

「なんでさ、俺を避けるの?」
 ふいに颯太が聞いてくる。ことりはぎょっとする。
「い、いやだ。気のせいよ」
「違うだろう。朝はゆっくり出ていたのが早くなって、帰りは俺を避けるようにすぐに帰る。俺は、鈴木を見ていたから。よくわかるよ」
 真剣な光を帯びた眼差しがことりに注がれる。ことりが苦手な茶色の切れ長の瞳。
「な、な……」
「俺は不器用で頑張り屋な鈴木が好きなんだ。新卒で同期で入社した頃から好きだった」
 ことりの部屋の前に荷物を置くと、颯太は告白する。
 ことりは沈黙する。
 大嫌いな颯太と馴れ合いたくない。
 そんな気持ちで一杯だった。
 そして告白されても受け入れる気持ちはない。

「悪いけど、私阿部くんのこと、同僚として以外に見られない」
 嘘だ、とことりは自分の胸が早鐘を打つようになっているのを自覚していた。
 ことりも颯太が好きだった。
 大嫌いと思い込もうとしたのは、同期の香織が颯太を好きだとことりに宣言したからだ。
 香織は、ことりの気持ちを知っていたのだろう。
 颯太が好きだと会社の女子だけの飲み会で宣言したのだ。
 そうなると、ことりは不利だ。
 社内の女子の空気は圧倒的に香織の味方だ。
 ことりが、颯太を好きだと言えば社内の女子から仲間外れにされる。
 その上、香織に目をつけられたら退職するまで苛め抜かれるのだ。
 ことりはそれが怖かった。
 自分の頬が紅潮しているのに気付いているのに知らない振りをする。

「そんなに顔が赤いのに?」
 くすりと颯太が笑う。
「俺は、鈴木の気持ち、知ってるよ。いつも俺のこと、見てたじゃないか」
 そして、二人は沈黙する。

 5年前の内定式の日。
 リクルートスーツでことりは走っていた。
 面接をした本社ではなく、社外の大きなホールを貸し切って内定式を行うことになっていたのだ。
 方向音痴のことりは道に迷ってしまった。
 スマホを片手にぐるぐると同じ場所を回っていた。
 その内、同じリクルートスーツを着た青年を見かける。
 青年もスマホを片手に道に迷っているようだ。

「あの……」
 ことりは思い切って青年に声をかける。
 青年が振り返る。
「もしかして……高松カーペットの内定式に出席されます?」
 不安そうな顔をした青年はことりに頷いた。
 その後二人で散々道に迷い、着いたのは内定式が終了した後だった。
 内定式の出来事から、東京の本社に配属されたことりは同じ部署に配属された颯太と再会する。
 颯太は、再会したことりに人懐っこい笑顔を向けてくれた。
 可愛いワンコのような性格に、中身とまるで違う的確な営業として働く態度。
 ことりは無自覚に恋に落ちていたのだ。

「そうよ……。いつも阿部くんのこと見ていたわ……。あの内定式から」
 必死に取り繕っていた自分を見抜かれていたのが半分嬉しくて、残りは悔しくてことりは瞳を潤ませた。
 そんなことりの頬に颯太は手を触れる。
「大内が俺のこと好きだと言いふらしていたから言えなかったの?」
「うん……」
 颯太の手が温かい。
 ふわりと身体を引き寄せられる。
 颯太の身体の温もりが伝わってきて、何故か涙が滲んだ。

 颯太の部屋へ雪崩れこむように入り、唇を重ねる。
 最初はお互いに啄むようなキスが段々と深くなる。ぬるりとした颯太の舌が入り込んでくちゅくちゅと音がする。口腔を掻き回されて、ことりは息が出来ない。舌を強く吸い上げられる。ことりは初めての口づけに訳が分からなかった。ただ怯えるだけのことりは颯太の舌から逃れようとする。だが、颯太の濡れた舌はことりの舌に再び搦めて、激しく吸う。子犬のような可愛らしい颯太とは違う肉食系の行動にことりは戸惑った。
 思わず顔を逸らそうとするが、後頭部をがっちりと抑え込まれる。ことりは下腹部が熱く疼いた。繰り返し舌を擦られる。舌を搦めとられて、唾液を啜られて窒息しそうだ。ようやっと颯太は唇を離した。二人の唇の間に唾液の橋ができ、銀の糸が引いて、ぷちんと壊れる。ことりは甘いキスの残滓に頭がぼんやりして、颯太の胸に頭を預けていた。

「俺、鈴木のこと、抱きたい」
 颯太の顔はいつもの子犬のような笑顔ではなく、狼のような顔をしていた。
 ことりの大好きな颯太とは違う愛欲を孕んだ違う一面が覗いた。
 だけど。
 ことりの心臓はとくんと高鳴る。
 ことりは頬を赤くさせてこくんと頷く。

 颯太は、ことりをぐいっと抱き上げて自室のベッドの上に降ろした。
 颯太の部屋は、白と基調としたシンプルな部屋で彼らしくなかった。部屋には本棚があり、ベッドの上からも営業の本や会社のカタログがあり、いつも勉強しているのだろうことが伺えた。

「俺の部屋を見てないで、こっちに集中して……」
 颯太は、ことりの耳を舌で犯した。
 熱い濡れた舌が耳の中を蠢いて、それだけで敏感なことりは快感を拾う。

「ん……。耳、やっ……」
 今にも泣きだしそうなことりの声音に颯太はぞくりとする。
 はあと堪えて息を吸い、ことりの着ているワンピースをするりと脱がした。
 白のタンクトップを抜くと、花柄の下着姿になる。
 ことりらしい、可愛らしい下着だ。
 颯太は興奮を隠せず、ブラジャーの上から胸の中心を指でなぞった。
 ぴくんとことりが反応して身体が跳ねる。
 
「ん~」
 手の甲を隠すような仕草をして、ことりは喘いだ。
 ブラジャーの留め金をぷつりと外して、抜くと見た目から想像できないほどのことりの形のいい乳房がまろびでた。桜色の綺麗な膨らみの感触を楽しむように両方の胸の先を親指でくるくると回す。柔らかくて、弾力がある。自分が触れた時と違う痺れた快感が身体を走った。

 片方の胸の先を手と指で摘まんで、こねくり回す。そしてもう片方の胸の先を口に含んで、吸い上げた。胸の先がじんじんして切ない。更に飴玉を転がすかのように胸の先を吸い上げた。
「あっ……。胸触っちゃいや……」
 ことりは小さな声を上げると、甘く喘いだ。
 自分の胸がつん、と尖っていくのがわかる。
 颯太の指が自分の乳房を上から愛撫しているのが分かる。
 濡れた颯太の舌がちゅうと胸を吸い上げた。その瞬間足の先まで快感が弾けて、厭らしい気持ちになる。
「ん……。そこ、いや……」
 ふるふると首を振ると、それと同時にことりの胸が揺れる。

「すげ……。いい眺め」
 くすりと颯太が嬉しそうに笑い、胸から顔を上げた。
 それを合図に、下着の布越しに割れ目に沿って、指を行き来させる。
 胸への愛撫で湧いた蜜が漏れて下着を濡らしていた。
 指を触れるか触れないかの優しい仕草で弄ってくる。
 それがことりには堪らない。もっと触れてほしいのだ。
 太腿をもじもじと擦り合わせる。
 ことりの視線を感じて、颯太は、ことりの下着を抜いた。
 肌に触れる冷たい感覚さえも恥ずかしい。花弁ごしに指が一本二本と増やされて指が蜜を掬う。
 濡れた花弁の間を掻き回すように指が蠢く。

「あん……。あっあん……」
 颯太のシャツにしがみついて、ことりは高く啼いた。
 指がくちゅくちゅと蜜を塗りこめて、更に淫靡に動く。下腹部が熱くてたまらなくて、その周囲が甘く疼いた。
 颯太は、花弁の中央に咲く花芽を探し当てると、くるくると円を描くように指で擦り、ぐっと押した。

「あっ! やっー!」
 甘ったるい感覚が身体の奥から湧いて、ことりは身体を跳ねさせる。それと同時に感じすぎて涙が零れた。
「ん……。イケたな、上出来」
 颯太はそう言うと、ことりの目尻の涙を啜った。
「ん……。あん……」
 身体に次から次へと湧いてくる厭らしい官能にことりは耐えられない。
 必死に颯太の身体に腕を回した。

「俺も……脱ぐわ」
 ばさりと服を脱ぐ音がして、白いシャツから均整の取れた男性らしい身体があらわになっていく。ジーンズを脱ぐとボクサーパンツ姿になった颯太は、ベッドの脇のチェストに置いてあるスキンを取ると口でぴっと切った。

 ぐちゅりと蜜に塗れ蕩け切った蜜口に自分の欲望を押し付けた颯太は、ゆっくりと進ませる。ことりは初めてで、痛くて仕方ない。
 だけど。
 先ほどまでの愛撫に愛蜜が溢れていてそこは颯太の欲望をいとも容易くのみ込んでいく。暖かな感触が堪らない。気持ちが良くて、颯太は溜息を吐いた。まだ男を知らないそこは狭くて、きちきちだ。ぐちゅぐちゅと淫猥な音が部屋中に響き渡る。

「あっあっ……。やああっ!」
 ことりの嬌声が上がる。
 最初こそ、痛みしか感じてなかったが、段々と痛みの中にも気持ち良さを拾い始める。
 颯太は、最奥を突き上げて、引き抜いてまた入れる。腰を振り、奥へ奥へと進める。ことりの中が引き締まった。くっと颯太は顔を歪ませた。気持ちがいいのだ。ぐっとことりの足を折り曲げると、指で弄っていた時にことりが反応した場所を擦る。

「ん……! いやあん!」
 甘い嬌声が颯太の耳を楽しませる。
 颯太は、激しく律動を始めた。腰を振りたくり、抜き差しする。ことりは涙を溢れさせて、颯太の背中にがりっと爪を立てた。小鳥の中が収縮して、颯太を締め上げる。颯太は気持ち良さに持っていかれそうになる。好きな女を抱くということはこんなに気持ちいいのかと颯太は、実感する。そう、5年間片思いをしていたのだ。長い思いが実ったのだ、もっと味わいたい。

「ことり、好きだ……」
 颯太はそう言うと、中をえぐるように突き上げた。
「ん~! 阿部くんっ!」
 ことりが颯太の熱を包み込み、きゅっと締め上げる。颯太はどくどくと熱い精をゴムの中へ吐き出した。

「ん……」
 ことりはカーテンから差し込む明るい日差しに目を覚ます。ぼーっと回らない頭で周囲を見渡す。
 隣に裸の颯太がいる。ことりを抱き締めて眠っている。可愛らしい見た目は、相変わらずで。

(見た目はワンコなのに、中身は本当は獰猛な狼みたい……)
 ことりは眠る颯太を見て、くすりと笑う。
 そうこうしている内に颯太が目を覚ました。裸のまま、ことりを抱き締めると
「おはよう」
 と軽く口づけた。

 互いに服を着て、朝食の買い物に行こうと話が決まり、颯太の部屋を手を繋いで出ようとした時。
 どさりと物が落ちる音がして、二人は正面にいる香織や香織の社内の仲良しの同僚たちと目が合う。
 香織は、颯太に自分が作ったお弁当を差し入れしようとやってきたらしい。
 だが、今の状況は、颯太とことりが付き合っているのは一目瞭然だ。

「私が先に好きって言ったのに! この泥棒猫!」
 香織はぱんとことりの頬を叩いた。
 ことりは自分の頬に手を当てる。

「大内! 俺が……」
 ことりを庇おうと口を開いた颯太をことりは制する。
 違う、自分は社内の人間関係から自分の気持ちを誤魔化していたのだ。
 いわば自分の弱さが招いたことだ。

「香織、私。阿部くんのこと、好きなの。ずっと自分の気持ち誤魔化していたけど、間違っていた。社会人にもなって、先に好きだとか後に好きだとか小学生か中学生の恋愛じゃないんだから」
 ことりは、毅然と香織に言い放つ。
 それは弱い自分との決別の瞬間だった。

「……! ことり、後で後悔しないことね」
 落ちたお弁当を拾うと香織はスカートの裾を翻して、去る。
 その後を同僚たちが慌てて追いかける。

 はあーっとことりは、腰が抜けてペタンと床に座り込んだ。
「腰が抜けたわ……。すごい勇気がいるの。でも阿部くんがいたから言えたわ」
 ことりは苦笑する。
 
 くすりと颯太は綺麗な顔で笑うと、ことりにキスをひとつ落とした。
 それは情熱的なキスで狼の颯太のキスだった。

 その日の夜、ことりの親友の菜摘は颯太と飲みに来ていた。
「今回の手配、助かったよ」
 と颯太が笑う。
 菜摘は、腑に落ちない表情をしている。
「あんたに頼まれて、ことりをシェアハウスに引き入れたこと、後悔してるわ」
「何で?」
 颯太が仄暗い笑顔でくくっと笑う。

「あんたをことりに近づけたくなかったからよ!」
「でも実家がお金に困っていたんだろう? ほら今回のお礼」
 颯太が菜摘に札束をばさりと手渡す。
 菜摘は悔しそうにお金を受け取ると、一言言い残す。

「あんたのその爽やかな演技はいつまでことりに通用するかしらね? 高松カーペットの社長令息?」
 菜摘の言い残した言葉に、颯太は乾いた笑いを顔に浮かべた

「俺は一生、ことりを騙しとおすさ」
 颯太は、ぽつりと言葉を零した。
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