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liberty
見えない視線
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逆撫でられたかのように強張った皮膚が、ゆっくりと柔らかさを取り戻していくのを感じる。
あれは魔法省の人間に間違いない。
王都で見慣れたオーラの中でも一際強い輝きだった。
少なくともジュリアンよりも魔力は多い。
フリード位の魔力は有しているはずだ。
どんなに平民の格好をしても、身にまとうオーラまでは隠しきれない。
一目見れば魔力の多さからすぐに特定される。
イシュトハン家以外にこれほどのオーラを放つ者は存在しない。
先程の男達を確認するため、息を吐きながら目を閉じる。
男達は魔力を隠しもせず飛び回っていた。
比喩などではなく、文字通り飛び回っている。
広場の木々、屋台の細い柱、いかなるものもジャンプ台のように使って移動している。
身体強化の魔法か。
騎士達とは異なり制服のない魔法省の者たちは、身に纏ったオーラが身分証のようなものだ。
「なんでこんな町外れにまで手が伸びているの…」
身体強化魔法を使える者は魔力コントロール力が高く、戦闘員、諜報員として広く活躍するエリート。
転移と透視しか得意とせず戦闘経験もない私は、相手に先に見つかれば一瞬にして捕まることになる。
油断が敗北となる恐ろしい相手。
街へ出る時には加護の魔法、防御魔法をかけて出掛けるべきだ。
捕まったとしても転移すれば逃げることは出来る。
だが、解呪魔法がなければ、身動きのできない状態に置かれるということ。
私が弱い結界を張り続けることが出来るように、彼らもまた拘束魔法を長い間維持するくらいの魔力は保持している。
拘束が解けないとなれば死活問題であり、手助けがなければ降伏するしかなくなるのだ。
手に持っていたパンケーキの入った紙袋は、ぐしゃりと握りつぶされていた。
「私のパンケーキ…」
くしゃりとした袋の口を緩め、手を入れても幾分小さくなった破片しか掴むことはできなかった。
月のようなまんまるなパンケーキに齧り付きたかったのに、儚くもその夢は叶わなかった。
おのれ…食べ物の恨みは恐ろしいということを知らしめてやる。
魔法省が動いているのなら魔法省の動きを把握すればいい。
フッフッフッ見てなさい。攻撃魔法じゃなくても魔法省の中身を空っぽにすることは容易い。
一人一人消えていく恐ろしさを味わうがいい!
急いで加護と防御の魔法を身にまとい、魔法省の敷地内にある寮のジュリアンの私室へと転移した。
最初から防御していれば怖いものなんてない。
滞在場所がバレるようなことはしない。
本部が大変になれば、散らばっているであろう魔術師達は王都に戻らざるを得ない。
姿を見せず、一人一人王都から追いやって仕舞えばいいのだ。
ジュリアンは既に学園にいる時間なので、当たり前のように部屋の主は不在。
手慣らしとばかりに、窓から見える非番で油断している魔術師達を1人、また1人と転移魔法を使って王都から追い出す。
すぐに視界に入るものは誰もいなくなった。
もしかして透視しながらでも遠隔で転移させられるのでは?
物は試しとばかりに、魔法省の門番を透視すると指を鳴らす。
「私って天才かも…」
何の問題もなく姿を消した門番の横にいた、もう1人の門番が当たりをキョロキョロとしている。
もう一度指を鳴らすと門に立つ番人は姿を消した。
王都へ転移してからも転移魔法を何度も使っている為、しっかり自覚できるほどには魔力が減っていた。
領地まで帰る魔力は残っていないが、魔力の多い貴族が犇めく王都を今歩くわけにはいかない。
なるべく田舎で、且つ転送装置からも離れた街を考える。
コーンウォリス男爵領は王都に隣接するコーンウォリス邸の周辺以外は人は少ないはずだ。ワインの有名な産地であるミルハナンの街ならば、残りの魔力でも転移できるはず。
「ついでにサリーとお茶でもしながらきっちり話をしたいところだけど、この格好じゃ会いに行けないし…仕方ないよね。お腹も空いたし」
お腹を撫でながらゆっくりと目を瞑ると、少し冷えた風が頬を撫でた。
目の前に広がる緩やかな斜面に広がった葡萄畑で、イシュトハン邸の裏庭とはまた違うさわやかな草の匂いがしている。
「わぁー」
めいいっぱい爽やかな空気を鼻から吸って、もう一度吸いたいと急いで吐き出す。
しかし後ろを振り返ればミルハナンの街の小さな繁華街がすぐ近くに見える。
目的地は庶民向けのレストランなのだ。
気だるい身体を揺らしながらも、わくわくしながら人々の笑い声が聞こえる繁華街へと向かった。
あれは魔法省の人間に間違いない。
王都で見慣れたオーラの中でも一際強い輝きだった。
少なくともジュリアンよりも魔力は多い。
フリード位の魔力は有しているはずだ。
どんなに平民の格好をしても、身にまとうオーラまでは隠しきれない。
一目見れば魔力の多さからすぐに特定される。
イシュトハン家以外にこれほどのオーラを放つ者は存在しない。
先程の男達を確認するため、息を吐きながら目を閉じる。
男達は魔力を隠しもせず飛び回っていた。
比喩などではなく、文字通り飛び回っている。
広場の木々、屋台の細い柱、いかなるものもジャンプ台のように使って移動している。
身体強化の魔法か。
騎士達とは異なり制服のない魔法省の者たちは、身に纏ったオーラが身分証のようなものだ。
「なんでこんな町外れにまで手が伸びているの…」
身体強化魔法を使える者は魔力コントロール力が高く、戦闘員、諜報員として広く活躍するエリート。
転移と透視しか得意とせず戦闘経験もない私は、相手に先に見つかれば一瞬にして捕まることになる。
油断が敗北となる恐ろしい相手。
街へ出る時には加護の魔法、防御魔法をかけて出掛けるべきだ。
捕まったとしても転移すれば逃げることは出来る。
だが、解呪魔法がなければ、身動きのできない状態に置かれるということ。
私が弱い結界を張り続けることが出来るように、彼らもまた拘束魔法を長い間維持するくらいの魔力は保持している。
拘束が解けないとなれば死活問題であり、手助けがなければ降伏するしかなくなるのだ。
手に持っていたパンケーキの入った紙袋は、ぐしゃりと握りつぶされていた。
「私のパンケーキ…」
くしゃりとした袋の口を緩め、手を入れても幾分小さくなった破片しか掴むことはできなかった。
月のようなまんまるなパンケーキに齧り付きたかったのに、儚くもその夢は叶わなかった。
おのれ…食べ物の恨みは恐ろしいということを知らしめてやる。
魔法省が動いているのなら魔法省の動きを把握すればいい。
フッフッフッ見てなさい。攻撃魔法じゃなくても魔法省の中身を空っぽにすることは容易い。
一人一人消えていく恐ろしさを味わうがいい!
急いで加護と防御の魔法を身にまとい、魔法省の敷地内にある寮のジュリアンの私室へと転移した。
最初から防御していれば怖いものなんてない。
滞在場所がバレるようなことはしない。
本部が大変になれば、散らばっているであろう魔術師達は王都に戻らざるを得ない。
姿を見せず、一人一人王都から追いやって仕舞えばいいのだ。
ジュリアンは既に学園にいる時間なので、当たり前のように部屋の主は不在。
手慣らしとばかりに、窓から見える非番で油断している魔術師達を1人、また1人と転移魔法を使って王都から追い出す。
すぐに視界に入るものは誰もいなくなった。
もしかして透視しながらでも遠隔で転移させられるのでは?
物は試しとばかりに、魔法省の門番を透視すると指を鳴らす。
「私って天才かも…」
何の問題もなく姿を消した門番の横にいた、もう1人の門番が当たりをキョロキョロとしている。
もう一度指を鳴らすと門に立つ番人は姿を消した。
王都へ転移してからも転移魔法を何度も使っている為、しっかり自覚できるほどには魔力が減っていた。
領地まで帰る魔力は残っていないが、魔力の多い貴族が犇めく王都を今歩くわけにはいかない。
なるべく田舎で、且つ転送装置からも離れた街を考える。
コーンウォリス男爵領は王都に隣接するコーンウォリス邸の周辺以外は人は少ないはずだ。ワインの有名な産地であるミルハナンの街ならば、残りの魔力でも転移できるはず。
「ついでにサリーとお茶でもしながらきっちり話をしたいところだけど、この格好じゃ会いに行けないし…仕方ないよね。お腹も空いたし」
お腹を撫でながらゆっくりと目を瞑ると、少し冷えた風が頬を撫でた。
目の前に広がる緩やかな斜面に広がった葡萄畑で、イシュトハン邸の裏庭とはまた違うさわやかな草の匂いがしている。
「わぁー」
めいいっぱい爽やかな空気を鼻から吸って、もう一度吸いたいと急いで吐き出す。
しかし後ろを振り返ればミルハナンの街の小さな繁華街がすぐ近くに見える。
目的地は庶民向けのレストランなのだ。
気だるい身体を揺らしながらも、わくわくしながら人々の笑い声が聞こえる繁華街へと向かった。
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