クロッカ・マーガレット・ハイランスの婚約破棄は初恋と共に

佐原香奈

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クロッカは不思議に思っていた。

シュゼインと婚約破棄をしてから2年が経とうというのに、アルベルトは全く口説いてこなかった。
もうクロッカが卒業するまで半年ほどしかなかった。


全力で口説くと言った言葉は私の聞き間違いだったのかと自分の記憶を疑い始めていた。


「いやいや、奴は確かに言った。これが奴の全力だと言うの?まさか!これはやっぱり私が娘にしか見えなくて有耶無耶にしてる。そうに違いないわ!」


自室でのことだから許してもらいたいと思いながらソファに身を投げる。



なによなによ。私だって胸はそれなりに。そうそれなりに出てきたし、ある一部の人だけに天使と呼ばれていただけあってこの美しい髪だって褒められるし、大人になったと思う。この女の2年間は別人になるほど大きい2年よ。


そう思えば思うほど、口説かれない自分が惨めに感じてしまう。


やっぱりコンラトの嫁にしてと頼んだ方が絶対に良かった。
あのアルベルトが私を女として見るなんてあり得ない。
今だって扱いは娘。いやここ最近は頭を撫でられることすらない。


ちょうどここ2ヶ月ほどアルベルトは北の方の視察へ行くとかで会えていない。


なんて罪な男なのかしら。
この2年、短い時は顔だけ見て帰る時もあったけれど時間の取れる時は一緒に居てくれて、更に婚約しているからほかに男の影すらもない私。
未だにアルベルトに話すのは愚痴くらいなものだけど、惹かれてしまうのも当然じゃないの!恋に恋する年頃なの。
釣った魚に餌をやらないなんて鬼畜もいいところだわ。


なぜあんな男を好きになってしまったのかしら…



「えっ!私好きなのかしら」


釣られた魚だから好きなのか。そうか、釣られてしまったのね。
2度目の失恋だわ。しかも息子に振られた後父親にも振られるって、私もう修道院へ入っても笑い物にされそうな勢いの醜聞ね…ハハッ



37歳の男がなんだというの。油ギッシュで汚い男なら無理よ。でも彼は舞台役者でもいける作りの顔なの。爽やかさは目に染みるほどだし、ハゲてもないし、ちょっと最近笑うとシワは寄るけどそれがまたいいの。
さらに事あるごとに送られるプレゼントは私好みの物だし、流石幼い頃から貢いでくれていただけある。
惚れない方がおかしい。
シュゼインと婚約してた時はその人の父だと思って接していたけど、シュゼインとも関係のない今、いつまでも義父だと思う方が無理な話で…じゃあ何故アルベルトは私をいつまでも娘扱いするのかって言われると手も足も出ないけど、まぁ私に魅力がないってことよね…




もうクロッカはこんなことをずっと1人で繰り返していた。
シュゼインの事は2年経てばすっかり過去のこと。
結婚してるし、子供もいるし、最後もちょっと理解出来なかったし、ふっきれるのには時間はかからなかったとは言えないけど、いつまでも想っていてもしょうがないと最初から考えていたのだからあっけらかんとしたものである。


いつからアルベルトを意識したかと言われるとこれと言って思い当たる節はなかった。
強いて言えば、この会えない2ヶ月がクロッカの恋を育ててしまったように思う。


アルベルトに悪態をつくところから始まってしまったのも良くなかった。
本音を隠さずに言えてしまう。
義父だと思っていた頃は淑女教育が邪魔をしていたし、シュゼインも優しくて穏やかだったので喧嘩をすることもほとんどなかった。


自分の頭のネジが全部閉まってると思っているの?なんて言う暴言を吐くようなことはアルベルトにもシュゼインにも過去になかったことだ。
隠せていたとは思わないが、面と向かって毒を吐いた事は一度もなかったと断言できる。


今となっては元婚約者のシュゼインには好んで会いたくはないけど勝手に幸せになってたらいいじゃない。と思うくらいなもので、結婚しても会わないで済むのだし、このままアルベルトには嫁にもらって欲しいと願っていた。


アルベルトの嫁になるか修道院行くかの選択しか持ち合わせていないのだから絆された方が幸せだと思っても無理はない話。
本当に愛されるのならば、愛される未来を選びたいに決まっている。
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