【完結】死に戻り王女は男装したまま亡命中、同室男子にうっかり恋をした。※R18

かたたな

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魔石は作れません。(作れる。)

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 その後、私は祖国に影武者を残しているので身内だけで極秘の結婚式をした。

 身内だけとは言え、貴族の屋敷で行うパーティーはとても豪華。
 両親の代役をガーネットとメノウにお願いしたらガーネットが大号泣で大変だった。メノウも影で泣いてたのは知っている。

 「次は貴方達の結婚式ですからね?私が素敵なパーティーを用意します。」と言って号泣するガーネットにブーケを渡せばもう滝の涙が溢れていた。メノウが「干からびちゃぅ。」と飲み物を持って飲ませる姿が微笑ましい。

 メノウとガーネットの結婚式は祖国にある2人の故郷で行われた。

 二人の故郷は隣同士にある小さな村。

 初めて二人の両親や親戚に会い、働きに感謝を伝え、私の受け継いだ資産から盛大にお祝いする。

 二人の両親に結婚式の準備をすると伝えた時の反応は揃って「あ、アイツが結婚!?出来たんですか!?」という物だったらしい。
 両親からはどう見えているのか気になる。

 誰が相手かも知らないのにお祝いムードだったそうだ。

 そんな訳で二人の故郷ではお祭り騒ぎになった。

 誰が知っている人かとかも関係なく、夜まで騒いだのだった。

 準備が上手く行ったのも影ちゃんと叔父の協力があったから。お礼と共にゆっくりと話す機会を作れた。

 この時、影ちゃんを任せる時くらいしか話をしたことが無かった叔父からは謝られた。

 「自分が無関心だったばかりに幼い君に色々と押し付けてしまった。まさかこんな事になっていたなんて、と全てが終わってから気がついた。」と。


 いや、ホントだよ。反省してほしい。


 これからは影ちゃんと共に議会の動向を見ながら国を支えると言っていた。

 私そっくりの影ちゃんは今もアスティリーシャ・グレングールシアの影武者業務をしていて、むしろこっちが本物という扱いになっている。トロルゴアに激似の人がいるって言う噂はあるらしい。

 引き続き業務は博物館館長の補佐でフォローは叔父任せ。

 そして思い入れのある物以外は代々受け継がれる資産も影ちゃんに託した。
 彼女は震えていたけれど、女王では無いにしても立場を押し付けたのだから受け取ってほしいと話した。
 そうしたら早速博物館にそれらが並び「更に賑やかになりました!」と言う。

 「売っていいんだよ?」

 と話すと。

 「いざ!となったら売ると思います。だけど今は博物館が賑わうのが嬉しいんです。」

 と、すっかり博物館の仕事が好きになっている様子だった。

 この時、亡き両親の墓前にも行き、色々と報告も出来た。

 「お父様、お母様。ごめんなさい。」

 胸に手を当てて目をつむった時、つい出てしまった言葉。だけどそんな私に叔父が柔らかい口調で声をかけてくれた。

 「謝る必要は無い、親が子に願うのは子の幸せだ。アスティリーシャは今幸せならそれでいい。」

 叔父は珍しく叔父らしい事を言う。
 城を勝手に壊したり国を叔父や影ちゃんに丸投げしたのに二人は私を責める事は無い。

 そんな二人は意外にも博物館業務で仲が深まり恋仲になったそう。内密に結婚もするとか。子を授かっても王族の引き継ぐ強大な魔力は叔父経由で受け継げる為バレないだろう。

 祖国の法的には表面上、叔父との結婚は認められないけれど事情を知る周囲のサポートに期待。きっと表に出る時には代役を置くだろう。

 これで祖国を守る王族の子孫がが居なくなる事も無い、平和だ。


◆◆◆



 結婚式から暫く時が経ち、魔石の聖女の噂は変化を見せる。


 お母様が、魔石を生成出来ると言う話は偽の情報だと広めたから。

 噂は「アスティリーシャが亡き国王陛下から受け継いだ遺産の中に不思議な魔石がいくつかあり、それを学園長が脅して取り上げ妻の病を治した。両親の形見を失ったアスティリーシャは悲しみに倒れ2日寝込んだ。その恩と償いで家族一同で不自由無い生活を保証しようと今の形になった。」と広まっている。

 私、可哀想。

 「貴方を脅して魔石を作らせたら呪いが発動して2日寝込む。という夫の罪を隠す事になってしまって申し訳ないけれど、魔石を作れるなんて隠した方がいいと思って。」

 どっちも酷い話だ。

 そんな噂を周囲は信じるのだろうか?と思っていたのに、魔石を生成出来る聖女より格段に信憑性があると広まっているそうだ。
 
 学園長の人柄よ。

 だけど私は何かに怯える事もなく警備の行き届いた屋敷で平和な悠々自適の生活を手にいれている。

 御母様は大切にしてくれているし優しい兄妹もできた。祖国では感じられなかった温かい空間で、私を大切にしてくれる人々に囲まれての生活は少しムズムズと照れるのだけど幸せだ。

 あれから影で魔石も作っている。

 崇高な意思では決して無い。救える命が有るのに見過ごすのは寝覚めが悪いから。

 治癒師の兄の協力で、魔石を水に沈め微量の魔力が溶け出した水を病で苦しむ人々へ飲ませるという手法を取っている。これだと即完治!とは行かないけれど多くの人へ分配でき、状態を大幅に改善する事ができる。
 症状を大幅に改善させると治癒師の兄は「後は俺達の仕事だ。いつか魔石に頼らず完治できるようにするからな。」と言って頭を撫でてくれる。頭を撫でられる様な年齢では無いのだけど嬉しいからいい。
 言葉通り、兄は私に極力魔石を作らせない様にと配慮と研究を重ねてくれている。

 魔石作りはあれから何度か挑戦したけど女神の癒しモドキ一粒作る度に1日は寝込んでしまう。
 今では作る前に寝込んでいる間、読み聞かせてほしい小説を脇に置いてから作っている。

 しかし、寝込む度にコハクさんは仕事を休み死にそうな顔で付き添いをするのであまり進んで魔石作りはしたくない。

 起きると必ず「俺が病を未然に防げるように頑張るから!」とトロルゴアの環境から病を探る仕事に出かける。

 クタクタなのにしっかり家に帰ってきては私との時間を作ってくれる所が嬉しいけれど心配だった。
 それを知った兄と姉がそれぞれ違う分野で活躍する人達なのに分野内で担える事を提案して手助けをしてくれる様になった。結果として、今は定時で帰れている。

 兄と姉に理由を聞けば、恩とか抜きにしてただ心配になった。と後で話していた。
 コハクさんはやはり周りが助けたくなる愛される性格をしている。
 特に騎士団長のお兄様、魔術師の双子のお姉様はコハクさんを気に入っている。
 鬼の力にも興味津々で積極的に絡みに行っては「呪印を見せて!」と頼み込んでいる。

 見終えた後の恐怖に打ち勝った感が好きらしい。そんな事を何度も繰り返したものだから騎士のお兄様と魔術師の双子のお姉様は呪印が平気になった。

 あれって慣れるのか!?という驚き。

 コハクさんの妹と教師志望の兄はまだ純粋な接触のみの交流が続いているそうだけど、コハクさんの妹は今、とにかくモテるらしい。モテ期到来により今後も関係が続くかは分からない。
 次男、三男は平和に学校に通って兄のコハクさんの様になる!と勉強に励んでいるそうだ。
 次男には恋人も出来たらしい。次男カップルは初々しくて見てると癒される。
 
 三男はまだおっぱい好きらしい。 

 こんな感じで人間関係も良好。


 そういえば、以前街中でコハクさんの友人、ベリルさんとラピスさんを見かけた事がある。
 だけどラピスさんの様子は以前の強さは感じず、ベリルさんが少しでも側を離れると不安で堪らないという様に今にも泣きそうな程に瞳を潤ませる。
 一緒にいる姿はとにかく嬉しそうに微笑み幸せそうだし・・・良かった・・・のかな?

 少し気になり、コハクさんに二人の事を聞いてみると困った顔で話してくれた。

 前世の言葉を借りて言うなら、ベリルさんをあるじとするSMプレイにドップリらしい。
 前にコハクさんから借りパクしたハンカチを使い、番の香りを嗅がせて反応したら『お仕置き。』プレイを繰り返していたら番の香りにも反応しなくなり主一筋になったそう。

 「もうラピスは俺の香りにしか反応しないから大丈夫、安心して良いよ。」

 と言って言われたそうだけど・・・。
 あ、安心・・・安心だけど。凄い事になっている。

 夜のプレイ以外は一般的に大切にされているそうだから二人が良いのなら良いのかも知れない。

 しかし、あんな爽やかに微笑むベリルさんがそういう趣味をお持ちの方だったのかと驚きしかない。




 そして私達。


 私が王立学園を卒業した後、コハクさんとの間に男女の双子を授かり出産。
 かなり濃厚な夜をコハクさんと過ごしていたけれど、私の一族は子供が出来にくい。私も元は兄妹がいないし、父も叔父とだいぶ年が離れてやっと二人兄弟という状態だったそうだ。

 受け継ぐ魔力の大きさに耐えられるかどうかが大きいのかも知れない。

 ガーネットとメノウも同時期に男の子を授かり、いつだったか話してくれた二人の未来予想図通りに事が進んでいる。

 私達の娘であるアンバーと息子のジェードは二人とも頭に可愛い角と手の甲に呪印を持って生まれた。
 
 私は大喜びしたものの、コハクさんは俺のせいで申し訳ないと我が子可愛さの大喜びと我が子への申し訳なさで浮き沈みが激しい。
 鬼人と他種族の子供なら鬼人の特徴を引き継ぐ可能性が低いと聞いていたのに・・・と呟いていた。
 
 もしかすると、私の先祖にも鬼人が居るのかもしれない。

 だけど、呪印は手の甲なので私特製手袋を作ったら見た目の問題も無く生活が出来ているし、とても可愛がってくれる。

 そんなある時、一歳のアンバーとジェードが手を繋いで寝ている可愛らしい姿があった。
 二人のお手々を微笑ましく見ていると手の中に何かがチラリと光る。

 「おもちゃでも取り合ってたのかな?」

 そう言ったコハクさんに、なんて可愛い我が子!と思い、何のおもちゃを取り合ったのか確認のために二人の手を丁寧に開かせると【王家の印章】がそこにあった。
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