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alone
魔力の創出地
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ステラはすぐにミーリン島へ連絡を取ったが、返事が帰ってくることはなかった。
そして、クロエもその日から戻ってくることはない。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
「ふーん、ここが魔王達の墓」
クロエは一人、サステナが話していた魔王四人が眠るという石碑の前にいた。
その周辺には、魔力を含んで光る果実や葉が生い茂っている。
「ん?また魔獣がいるわ」
小さなリスが目の前の木の実を持ち去って行くのが見えた。
ここに来て、もう何匹目かと言うほど魔獣が生息していた。
「魔力の器を持つのは人間だけじゃなかった…」
愛し子として器を授かった一人の女性から、魔力を保持できる器を持った私たちが生まれたというのが、大陸の誰もが知る神話なのだが、ミーリン島に限っては全てとは行かないが動物や植物も器を持っているようだ。
神が器を与えたのだろうか?
その疑問の答えは教会の総本部で見つけることが出来た。
「あら、私に何か用事?」
「マトゥルス国のクロエ様とお見受けいたします」
「えぇ、見ての通り」
ミーリン島の教会総本部で資料を漁っていると、神官と思われる男に後ろから声を掛けられた。
「何をお探しなのですか?」
「私の疑問に答えてくれる全てのものを」
どの国の王もこのミーリン島に足を踏み入れることは出来ない。
その地に、クロエが当たり前のように自由に歩き回れている。
「一部ならお力添え出来るかもしれません。ご案内します」
宮殿のような教会総本部の地下へと案内されていた。
何度かこの建物へは足を踏み入れたが、まだ見ていないところは沢山ありそうだ。
しっかりと魔石で灯りがつけられ、地下室だというのに嫌な湿気も感じなかった。
「こちらに魔王であった4人もお読みになったとされるトゥリヤ神話の写しがございます」
神官が目の前で鍵を開け、魔力を扉に流し込むと扉は音をたてながら開かれていった。
「そう、ありがとう」
クロエは迷いなくその部屋へ足を踏み入れ、中央に置かれた分厚い羊皮紙で出来た書籍を手に取った。
この部屋は本を保管するための部屋のようで、ほかには何もない。
「椅子をお持ちいたしました」
地上から転移させてきたのか、神官はしっかりとした椅子を持ち、部屋に入ってくる。
「ありがとう。暫く一人にしてもらえる?」
静かに一礼すると神官は部屋を出て行った。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
クロエがミーリン島全域を支配するのは一瞬のことだった。
現在存在する人間の中で、最も魔力が多いのがクロエだと誰から見ても明らかだったからだ。
サステナの言葉でいう、覚醒をしたのだろう後は、クロエの価値観を塗り替えた。
どんなに戦闘訓練を受けた者でも、私を殺すことは出来ないだろう。
それと同時に、自分が世界の敵であろうことも察することが出来た。
ミーリン島の神聖さは、自由で強力な魔力を持つクロエを非難することだろう。
そうでなければ、自分達の立場が危うくなる。
魔王と呼ばれた四人の魔術師は、多くの戦争を呼び起こした。
自分がその元凶になり得るのだ。
島を囲う結界はクロエには無意味なものだ。
それを裏付けるのにもイシュトハンに来た者たちをミーリン島に帰した。
「この国は、魔力がいちばん強い者が王となるのでしたね」
多くの者が、クロエの結界の中で状況を把握出来ないでいた。
イシュトハンにいたはずが、気が付いたら囚われていたのだ。
「イシュトハン公爵夫人、これは一体どういうおつもりですか?」
「貴方は…確かクリンプトンと言ったかしら」
言いたいことは沢山あったが、目の前の者は理由もわからず怯えている者が圧倒的に多かった。
その中で、クリンプトンはクロエを真っ直ぐ見つめていた。
「はい」
「国の責任は本来、王が負うものだけど、この国は王の責任を国が負うのかしら」
「それはどういう意味で?」
クリンプトンはその場にいなかったのだから、説明が必要だろうか?だが、フリードのことは本来の目的とは話が逸れる。
「この国、国王の選定方法は、魔力保持量の多さでしたよね?」
「そうですが…」
「なら、私が王ですね」
突拍子もないクロエの言葉により、静かになった空間で、クリンプトンの笑い声が響いた。
「ハッハハッ…コホンッ…失礼。たしかに今現在この島にいる者で1番魔力の多いものはイシュトハン公爵夫人であることは疑いようもありません。これはこの国の法律上の問題でしたね」
ミーリン島の法律は知らないが、島外からの侵入者を認めていない以上、明記せずとも島内で生まれ育った者の中で1番魔力の多い者という前提があったのだろう。
だが、だからこそ穴があった。
「なら、王だと認めるということね」
「認めなければ認めさせるだけの力があるのに、何の文句がつけられましょうか。法律がなくとも超法的な存在であるイシュトハン公爵夫人に全ての決定権がある。この国だけでなく、世界中のあらゆる国も同じことです」
「そう?簡単に終わるならそれに越したことはない。なら命じるわ。国王制度は廃止して、教会内から選出した教皇をおきなさい。厳選なる話し合いで教皇を決め、不適切であれば別の教皇を置く。今でも教会内での序列があるでしょうから不可能ではないわよね?」
こうしてクロエは他国の誰も知らないところでミーリン島の期間限定の女王となった。
そして、クロエもその日から戻ってくることはない。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
「ふーん、ここが魔王達の墓」
クロエは一人、サステナが話していた魔王四人が眠るという石碑の前にいた。
その周辺には、魔力を含んで光る果実や葉が生い茂っている。
「ん?また魔獣がいるわ」
小さなリスが目の前の木の実を持ち去って行くのが見えた。
ここに来て、もう何匹目かと言うほど魔獣が生息していた。
「魔力の器を持つのは人間だけじゃなかった…」
愛し子として器を授かった一人の女性から、魔力を保持できる器を持った私たちが生まれたというのが、大陸の誰もが知る神話なのだが、ミーリン島に限っては全てとは行かないが動物や植物も器を持っているようだ。
神が器を与えたのだろうか?
その疑問の答えは教会の総本部で見つけることが出来た。
「あら、私に何か用事?」
「マトゥルス国のクロエ様とお見受けいたします」
「えぇ、見ての通り」
ミーリン島の教会総本部で資料を漁っていると、神官と思われる男に後ろから声を掛けられた。
「何をお探しなのですか?」
「私の疑問に答えてくれる全てのものを」
どの国の王もこのミーリン島に足を踏み入れることは出来ない。
その地に、クロエが当たり前のように自由に歩き回れている。
「一部ならお力添え出来るかもしれません。ご案内します」
宮殿のような教会総本部の地下へと案内されていた。
何度かこの建物へは足を踏み入れたが、まだ見ていないところは沢山ありそうだ。
しっかりと魔石で灯りがつけられ、地下室だというのに嫌な湿気も感じなかった。
「こちらに魔王であった4人もお読みになったとされるトゥリヤ神話の写しがございます」
神官が目の前で鍵を開け、魔力を扉に流し込むと扉は音をたてながら開かれていった。
「そう、ありがとう」
クロエは迷いなくその部屋へ足を踏み入れ、中央に置かれた分厚い羊皮紙で出来た書籍を手に取った。
この部屋は本を保管するための部屋のようで、ほかには何もない。
「椅子をお持ちいたしました」
地上から転移させてきたのか、神官はしっかりとした椅子を持ち、部屋に入ってくる。
「ありがとう。暫く一人にしてもらえる?」
静かに一礼すると神官は部屋を出て行った。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
クロエがミーリン島全域を支配するのは一瞬のことだった。
現在存在する人間の中で、最も魔力が多いのがクロエだと誰から見ても明らかだったからだ。
サステナの言葉でいう、覚醒をしたのだろう後は、クロエの価値観を塗り替えた。
どんなに戦闘訓練を受けた者でも、私を殺すことは出来ないだろう。
それと同時に、自分が世界の敵であろうことも察することが出来た。
ミーリン島の神聖さは、自由で強力な魔力を持つクロエを非難することだろう。
そうでなければ、自分達の立場が危うくなる。
魔王と呼ばれた四人の魔術師は、多くの戦争を呼び起こした。
自分がその元凶になり得るのだ。
島を囲う結界はクロエには無意味なものだ。
それを裏付けるのにもイシュトハンに来た者たちをミーリン島に帰した。
「この国は、魔力がいちばん強い者が王となるのでしたね」
多くの者が、クロエの結界の中で状況を把握出来ないでいた。
イシュトハンにいたはずが、気が付いたら囚われていたのだ。
「イシュトハン公爵夫人、これは一体どういうおつもりですか?」
「貴方は…確かクリンプトンと言ったかしら」
言いたいことは沢山あったが、目の前の者は理由もわからず怯えている者が圧倒的に多かった。
その中で、クリンプトンはクロエを真っ直ぐ見つめていた。
「はい」
「国の責任は本来、王が負うものだけど、この国は王の責任を国が負うのかしら」
「それはどういう意味で?」
クリンプトンはその場にいなかったのだから、説明が必要だろうか?だが、フリードのことは本来の目的とは話が逸れる。
「この国、国王の選定方法は、魔力保持量の多さでしたよね?」
「そうですが…」
「なら、私が王ですね」
突拍子もないクロエの言葉により、静かになった空間で、クリンプトンの笑い声が響いた。
「ハッハハッ…コホンッ…失礼。たしかに今現在この島にいる者で1番魔力の多いものはイシュトハン公爵夫人であることは疑いようもありません。これはこの国の法律上の問題でしたね」
ミーリン島の法律は知らないが、島外からの侵入者を認めていない以上、明記せずとも島内で生まれ育った者の中で1番魔力の多い者という前提があったのだろう。
だが、だからこそ穴があった。
「なら、王だと認めるということね」
「認めなければ認めさせるだけの力があるのに、何の文句がつけられましょうか。法律がなくとも超法的な存在であるイシュトハン公爵夫人に全ての決定権がある。この国だけでなく、世界中のあらゆる国も同じことです」
「そう?簡単に終わるならそれに越したことはない。なら命じるわ。国王制度は廃止して、教会内から選出した教皇をおきなさい。厳選なる話し合いで教皇を決め、不適切であれば別の教皇を置く。今でも教会内での序列があるでしょうから不可能ではないわよね?」
こうしてクロエは他国の誰も知らないところでミーリン島の期間限定の女王となった。
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