【完結】死に戻り王女は男装したまま亡命中、同室男子にうっかり恋をした。※R18

かたたな

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朝起きて。

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 「・・・。」


 重たい瞼をうっすら開ければ朝だった。
 部屋は窓からの光で明るく照らされている。

 悪夢を見たはずなのに、とてもよく眠れた夜だった・・・。

 まだ寝ていたい程で、布団が気持ちよくて抱き締めていた物に顔を埋めてギュッと抱き締めると春の爽やかな風のような香り。

 「ぅっ・・・」

 それは、小さく苦しそうな声を漏らした。
 布団に何か居る?顔を上げて確かめると、そこには息寝苦しそうに寝息をたてるお面を身に付けたままのコハクさんがいた。

 「!?」

 驚きで完全に目が覚めた。
 体制を確認すると、コハクさんを抱き枕の様に両手足でガッチリ抱え込んで掴んでいる。
 身動き出来ないこの状況でお面も付けたまま寝るなんて・・・さぞ寝苦しかっただろう。

 それでもこの人は無理に引き剥がさず居てくれた。男に捕まれてそのままにしておくなんてお人好しだ。

 起こさない様にゆっくり手足を離すと呼吸も穏やかになった気がする。

 「いっ。」

 自分の頭に微かに残る痛み。これのお陰で夜に何があったかある程度思い出せた。

 また悪夢を見てコハクさんに宥められていたんだ、起きたらお礼を言おう。

 静かにハシゴを降りると、軽く汗を流しに浴室へ。よく眠れたとはいえ悪夢を見た時の汗が変に気持ち悪かった。

 ・・・

 水浴びを終えて脱衣場で髪を拭う。黒い男物のパンツ一枚と男装チョーカーを身につけているだけの自分。鏡の前に立つ姿はどう見ても女の私。

 これがどう男に見えているのか・・・とても気になる。それと、胸に当てる何かしっかりとした布が欲しい。だけど見た目が男として見えているなら下手に女物を身につけない方がいいか・・女物を身に付ける男に見えてしまうのも困るし・・・。


 ガチャッ


 脱衣場の扉を開ける物音にそちらを向くと、ちょうど入って来たコハクさんと目が合った・・・と思う。お面で分からない。


 「ぇ、あ、うわあああああ!!」
 「あ。」

 バタンッ!!

 昨日はありがとうと言おうとしたらコハクさんが叫び出し、勢いよく扉が閉められた。
 
 見られたの私なのにこの反応。

 「か、鍵!!着替えとかお風呂の時は閉めて。びっくりするから!!」

 これが年頃の娘を持つ父親の気持ちか。パンツ一枚で歩き回らないでよね!ってやつだ。

 「すみません、昨日の今日なのでまだ慣れなくて。」
 「あ、ええと違う。ごめん、混乱してた。ノックして確認しなかった俺も悪いんだ。これからお互い慣れてこう。」

 今のはダラダラと着替えもせず鏡を見ていた自分が悪いと思う。同室の人が居るという意識をしっかり持たなくては・・・。

 手早く服を着てコハクさんの居る部屋に戻り「どうぞ。」と言うと「ぁ、りがとう。」と脱衣場へ入って行った。
 パシャパシャと顔を洗う音がする。今のコハクさんはお面を取って居るのだろうか。気になる、見たい、だけど覗きはダメ。

 もだもだと自分の中の悪魔と戦っていると、ガチャっと音を立ててコハクさんが出てきた。

 チッ。一緒に住むわけだし、これからもチャンスはあるか・・・。私の中の悪魔はそう呟く。

 「コハクさん、昨日はありがとうございました。ずっと抱き付いてたみたいで、寝苦しかったでしょう?」
 「抱き付いてたの!?あれからずっと!?」


 まさかずっと抱き付いてたとは思わなかった様だった。余計な事言ってしまった。
 照れる様にお顔に付いたお面の頬を両手で押さえる彼。お面付けているのにこんなに感情が伝わって来るのは才能だと思う。


 「ヒスイってさ・・・女の子みたいに細いな、背も小柄だし。寝ぼけてたから一瞬、女の子が居ると勘違いして凄く驚いた。朝から騒いでごめん。」
 「男に向かってその言葉はただの悪口ですからね?」
 

 そんなワタワタとした出来事はあったけど、寮の設備はなかなかに過ごしやすく、お風呂は鍵が掛けられるし、ベッドにはカーテンが付いている。
 王家に伝わる変装チョーカーを取られなければ見た目は男だし、コハクさんにはバレてもまぁいいかと思っている。

 そんな環境に安堵して過ごした次の日、学園長に呼び出された。

 
 「何故、この手枷が壊れたのか。信じられない!!」


 私の壊した手枷は学園長自慢の品だったらしい。
 それが壊された今、研究と新開発に燃えているそう。私の出現させる石も研究に使っているらしい。
 学園長に付けさせられた手枷は外され、元々あった手足の壊れた枷だけになり少し軽くなった。

 「そうだ、本題だ。君の祖国の情報を話そう。女王失跡は女王の婚約者が見つけたという諜報員が怪しいという情報が流れて来ている。その他国の諜報員は王家の宝も盗み逃走中だと指名手配され、君と一致する特徴が文章で出回っています。背丈や逃走前に着ていた衣服の情報くらいですがね。」
 「!!」

 私は疑われているのだろうか。

 「君がその諜報員ではなく、本当に女王だというなら男装を解いて貰おうか。それで女王だと証明出来れば我が国の発展に貢献しながら学園生活を楽しみなさい。」

 ここで拒めば王家の宝を盗んだ諜報員として祖国に返されるのだろうか。だって盗まれたとされる【王家の印章】とチョーカーはここにあるのだから。従い証明するしかない。
 私は素直に首のチョーカーを取る。きっと元の姿に見えるはずだ。学園長は少し目を見開いた後に再び厳しい視線を私に向けてきた。

 「チョーカーだけでなく全てテーブルに置いて貰いますよ。」
 「・・・ここで裸になれと?」
 「勿論。変装の道具を隠し持っていて王女に成り済ましなんては困りますからね。あぁ、持ち物さえ私が預かったら信頼できる女性の部下に後は任せよう。」

 私がテーブルに置いたチョーカーを手に取りまじまじと見る学園長。
 目がキラッキラしている。次にポケットから【王家の印章】を出すと待ってました!と言わんばかりに奪う様に受けとると「私はこれらが本物か見てこよう!!後は頼みましたよ。」と言って女性部下に任せ、さっさと部屋を出て何処かへ行ってしまった。

 「・・・。」
 「本当に学園長も困ったものですね。女王様、無礼をお許しください。本人である証明の為にご協力をお願い致します。古い手足の枷も今だけ外させて頂きます。」
 「はい。」
 
 衣服を脱ぐと器用に枷も取られ、体の隅々まで確認される。
 
 「何も所持していない事を確認させて頂きました。次はこちらを。」

 渡されたのは白い大きな布だった。白い大きな一枚の布を体に巻き付けられると、まるで白いドレスを着ているみたいな仕上がりに。
 床に付くほど長く上質な手触りの布の隙間から足が見える。
 我ながらエロい。これは大人の色気出てきたかな?とつい体のラインを眺めてしまう。

 「ふふふ、可愛いらしいですね女王様。次に男性の者による検査を行います。女性の係りを用意できず申し訳ございません。」
 「無実を証明出来るのであれば男性でも構いません。」
 「ご協力感謝致します。では入りなさい。」

 所持品を没収され、裸で体を隅々まで確認された上に次は何があるのか。もう何も隠す事はない、相手が男でも全裸で見せてやろう。
 そう意気込んで布を持つ手を緩くする。ガラリと音を立てた入り口をチラリと見ると。

 「失礼致します。血液と病の検査を担当致します。コハクと申します。」

 すぐに布を持つ手を握りしめた。
 おう、早まって全裸で迎えなくて良かった!!
 相手は気が付かなくとも知り合いに全裸は精神的にキツイね!!

 現れたのは白地に子供が落書きした様なにっこり笑顔の模様が入ったお面を着け、深くフードを被ったコハクさんだった。
 だけど、学生服を着ていてそれだけで雰囲気が違って見える。

 咄嗟に平静を装い、女王の風格を絞り出す。
 まっすぐ彼を見ると少し立ち止まり怯んだ様にみえた。威圧に成功したようだ。

 「私は何をしたら良いのですか?」
 「少しの間、手をお貸しください。」

 胸元で緩く持った布を押さえながら逆の手を彼に差し出すと「失礼いたします。」と手を取る。

 コハクさんは血液の検査が出来るのか、どういう物だろう。純粋に興味がある。
 興味津々で彼の顔を見てると少し居ずらそうにするけど気にしない。興味があるから。

 「では始めます。」

 そう言うと体を風が吹き抜ける様な気持ちのいい感覚を感じた。
 自然と目を閉じれば暖かな日差しの草原に立っているみたいだ。

 「暖かい季節に吹く風のようで気持ちがいいですね。」
 「!!」

 ただ一言ポツリと言うと慌てた様子で手を離されてしまった。いつも通りのコハクさんの反応に思わず笑ってしまう。

 「ふふふっ」
 「失礼致しました。これで終わります。」
 「早いのですね。もっと体に触れたり見られる物かと思っていました。」

 その言葉を聞いて頭を左右にブンブンと振るコハクさん。その勢いでお面がどっかに飛んで行かないか期待した。

 「大丈夫です!!その様な事は致しません。ええと、お体にどこか不調は御座いませんか?」
 「長旅で疲れているくらいかしら。」
 「そうですよね、えと、ゆっくりお休みください。これで検査は終わります。失礼致しました。」

 検査結果はどうだったの?と思ったけれどさっさと部屋から出ていってしまう彼からは聞けずに終わった。私が積極的に絡みに行きすぎた、反省しよう。
 衣服を着ると、心なしか嬉しそうな学園長が部屋に入ってきた。
 聞くと血の情報から血筋や育った地域、病の記録など調べていたそうだ。


 色々な検査を行ったお陰で私は女王である事が証明された。
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