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3章「こんなはずでは?」
34話
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そんなステラ嬢を可愛らしいと思いながら、俺達は廃虚の探索を開始した。
と言っても、今自分が住んでいる建物が物凄く劣化した以外特に目立った事は無く、配置されている設備等も一般的な建物のそれとほとんど同じだった。
俺達はリビングにあたる部屋に辿り着くと、設置されていたテーブルの周囲を囲う木で出来た椅子の耐久性を確認した後に腰を下ろした。
これで、軽犯罪法の第一条を破る事に成功し、悪行の一つを果たしたワケであるが。
なんだか地味だよなぁ、じゃない。
妙な違和感があるのだよ。
まず、少なくとも10年は放置されているだろう廃館。その中に設置されている椅子が座れた事。
俺が元々住んでいた日本の技術力なら有り得ない話ではないだろうが、このナーロッパでしかも木で出来た椅子が朽ち果てていないのは少し疑問だ。
まるで何者かが新調し使っている様な。
いや、耐久性に問題が無かったとしても少なくとも埃をかぶっていないのは可笑しい。
建物を植物が占拠していなかったのも、完全に無人では無く何者かが住んでいたからの可能性がある。
「ルチーナ様? 如何なされましたか?」
目的を達成したにも関わらず押し黙っている俺に対してステラ嬢が心配そうに尋ねた。
「何でも御座いません。 わたくしの悪行が無事成功した事に対して感傷に浸っていただけですわ。お気遣い感謝いたします事よ」
つまりは、この廃館を何者かがアジトにしている可能性が見えて来た。
ついてっきり日本のノリ、廃墟だろうが全く危険でない考えの元ここに来たのだが、ナーロッパと言う世界観であるならば、盗賊と言うやからが生息していても何の不思議もない。
いや、ナーロッパで無くとも日本以外で治安の悪い国ならば廃館が犯罪者のアジトにされる事は十分ありうる。
俺の頬を一筋の汗が伝った。
今ここにいるのは俺とステラ嬢とサナリスだ。
俺とステラ嬢は精々中学生でしかも女子、大人の男と比べ身体能力も何もかもが負けている。
更に、魔王ルチーナや王女ステラなら兎も角今はただの貴族のお嬢様、何の抵抗をする事も出来ない。
盗賊達からすれば、俺とステラ嬢は歩く宝石箱以外何者でもない。
身柄を拘束すれば俺達の親に身代金を要求出来るからだ。
ただ、幸いな事にこの世界でも魔法を扱えるサナリスが居る。
使うと少々面倒ごとになってしまうだろうが、後でレオナに何とかしてもらおう。
俺の読みが外れているか盗賊達が帰って来ない事を願うばかりだが。
「ステラさん! リベンジですッ!」
俺の心配事とは裏腹に、サナリスは懐からトランプを取り出しステラ嬢にリベンジマッチを挑む。
ステラ嬢も笑顔を見せそれを受ける。
二人とも現在の状況が良くない事を考えもしていないだろう。
とは言え、中学生程の少女が35歳のおっさんを経験している俺の基準で危険探知が出来ないのは仕方がないのだが。
トットットッ。
俺が感じる嫌な予感が肯定されるかの様に、何者かが此方に向かって来る足音が聞こえる。
今俺達が居るのはリビングで、ここに来られる可能性は極めて高い。
が、外に繋がる窓は無くとっさに逃げる事は不可能だ。
隠れるにしろ、侵入者の気配を探知した人間が捜索しない訳が無い、間違いなく見つかる。
ならば、サナリスの魔法に託し迎撃をする事がまともな選択か。
声を上げれば奴等に気付かれるが、他に択は無い。
「二人共、壁を背に!」
俺は二人に向け声を張り上げた。
サナリスもステラもぽかんとした表情で俺を見るが、
「良いから早く!」
俺がもう一度声を張り上げたところで、二人は俺に従い壁に向かって歩き出した。
「ルチーナ様? どうなされたのですか?」
ステラが心配そうな声で俺に尋ねた。
「ここをアジトにしている人達が帰って来た。足跡がする」
二人は耳を澄ませ、確かに何者かの足音が聞こえる事を確認した。
「ルチーナ様? 心配性ですね。誰が来ても私の魔法で一網打尽に出来ますよ☆」
「そうね。 サナリス、貴女に託してます。 ですが、わたくし達人間は不意打ちを食らってしまっては助かりません。故にその対策を致しました」
「あっ、それもそうでしたね」
サナリスは小さく舌を出して見せた。
可愛い仕草だが、今はそんな事言っている場合では無い。
「誰だ!」
リビングの扉が開かれ男の声がした。
サナリスの頭上にある炎球の灯りを頼りに彼等の確認をする。
年齢はよく分からないが、多分8人位の成人男性がいて、それぞれが武器を携えている様に見える。
しかし、抜刀している者は誰も居ない。
盗賊であるならば、俺達を捕らえる、最悪命を奪う為に抜刀位はするハズだ。
まさか、盗賊では無い? それならそれで有り難いが、この状況下で楽観的な事を考えるのは止めた方が良い。
だが、彼等が距離を詰める気配は無く、話し合いをする意図が感じ取られる。
俺はサナリスに対し攻撃を待ってくれと告げ、男達に向け返事をする。
「わたくし達は旅の者で御座います。ですがこの森で迷ってしまいまして、この廃館に退避させて頂きました」
と言っても、今自分が住んでいる建物が物凄く劣化した以外特に目立った事は無く、配置されている設備等も一般的な建物のそれとほとんど同じだった。
俺達はリビングにあたる部屋に辿り着くと、設置されていたテーブルの周囲を囲う木で出来た椅子の耐久性を確認した後に腰を下ろした。
これで、軽犯罪法の第一条を破る事に成功し、悪行の一つを果たしたワケであるが。
なんだか地味だよなぁ、じゃない。
妙な違和感があるのだよ。
まず、少なくとも10年は放置されているだろう廃館。その中に設置されている椅子が座れた事。
俺が元々住んでいた日本の技術力なら有り得ない話ではないだろうが、このナーロッパでしかも木で出来た椅子が朽ち果てていないのは少し疑問だ。
まるで何者かが新調し使っている様な。
いや、耐久性に問題が無かったとしても少なくとも埃をかぶっていないのは可笑しい。
建物を植物が占拠していなかったのも、完全に無人では無く何者かが住んでいたからの可能性がある。
「ルチーナ様? 如何なされましたか?」
目的を達成したにも関わらず押し黙っている俺に対してステラ嬢が心配そうに尋ねた。
「何でも御座いません。 わたくしの悪行が無事成功した事に対して感傷に浸っていただけですわ。お気遣い感謝いたします事よ」
つまりは、この廃館を何者かがアジトにしている可能性が見えて来た。
ついてっきり日本のノリ、廃墟だろうが全く危険でない考えの元ここに来たのだが、ナーロッパと言う世界観であるならば、盗賊と言うやからが生息していても何の不思議もない。
いや、ナーロッパで無くとも日本以外で治安の悪い国ならば廃館が犯罪者のアジトにされる事は十分ありうる。
俺の頬を一筋の汗が伝った。
今ここにいるのは俺とステラ嬢とサナリスだ。
俺とステラ嬢は精々中学生でしかも女子、大人の男と比べ身体能力も何もかもが負けている。
更に、魔王ルチーナや王女ステラなら兎も角今はただの貴族のお嬢様、何の抵抗をする事も出来ない。
盗賊達からすれば、俺とステラ嬢は歩く宝石箱以外何者でもない。
身柄を拘束すれば俺達の親に身代金を要求出来るからだ。
ただ、幸いな事にこの世界でも魔法を扱えるサナリスが居る。
使うと少々面倒ごとになってしまうだろうが、後でレオナに何とかしてもらおう。
俺の読みが外れているか盗賊達が帰って来ない事を願うばかりだが。
「ステラさん! リベンジですッ!」
俺の心配事とは裏腹に、サナリスは懐からトランプを取り出しステラ嬢にリベンジマッチを挑む。
ステラ嬢も笑顔を見せそれを受ける。
二人とも現在の状況が良くない事を考えもしていないだろう。
とは言え、中学生程の少女が35歳のおっさんを経験している俺の基準で危険探知が出来ないのは仕方がないのだが。
トットットッ。
俺が感じる嫌な予感が肯定されるかの様に、何者かが此方に向かって来る足音が聞こえる。
今俺達が居るのはリビングで、ここに来られる可能性は極めて高い。
が、外に繋がる窓は無くとっさに逃げる事は不可能だ。
隠れるにしろ、侵入者の気配を探知した人間が捜索しない訳が無い、間違いなく見つかる。
ならば、サナリスの魔法に託し迎撃をする事がまともな選択か。
声を上げれば奴等に気付かれるが、他に択は無い。
「二人共、壁を背に!」
俺は二人に向け声を張り上げた。
サナリスもステラもぽかんとした表情で俺を見るが、
「良いから早く!」
俺がもう一度声を張り上げたところで、二人は俺に従い壁に向かって歩き出した。
「ルチーナ様? どうなされたのですか?」
ステラが心配そうな声で俺に尋ねた。
「ここをアジトにしている人達が帰って来た。足跡がする」
二人は耳を澄ませ、確かに何者かの足音が聞こえる事を確認した。
「ルチーナ様? 心配性ですね。誰が来ても私の魔法で一網打尽に出来ますよ☆」
「そうね。 サナリス、貴女に託してます。 ですが、わたくし達人間は不意打ちを食らってしまっては助かりません。故にその対策を致しました」
「あっ、それもそうでしたね」
サナリスは小さく舌を出して見せた。
可愛い仕草だが、今はそんな事言っている場合では無い。
「誰だ!」
リビングの扉が開かれ男の声がした。
サナリスの頭上にある炎球の灯りを頼りに彼等の確認をする。
年齢はよく分からないが、多分8人位の成人男性がいて、それぞれが武器を携えている様に見える。
しかし、抜刀している者は誰も居ない。
盗賊であるならば、俺達を捕らえる、最悪命を奪う為に抜刀位はするハズだ。
まさか、盗賊では無い? それならそれで有り難いが、この状況下で楽観的な事を考えるのは止めた方が良い。
だが、彼等が距離を詰める気配は無く、話し合いをする意図が感じ取られる。
俺はサナリスに対し攻撃を待ってくれと告げ、男達に向け返事をする。
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