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帰国の知らせ
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王国を出てから一年半ほどがすぎ、クロッカへ陛下から帰国命令が届いていた。
アガトンが帝都の帝国の学園に入ってからも半年が経っていた。
その半年の間で、アガトンが王国へ留学する事が決まり、クロッカの帰国に合わせて留学の日程を組んでいるということだ。
この視察の成果の一部となるよう、アガトン殿下からの希望を受けて、皇帝陛下が配慮してくださったと聞いている。
予定されていた皇帝陛下の生誕パーティーが今夜開かれるのだが、そこで急遽帰国の挨拶をする時間をいただけることになり、クロッカはキャサリンに連れられて全身を磨き上げられていた。
「似合うじゃない!こっち向いて。すごく大人っぽくなったわ」
天使のようだと称されたハイトーンゴールドのウェーブのかかった髪も美しく後ろでシニヨンヘアにされ、
金の髪飾りが光る。
帝国の公式の場では必須とされる帽子は透き通る海のようなレースがあしらわれて上品だが、前から見るとボート型に黒い羽がついて人目を奪う。
「なんだか恥ずかしいわ…」
深いブルーのドレスはコルセットをつけず、体のラインに沿って床まで裾が伸び、フィッシュテールが床まで伸びて、歩くと優雅に床を撫でていた。
王国ではコルセットで引き締めて、スカートはボリュームのあるものが一般的。
これほど体のラインを見せることはない。
普段着ているドレスも、寝る時のワンピースも、ふわふわと揺れるものばかりだった。
「帝国風ドレスと言っても、これは最先端のデザインで、きっと注目されるわ!タイトロングドレスが新しいブームとなるようにするのよ!」
肩から腰にかけて、右側だけに大きな黒い花ように刺繍がされており、ダイヤも散りばめられている。さらにスカートのサイドは黒いレースが入っており、足が透けて見える。
帝国ではタイトなドレスを着ているものはいるが、大胆なスリットが入っているものが多い。
スリットではないのに透けて見え、そして黒いレースがなんとなく色気を醸し出しくれている。
直接的な露出でないことは、タイトドレス初心者には手に取りやすいのは確かな事だと身をもって感じていた。
「コルセットとは違って楽だけど、シュミーズも履けないし、みんなこんな格好でパーティで笑っていたなんて信じられない」
下着のラインが出てしまうため、コルセットやシュミーズはもちろん、下着の一枚すら着させてはもらえなかった。
今日初めて知った事実で、無知とは恐ろしいものだと感じている。
「そのうち慣れるわ。私も着替えてくるから、ネイルをしてもらって」
「えぇ。キャサリンのドレスも楽しみだわ」
帝都近くまで南下してきていた一行は、美の都と呼ばれるラピスの街で1ヶ月ほど滞在していた。
生誕パーティーのための準備のための比較的長い滞在となったのだが、美の都と呼ばれるだけあって、一流のハンマムが点在していた。
帝国の流行を作っていく側室たちも、帯同しているお抱えのハンマムの美容師や針子達に暇を与えて勉強する時間を与え、街のハンマムやデザインアトリエに世話になっている程だった。
1人がけの赤いソファに座らされると、2人の施術師が爪を磨き上げ、青い花から作られたポリッシュを爪にのせて染めあげていく。
王国ではナチュラルなクリアピンクが好まれているので、ドレスに合わせて爪の色を変えるのはこれが初めてで爪の先だけに乗せられたポリッシュの派手な青色に目は釘付けとなった。
爪が染まるのを待つ中、王国に戻ってからのことを考える。
迷惑をかけてしまった父にようやく会えるのは今からとても楽しみだが、同時に慌ただしくそして背負うべき大きな使命が待っている。
イリアは革命の先頭に立って市民や貴族問わず戦っている。
本来なら自分も王国で戦うはずだったのだが、彼女は1人で立ち向かっている。
お膳立てだけさせて逃げる事はできない。
帝国では出来なかった味方作りをこれから進めていかなければならない。
クロッカは目を閉じて頭を背もたれに預けた。
アルベルトのことも考えなければいけない。
パーティーへ出る機会も多いが男性とあまり親密にならないようにと、苦言とも思われる内容が手紙に記されているときもあったが、最近は現状報告に留まっている。日を追うごとに手紙の頻度は増えたように感じていた。
おかしな独占欲だけはあるようだが、それが自分の持つ禍々しい抑え込むのに血を吐くような思いをする感情なのかと言えば違うだろう。
離れている時間が愛を育ててしまった。
アルベルトを好きだと自覚した時はそんな風に思っていたが、今はこんなにも冷静に彼の本心を探っている。
一年半という月日は今思えば走馬灯でも見ていたかのようにあっという間だったが、自分でも驚くほど心を育ててくれたように思う。
それでも思う。彼が早く別れを切り出してくれますようにと。
アガトンが帝都の帝国の学園に入ってからも半年が経っていた。
その半年の間で、アガトンが王国へ留学する事が決まり、クロッカの帰国に合わせて留学の日程を組んでいるということだ。
この視察の成果の一部となるよう、アガトン殿下からの希望を受けて、皇帝陛下が配慮してくださったと聞いている。
予定されていた皇帝陛下の生誕パーティーが今夜開かれるのだが、そこで急遽帰国の挨拶をする時間をいただけることになり、クロッカはキャサリンに連れられて全身を磨き上げられていた。
「似合うじゃない!こっち向いて。すごく大人っぽくなったわ」
天使のようだと称されたハイトーンゴールドのウェーブのかかった髪も美しく後ろでシニヨンヘアにされ、
金の髪飾りが光る。
帝国の公式の場では必須とされる帽子は透き通る海のようなレースがあしらわれて上品だが、前から見るとボート型に黒い羽がついて人目を奪う。
「なんだか恥ずかしいわ…」
深いブルーのドレスはコルセットをつけず、体のラインに沿って床まで裾が伸び、フィッシュテールが床まで伸びて、歩くと優雅に床を撫でていた。
王国ではコルセットで引き締めて、スカートはボリュームのあるものが一般的。
これほど体のラインを見せることはない。
普段着ているドレスも、寝る時のワンピースも、ふわふわと揺れるものばかりだった。
「帝国風ドレスと言っても、これは最先端のデザインで、きっと注目されるわ!タイトロングドレスが新しいブームとなるようにするのよ!」
肩から腰にかけて、右側だけに大きな黒い花ように刺繍がされており、ダイヤも散りばめられている。さらにスカートのサイドは黒いレースが入っており、足が透けて見える。
帝国ではタイトなドレスを着ているものはいるが、大胆なスリットが入っているものが多い。
スリットではないのに透けて見え、そして黒いレースがなんとなく色気を醸し出しくれている。
直接的な露出でないことは、タイトドレス初心者には手に取りやすいのは確かな事だと身をもって感じていた。
「コルセットとは違って楽だけど、シュミーズも履けないし、みんなこんな格好でパーティで笑っていたなんて信じられない」
下着のラインが出てしまうため、コルセットやシュミーズはもちろん、下着の一枚すら着させてはもらえなかった。
今日初めて知った事実で、無知とは恐ろしいものだと感じている。
「そのうち慣れるわ。私も着替えてくるから、ネイルをしてもらって」
「えぇ。キャサリンのドレスも楽しみだわ」
帝都近くまで南下してきていた一行は、美の都と呼ばれるラピスの街で1ヶ月ほど滞在していた。
生誕パーティーのための準備のための比較的長い滞在となったのだが、美の都と呼ばれるだけあって、一流のハンマムが点在していた。
帝国の流行を作っていく側室たちも、帯同しているお抱えのハンマムの美容師や針子達に暇を与えて勉強する時間を与え、街のハンマムやデザインアトリエに世話になっている程だった。
1人がけの赤いソファに座らされると、2人の施術師が爪を磨き上げ、青い花から作られたポリッシュを爪にのせて染めあげていく。
王国ではナチュラルなクリアピンクが好まれているので、ドレスに合わせて爪の色を変えるのはこれが初めてで爪の先だけに乗せられたポリッシュの派手な青色に目は釘付けとなった。
爪が染まるのを待つ中、王国に戻ってからのことを考える。
迷惑をかけてしまった父にようやく会えるのは今からとても楽しみだが、同時に慌ただしくそして背負うべき大きな使命が待っている。
イリアは革命の先頭に立って市民や貴族問わず戦っている。
本来なら自分も王国で戦うはずだったのだが、彼女は1人で立ち向かっている。
お膳立てだけさせて逃げる事はできない。
帝国では出来なかった味方作りをこれから進めていかなければならない。
クロッカは目を閉じて頭を背もたれに預けた。
アルベルトのことも考えなければいけない。
パーティーへ出る機会も多いが男性とあまり親密にならないようにと、苦言とも思われる内容が手紙に記されているときもあったが、最近は現状報告に留まっている。日を追うごとに手紙の頻度は増えたように感じていた。
おかしな独占欲だけはあるようだが、それが自分の持つ禍々しい抑え込むのに血を吐くような思いをする感情なのかと言えば違うだろう。
離れている時間が愛を育ててしまった。
アルベルトを好きだと自覚した時はそんな風に思っていたが、今はこんなにも冷静に彼の本心を探っている。
一年半という月日は今思えば走馬灯でも見ていたかのようにあっという間だったが、自分でも驚くほど心を育ててくれたように思う。
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