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歳の差
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アルベルトは王都へ戻ってくると、先触れを出した後にクロッカの元へ向かった。
視察の間に手紙を一往復させた位だったので、きっとクロッカには沢山の愚痴が溜まっている事だろうと考えていた。
アルベルトを出迎えたクロッカは、しっかりと化粧をしていてひどく大人びており、2ヶ月も経つと娘はすごく成長するものなんだなと思わず感心させられてしまった。
「久しぶりだねクロッカ。一瞬君だとは分からなかった。その髪型もとても似合うよ」
アルベルトは褒めたつもりだったようだが、クロッカは口を尖らせて不満げだった。
中身は短い期間ではそれ程成長しない。
日の当たるバルコニーに通され、アルベルトは無言で席に座らされる。
お気に入りの紅茶を飲んでもクロッカの機嫌は直らなかった。
「アルベルトは私を本気で口説くとおっしゃったのをお忘れなのかしら」
髪をアップにし、気合を入れて化粧を施してもらい、少しデコルテの出たそれでいて上品に見えるドレスを選んで完成した自分は、自画自賛したほどの出来栄えだった。
それが「その髪型も似合うよ」の一言で終わってしまったのだ。
機嫌が悪いのも当たり前である。
「それは褒め言葉の催促かな?」
涼しい顔でカップを手にするアルベルトがクロッカを煽っているように感じた。
その紺色の目はクロッカの欲しい反応を示すことはない。
「私は言いませんでしたか?私を愛してくれない男の嫁になるくらいなら、そんな男はいない方がマシだと」
可愛くないなと自分に苦笑いしそうだった。
もっと可愛く言うことだって出来るのにそれを選択できない。
「結婚するまでまだ半年ある。そんなに急ぐ必要はないと言ってあっただろう」
この男のどこが良かったんだろう。
私の側にいるが、私の心に寄り添うことはない。
愛し合う努力をしようと言った彼の言葉を思い出す。
努力して愛したり愛さなかったり出来るなら、恋愛小説なんてこの世に存在はしないだろう。
あの時はその言葉が嬉しかった。
私はまだ愛される事を諦めなくてもいいのかもしれないと少し救われもした。
確かに彼は時間を取る努力をしてくれていた。
それは愛する努力なのかと言ったら甚だ疑問だ。
「まぁ!ご自身に余程自信がありますのね。2年経っても娘としか見れないのに、あと半年で私を愛して、私からも愛されると思っているだなんて。流石に自惚れすぎでは?」
「半年で時間が足りないのなら、半年に拘らなければいい。節目のタイミングの方が都合が良かっただけのこと。私たち2人には特段急ぐ理由があったわけではない」
クロッカはやっと気付いた。彼は最初からそのつもりだったんだと。
サッと顔の表面が冷めていくような、体から何かが尻尾を巻いて逃げ出したかのような感覚を覚える。
私は1人踊らされていただけ。
シュゼインの父親と分かっていながらこんな感情を持った自分が恥ずかしい。
彼が妻を忘れられるわけがない。
ほんの少しでも期待して着飾った自分が恥ずかしすぎて可哀想でそしてとても悔しい。
彼は誤魔化して時間稼ぎをしたいのだろう。
「ワーデン伯爵様、今日はお引き取りを。ご婚約の話はこちらから破棄させていただきます。あなたを愛する事はないと、たった今確信致しました」
「…その話は半年経ってから聞こう」
「2年も無駄にしたのにこれ以上あなた方のお遊びに付き合うわけがないでしょう。息子も残念な男だったけど、あなたに似たのね。エマ、ワーデン伯がお帰りです。送って差し上げて」
私はアルベルトの婚約者となったばかりに僅かながらにも残されていた下級貴族との縁談も希望が持てなくなった。
伯爵家の息子と婚約破棄し、父親とも婚約破棄。
爵位もお金も欲しい者も、怖くて縁談を持ちかけてなんて来ないだろう。
あの時から修道院へ行くしかないのに、ただただ傷付くために遠回りをしてしまった。
自尊心とやらが私にあったのなら、今目の前で粉々になっているものがそうなのだろう。
愛される道があるのなら愛される人生を送りたいと願ったことが間違いだった。
愛していたはずのシュゼインを気持ち悪いと思ったあの瞬間から、愛される資格なんて私にはなかったのだ。
それでも愛されたかったと思う私は本当に愚か者だ。
視察の間に手紙を一往復させた位だったので、きっとクロッカには沢山の愚痴が溜まっている事だろうと考えていた。
アルベルトを出迎えたクロッカは、しっかりと化粧をしていてひどく大人びており、2ヶ月も経つと娘はすごく成長するものなんだなと思わず感心させられてしまった。
「久しぶりだねクロッカ。一瞬君だとは分からなかった。その髪型もとても似合うよ」
アルベルトは褒めたつもりだったようだが、クロッカは口を尖らせて不満げだった。
中身は短い期間ではそれ程成長しない。
日の当たるバルコニーに通され、アルベルトは無言で席に座らされる。
お気に入りの紅茶を飲んでもクロッカの機嫌は直らなかった。
「アルベルトは私を本気で口説くとおっしゃったのをお忘れなのかしら」
髪をアップにし、気合を入れて化粧を施してもらい、少しデコルテの出たそれでいて上品に見えるドレスを選んで完成した自分は、自画自賛したほどの出来栄えだった。
それが「その髪型も似合うよ」の一言で終わってしまったのだ。
機嫌が悪いのも当たり前である。
「それは褒め言葉の催促かな?」
涼しい顔でカップを手にするアルベルトがクロッカを煽っているように感じた。
その紺色の目はクロッカの欲しい反応を示すことはない。
「私は言いませんでしたか?私を愛してくれない男の嫁になるくらいなら、そんな男はいない方がマシだと」
可愛くないなと自分に苦笑いしそうだった。
もっと可愛く言うことだって出来るのにそれを選択できない。
「結婚するまでまだ半年ある。そんなに急ぐ必要はないと言ってあっただろう」
この男のどこが良かったんだろう。
私の側にいるが、私の心に寄り添うことはない。
愛し合う努力をしようと言った彼の言葉を思い出す。
努力して愛したり愛さなかったり出来るなら、恋愛小説なんてこの世に存在はしないだろう。
あの時はその言葉が嬉しかった。
私はまだ愛される事を諦めなくてもいいのかもしれないと少し救われもした。
確かに彼は時間を取る努力をしてくれていた。
それは愛する努力なのかと言ったら甚だ疑問だ。
「まぁ!ご自身に余程自信がありますのね。2年経っても娘としか見れないのに、あと半年で私を愛して、私からも愛されると思っているだなんて。流石に自惚れすぎでは?」
「半年で時間が足りないのなら、半年に拘らなければいい。節目のタイミングの方が都合が良かっただけのこと。私たち2人には特段急ぐ理由があったわけではない」
クロッカはやっと気付いた。彼は最初からそのつもりだったんだと。
サッと顔の表面が冷めていくような、体から何かが尻尾を巻いて逃げ出したかのような感覚を覚える。
私は1人踊らされていただけ。
シュゼインの父親と分かっていながらこんな感情を持った自分が恥ずかしい。
彼が妻を忘れられるわけがない。
ほんの少しでも期待して着飾った自分が恥ずかしすぎて可哀想でそしてとても悔しい。
彼は誤魔化して時間稼ぎをしたいのだろう。
「ワーデン伯爵様、今日はお引き取りを。ご婚約の話はこちらから破棄させていただきます。あなたを愛する事はないと、たった今確信致しました」
「…その話は半年経ってから聞こう」
「2年も無駄にしたのにこれ以上あなた方のお遊びに付き合うわけがないでしょう。息子も残念な男だったけど、あなたに似たのね。エマ、ワーデン伯がお帰りです。送って差し上げて」
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爵位もお金も欲しい者も、怖くて縁談を持ちかけてなんて来ないだろう。
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自尊心とやらが私にあったのなら、今目の前で粉々になっているものがそうなのだろう。
愛される道があるのなら愛される人生を送りたいと願ったことが間違いだった。
愛していたはずのシュゼインを気持ち悪いと思ったあの瞬間から、愛される資格なんて私にはなかったのだ。
それでも愛されたかったと思う私は本当に愚か者だ。
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