勇者と小さな魔王の旅

木元うずき

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始まりの書

旅の記録1 王都

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「で、お主。今からどこに行くのじゃ?」
彼女は彼の腕にぶら下がりながら聞いた。彼女は自身の体重を自在に操る事が出来るから彼に負担は無かった。
「王都だ。魔王討伐の資金を貰いにな」
「その金で観光するのじゃな。お主もなかなか悪じゃの」
彼女は彼の腕をよじ登り顔を指で突っついた。
「魔王に言われちゃお終いだな」
彼はそう言った瞬間、左に転けた。彼女は彼の下敷きになりながらも笑顔だった。彼はその笑顔を見ると自分がやらかした事を全て分かった。
「え・・・えっと~・・・魔王さん?」
彼は恐る恐る彼女の方を向きながら呼びかけると彼女は満面の笑みで答えた。
「なんじゃ?勇者殿」
「お・・・重いです・・・」
「な・ん・て︎♡︎」
じわじわと重くなる彼女を見た彼はその重みは彼女の怒りを表していると思った。
「えっと・・・腕を・・・離してくれるかな?」
「なぜじゃ?儂は何もしてないよな?」
彼女は周りから見ると可愛らしい笑顔だが、彼から見ると恐怖でしかなかった。
「向こう付いたら何でも食べていいから許してくれないか?」
「乗った!わすれるなよ?忘れたら~どうなるかの」
彼女は古めかしい笑い方をしながら体重を軽くした。そして彼女は彼の腕から肩までよじ登り彼の頭に手を置き、その上に顎を置いた。
鼻歌混じりの彼女を見てホッとした彼は歩くスピードを上げて王都に向かった。

そして、彼たちは王都の前の門に立っていた。彼女は彼の頭の上でスヤスヤと眠っておりたまに発する寝言がとても可愛かった。彼はそんな彼女に癒されながら門を潜ろうとしたら・・・
「そこの者達よ。少しばかり待たんか」
門の前に立っていた兵士たちが槍で彼らを通さないようにした。彼らは諦めてすぐ立ち止まって話を聞くことにした。
「お前の頭の上に乗っかっているお嬢ちゃんからただならぬ気配を感じるから少しばかり話を聞いても良いか?」
「あ、はい。少し待ってください。彼女を起こすので」
彼は彼女を降ろしてからユサユサと揺らした。
「む・・・もう着いたのか?」
彼女は寝ぼけた目を擦りながら起き上がった。彼はひと通り説明を終える頃には彼女は目を覚ましており兵士の人達に身元を話すことにした。
「私は魔王といいます。将来、あの輝かしい舞台の上で歌ったり踊ったりしたいのです!そして、ここに向かう道中、彼と出会い、彼が冒険をするって言ってましたので私の踊りのレパートリーを増やすため彼に付いて行く事にしたのです。あ、出身村はウェイパ村です」
彼女は偽の将来の夢を語っている時、そうかと思わせるぐらいの感情で身振りでぶりを付けていた。兵士たちはそれに納得して次に彼の身元を聞くことになった
「僕は国王から魔王討伐を頼まれたのできました。そして、魔王はその仲間ってことになります。あ、これが証明書です」
彼は袋から取り出したのは国王が直筆で書いてハンコも押してある紙を出した。兵士たちはそれを見ると目を見開いてそそくさと道を開けてくれた
「魔王討伐頑張ってください!」
兵士たちはそれを言うとまた門の前に立って外を見ていた。
王都に入った彼らはとりあえず食事を取ることにした。
「お主?分かっておるな?」
「ちょっと、資金貰うまで待ってくれよ!」
彼女は少し頬を膨らましながらも納得した。そして、近くにあったお店で昼食を取ることにした。彼が頼んだのは野菜のシチュー。彼女はご飯大盛りとハンバーグ200gを頼んでいた。
「お前見た目の割には食うんだな・・・」
次々とハンバーグやご飯を幸せそうに口に運んでいる彼女はキョトンとした顔をしていた。
「お主こそ男の割には食べる量少なくないか?」
彼女は持っていたフォークで彼のことを指した。彼はシチューを口に運びながら彼女の食べている量を見た。最初は丼鉢に山盛り入っていたご飯がたったの数分で半分以下になっていた。その速さに周りの人達も足を止めて見ているぐらいだった。
「なんじゃ?珍しいものを見ているみたいな顔は?」
彼女は不思議そうに彼の顔を見た。しかし、手を止めることはなく次々と口の中にご飯を運んでいっていた。
(魔王の胃はブラックホールなのか?)
そんな事を思っているのも知らず彼女は幸せそうに食べていた。
そして、10分後・・・
「はぁ~美味しかった」
彼女は妊娠したようなお腹を軽く叩いた。あれからご飯大盛りとシーザーサラダを追加で頼んでいた。食べ終わった瞬間の顔を見た人達はその顔に癒され、そのお礼に彼女の食べた分の代金を支払ってくれた。彼女は支払いを済ました彼を見た瞬間彼に飛びつき頭までよじ登りここにくる途中と同じ格好になった。彼はそれに抵抗する気もなくよじ登ったのを確認すると城に向けて歩き出した。
「なぁ魔王。もし、僕がお前を倒すって言っていたらどうなっていたんだ?」
彼は歩きながらあった頃の事を思い出していた。そこまで時間は経っていないが道中色々な事がありすぎて彼にとっては懐かしく思うところもあった。
「ふむ。それならあの場で殺しておったの。それでも無理なら土下座、もしくは奴隷にでもなっておったかの」
その言葉に彼は深く後悔をした。
(ど、奴隷だと!?この可愛い子が僕の物になったのか!?)
彼は肩を落としながら歩いているに気づいた彼女は少し頭から降りて彼の頬の横に行った。そして、彼女はそっと口を近づける時、彼の心臓ははち切れそうになっていた。
(疲れを癒す天使のキス!?ちょっ!まって!心の準備がー!)
と、あたふたしている彼の頬を彼女は伸ばした。
「おー!これほど伸びるとは!」
彼女はケラケラ笑いながら彼の頬を伸ばしたりねじったりして遊んでいた。彼はそんな彼女の顔を見てさっきの期待を裏切られたことを許して城の中へ入っていったのだった。
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