勇者と小さな魔王の旅

木元うずき

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魔王と魔王の父

旅の記録23 違う、何かが

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日向の暴走(?)のせいでただいま会場は氷を溶かすのに大忙し。そして、今回の事件を引き起こした日向は今・・・
「いい加減機嫌を直したらどうだ?」
絶賛不貞腐れ中!
日向をなだめている最中の彼の元に救世主が扉から現れた。
「はぁ・・・どうしたんじゃ日向よ。いつもと少し違ったが」
心配そうに入ってきた魔王フィーだが、日向はそんなの関係なしに無視を続けると思ったが急に立ち上がった
「どうしてなの!どうして退場リタイアなの!」
今まで見た事のない日向の顔にその場の全員が少し驚いたが魔王はすぐ反論をした。
「言ったじゃろ。死人が出ると」
「何でよ!寒くないでしょ!涼しいぐらいだったじゃん!」
魔王は何か考えるように手を顎の上に置いていたが何かをわかったらしいのか話が急に変わった。
「日向よ。お主二つの顔を持っておるじゃろ」
「そうだけど?」
隠す様子もなくいや、何を今更?って感じに冷たく答えた。
「話してなかった?私の過去を話した時に」
「何をだ?それによっては聞いてないところがあるかもしれないからな」
「いつもの私の口調は昔から使っていない事を」
衝撃的なカミングアウトにその場に沈黙が流れた。
日向は面倒くさそうに口を開くと語りだした。
「仕方がないね。もうちさ一度話すからしっかり聞くのよ」
日向は脚を組み魔王と彼を冷たい目線で睨みつけた。
「前回の復習の踏まえながら話すから少し早くなるから注意を。
さて、前回私は氷炎の日向はこの本にあるって言ったでしょ?なら、不思議に思ってほしいの。あの氷魔法の時本を開けていなかったことに。
あぁもう。その様子じゃ気づいていないのね。なら、もう少し話すから忘れるんじゃないから!
私の家族は4人家族なの。そして、いつもの『~なのだ』は妹の口調。私は今の感じ。じゃ、何故妹の口調を使っているのかって?簡単よ、今の私じゃだめだからね。姉妹にしては珍しく全く反対の性格で私は周りの話すのが苦手だけどひなはその反対。あ、雛は私の妹ね。
でも、あの事件で死んでしまったから私がその口調で皆と話せるようにしてた。だから、炎使う時は妹の性格をミラーしている。本性って言い方は少し違うかもしれないけど・・・ま、これが本性って感じかな?雛は私の反対の魔法、炎。昔の二つ名は『氷の女王日向』そして、『太陽の女神雛』。それを私が受け継いで今の『氷炎の日向』が出来た。

「以上よ。だから私は二つの顔を持っている」
全てを話し終えた日向は椅子から立ち上がり扉の方へ歩き出した。
「どこへ行くのじゃ」
「どこでもいいでしょ」
魔王の質問に対して素っ気ない返事をし扉に手をかけ、扉を開けると目の前に魔王の父がいた
「フィーよ。少し良いか?」
「何?戦いは終わってもうすぐしたら撤収するつもりよ。後お父様の下に着く気もないから」
いつもの口調と全然違う魔王フィーに驚いた彼に対して日向は知らんぷりをしてその場から出ていこうとしたが魔王の言葉で歩みを止めた。
「もう一度戦わないか?流石にあんなんじゃ皆の衆も納得いかんじゃろうからの」
「何が目的?そんな不利な条件を出して」
フィーは魔王の出てきた提案を不審に思いながら目的を聞いてから返事を決める気だった。
「なーに、少し儂も楽しめんかったからの。次はタイマンでやらないか?との提案だ。どうじゃ、フィー達が勝てば出ていかんで済むぞ?」
「選手はこっちが決めるの?」
「いや、儂が指定さしてもらう。それぐらいはよかろ?一度負けておるんじゃから」
それを言われるとフィーは何も言い返せず魔王の提案を飲み込むことにした。
「流石に我が娘。よき判断じゃ。で、そちらから出るのはお主じゃ。『氷の女王日向』」
「私?しかも『氷炎の日向』じゃなくていいの?」
「あぁ」
「そ、えらい強い人がお好みのようで。負けても知らないよ」
日向はそう言い残すとどこかへ歩き出した。
「では、戦いの時になったらまた呼びにくる」
日向が開けっ放しだった扉から出てその後閉めて行った。
「あの状態の日向より魔王が行儀が良いのはどう言う事なんだ?」
彼は素朴な疑問を抱きながらも取り敢えず日向を探すために出ていこうとしたが魔王フィーに止められた。
「日向を探そうとするならやめとくんじゃな。お主が行っても何も変わらぬ」
彼はそう言われると黙って日向の帰りを待つしかないのかと思ったが確かに自分が言っても何も出来ず最悪刺激してしまう恐れもあるからここは魔王の指示に従うことにした。

その頃日向はウォーミングアップのために訓練場を訪れたのかと思ったが何かが違った。
その訓練場は凍っている場所もあれば焼き焦げた場所もありとても悲惨な状態になっていた。
「どうしたのだ?日向お姉ちゃん。そんなに荒れちゃって」
「雛?」
声がした方に振り向いたが誰もいず日向は遂に自分が壊れたのかと思ったが次の声で違うのがわかった。
「もぉー、妹を忘れるってどうしたのだ!酷いのだ!」
「え・・・ひ、雛?」
入口の扉に背を預けた状態の雛を見て思わず涙が溢れ出す。感動の姉妹の再開かと思いきや・・・
「日向お姉ちゃん演技上手になったのだね。私を殺そうとしたのにだ」
「何のこと?」
雛の目は姉を尊敬する目ではなく敵を見る目だった。そして、日向には身に覚えもないことを言われ戸惑っていた。
「演技はいいのだ。うざいのだ」
「ちょっ!何言っているの!?私、雛を殺そうとした事・・・」
日向の言葉を遮るように、姉との縁を見るかのように大声で言った。
「あるのだ。あの火事事件犯人はなのでしょ?だって、あの時いなかったの日向お姉ちゃんだけなのだ」
雛の言い分はわかる。あの時いなかったのは日向だけだから。でも、日向はあの時親の亡骸は発見されたが雛の亡骸だけはされていない。救助してくれた人々、近所の方にも数日間一緒に探して貰ったが見つからず焼け溶けたのだと言う結論で終わった。本当はそれに納得出来るはずもなく雛への未練、そして他人と会話をしたい、からあの日向が出来上がった。
「雛!誤解だって!私はあの時・・・!」
「もういいのだ。だって・・・からなのだ」
雛の手には杖がありいつでも攻撃出来る。左手は腰の後ろに回しており短剣を握っていると思われた。
雛の戦い方は魔法使いらしくはなかった。魔法で動きを封じ短剣で刺す。それが主な戦い方だが、魔法での攻撃も日向には劣るものの常人よりかは強かった。
「ねぇ、次あった時~、もう一度やるのだ」
日向はその返事はせずその場から立ち去った。後ろから雛の声が聞こえてくるが振り向きもせず急ぎ足で歩いていった。
「あは、魔王様の言う通りなのだ。日向お姉ちゃん同様してるのだ。これで魔王様の夢が叶えれるのだ。その後でじっくりと可愛がって上げるのだ、日向お姉ちゃん」
雛不敵な笑みで杖を背中に付け来た道を戻っていた。
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