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ヒスイとして。
しおりを挟む奥様は私の意見に寄り添ってくれる。学園長は正直に言えば苦手な部類の人だけれど、学園長ほど心強い後ろ楯も無い。
最大限私の意見を尊重してくれるって所がデカイ。
「あら、ノリが良くて助かるわ。
良い意味で、目的の為になら誇りをも捨てる所が話に聞いていた通りの元女王様ね。
ヒスイ、8人目の私の子として一緒に王城へ参りましょう。受けた恩以上に大切にするわ。」
親子として決意を決めた所でコハクさんとメノウ、ガーネットに向き直る。
コハクさんの手を握り、目を見るとほんの少し離れるのが心細く感じる。
「王城へ行ってきます。」
「うん。危険は無いと思うけど気をつけて。もし、君に何かあれば鬼人の力を最大限使って取り返しに行くから。」
そう話すコハクさんの視線は私を見てから背後の学園長へ移った。彼からしたら学園長は恩はあっても信用は出来ない人となった様だ。
「怖い事を言いますね。そうならないように善処しましょう。」
「もう私の娘だもの、悪いようにはさせないわ。この人も他人には冷酷になれても懐に入ればとても大切にする人よ。保証するわ。」
コハクさんが頷き、私の顔を覗き込むと顎に手を添えて顔を上げられる。
ん?何だ?と思うと同時にチュッと可愛い音を立ててキスをされた。
「ぇっ!!」
「念のため誓いのキス。」
急にキザな事を言うんだな、と不思議に思い彼の目を見ると少し瞳の色が赤みがかっている気がする。鬼人の力がすぐに使えるように待機している様だ。
鬼の血が現れると妙に強引で困ってしまう。
それにしても、私が貴族の中から婚姻相手を探す選択肢があると疑っているのだろうか?それなら心外である。
「私を信じて待っていてください。」
「ヒスイの事は信じてるよ。君を見た人に俺のだって分かるようにしただけ。」
「ふふふっ。」
「あらあら、熱いわね。こんなに魔力が混ざりあっていれば仲良しの恋人がいるのは一目瞭然よ。婚約者候補が来ていたとしても圧倒される程だわ。じゃあ、そろそろ行来ましょう。」
「わかりました。」
私は意を決して先導する学園長の後ろに付いて行くと隣を奥様が歩いてくれる。
コハクさんから遠ざかるのを背に感じながら私は王城へむかった。
◆◆◆
「さぁ、今日からここが貴方のお家よ。」
王城へ行くと国王陛下と王妃が居る部屋に通され、家臣から事実確認をされた後。奥様・・・ではなくお母様主導で話が進み、周囲を上手く丸め込み養子縁組が認められた。
お母様の威圧感も学園長の威圧感も凄かった。王様と王妃様の威圧感も笑顔なのに凄かった。
威圧感と威圧感の戦い。
私もまだまだ学ぶ事が多い。
この時からアスティリーシャ・グレングールシアではなくヒスイと改名。
私は寮から学園長の所有する屋敷に移り住む事になり、ノリノリの奥様に連れられて屋敷の案内をされていた。
王城を出てからはコハクさん・ガーネット・メノウも一緒に行動をしている。
「ここがヒスイのお部屋で、隣が未来の旦那様のお部屋にしましょうね。急な事だったから準備が出来るまでは客間を使うといいわ。
ガーネットとメノウだったかしら?貴方達も夫婦になるのよね。近くの同室が良いかしら?それとも隣同士の別室かしら・・・」
私達の部屋もお母様の中では既に決まってきているらしい。
普段は神経の図太いガーネットとメノウも意見を聞かれると緊張しながら答え、共に案内を受ける。
「今日は疲れたでしょう?」と奥様の気遣いにより、夕食後は湯浴みを済ませるとすぐに客室へ通して貰えた。
◆◆◆
部屋に戻り、ベッドに寝かされた私はガーネットとメノウに見守られながらコハクさんの診察を受ける。
「うん、疲れはあるけど健康には異常無いみたい。」
「ア・・・じゃなかった。ヒスイ様大変でしたよね。うっかり魔石を作ってしまって2日寝込んで呪いと戦い、元婚約者が部屋に拐いに来るし、その後コハクさんにガンガン襲われて、起きたら王家の使いから逃げて、今度は学園長の娘になると。」
「刺激的な日々だったねぇ。」
「・・・本当にごめん。」
確かに言われて見ると次々と問題が起こっては解決した忙しい日々だった。
疲れから眠くて目を瞑ると何も考えられなくなってくる。
「明日は文化祭の最終日だから体調が良ければ見て回ろう。ゆっくりお休み、ヒスイ。」
「お休みなさい。ヒスイ様。」
「ヒスイ様、おやすみぃ。」
「・・・お休みなさい。」
側に大好きなコハクさんが居て、いつもの気にかけてくれるガーネットがいて。とても強いメノウに守られて。
皆が居て眠れる今が幸せだと改めて思う。
明日の文化祭を楽しみに疲れもあってすぐ眠る事がてきた。
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