勇者と小さな魔王の旅

木元うずき

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コミケ町

旅の記録13 日向の失態

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突如の申し込みに戸惑いを隠せない彼に対して魔王と日向は平然としていた。
「連れて行ってもいいのだ」
「そうですね。目的地が同じなら別に良いと思いますよ?」
人前になった途端魔王はいつもの設定を思い出しそれを演じていた。だが、始めて見る日向は何が起きたのが分からず魔王の口調のせいで目を泳がしていた。それに気づいた魔王は日向に向けてとびっきりの笑顔を向けると・・・
「どうしたのだ!?頭がおかしくなったのだ!?」
結果心配されてしまった。空気も読めないと分かるとこれからが心配になっていまう彼らに対して日向は魔王の肩を強く揺さぶった。そんな光景を見ているあの商人はどうなるのか・・・
「あの・・・?私の提案は・・・どうなったのです?」
「あぁ、それの事だけどいいぞ。コミケ町までの護衛、引き受ける」
その言葉を聞いた瞬間、彼女の顔は明るくなりさっきまでの事を忘れてしまっていた。
「では、よろしくお願いします!あ、自己紹介忘れていましたね。私は旅をする商人。レアな物から日常用品まで扱っている万屋旅商人。ひと呼んで旅商人シルヴィは私の事よ!」
1、人が望みそうな商品は必ず手に入れる
1、最初の事が出来なかった場合は手に入れ次第その人に無料提供する
1、一つの町、村には最大3日までの滞在。それ以上は禁ずる
1、笑顔を忘れず全てを守る
っと自分の店のポリシーを教えてくれたシルヴィは魔王と彼にとってはありがたいことと思っていたが日向は顔の表情が一つも動かなくなってしまった。
「どうしたんだ、日向?」
「あ、貴方が万屋シルヴィ?本物?」
「はい。私を知っているって事は身近な人が利用してくれているのですかね?」
日向は表情が固まったまま言葉を発している理由が彼らには分からなかった。
「知らないのだ!?あの有名なシルヴィ様を!」
「「シルヴィ様?」」
「様何て照れくさいからやめてくださいよ。私は普通の事をしているだけです」
シルヴィは照れくさそうに頬を掻いているがとても嬉しそうな顔をしていた。
そして、まだ自己紹介をしていないと思い出した勇者一同は一旦全ての思考を打ち切った。
「えっと・・・まずは僕からこの旅の仲間のリーダーみたいのをしている勇者といいます」
「そして、私はウェイパ村出身の踊り子。将来は大国で皆を魅力するのが夢です!」
「そして、私は旅をしている人なら誰もが知る氷炎の日向です。前回はお世話になりました」
やっぱりシルヴィも日向の事を知ると目を輝かしていた。でも、それよりも気になることがあったらしく少し考えていたが何も答えが導き出せなかったらしい
「私が・・・何かしました?そんな有名人と会えば流石の私でも覚えていいると思うのですが・・・」
少しおどおどとしながらの質問に日向は少しおかしくなったのか肩を震わしていた。
「そんなに畏まらなくてもいいよ。う~ん・・・あ!なら、こっちなら分かるのではないですかね」
状況が飲み込めない二人はただ呆然と眺めているだけだが、分かっていることは超が付くほどの有名人が自分たちの目の前にいることだけだった。
「いや・・・魔王ちゃんもある意味有名人なのだ・・・」
「え?何のことですか?私はまだまだひよっ子の身ですが?」
日向は魔王が人前では違う人格になるのを忘れていたらしくつい言ってしまったが魔王の目の威圧に思い出した。そして、シルヴィの方はっと言うと
「もしかして・・・あの時森で倒れていた赤髪の人なのですか?」
「正解なのだ!やっと思い出してくれたのだ」
日向は嬉しそうにシルヴィに抱きつこうとしたがそれを阻止するために出されていた魔王の足に引っかかって顔からコケてしまった。
「で、日向どういう事だ?」
「いてて・・・確かあの時はまだ勇者さんと会う数年前の話なのだ」
地面には砂利が多かったせいなのか顔にはいっぱい砂利が付いており少し擦り傷も見えた。
「私が森で知らない草を食べてお腹がゲリラ豪雨になっていた時なのだけど・・・」
「日向・・・表現が分かりにくいぞ。魔王が不思議そうな顔をしてしまっているがな・・・」
「ならピーピーの方がいいのだ?」
その言葉を聞いた瞬間魔王は閃いたように言葉を発した。
「お腹を崩していたのね!やっとわかった!」
「で、その時たまたまシルヴィ様と出会ったのだ」
「ですね。その時日向さんは毒草を食べてしまっていたので毒消しそうを上げたのです。流石にお金を取るのは悪いのでね」
日向は頬を掻きながら照れくさそうに笑った。これで話が終わったのかと思って行く準備をしようとした彼はこの後の展開で顎が外れることになるのは誰も知らなかった
「だってあのまま1週間放置していると死んでいましたのも」
「ふ~ん。そんな強い毒だったのか」
「いえ、餓死です」
「はい?」
日向は慌てて訂正を入れようとしたがその前にシルヴィが何故餓死をしそうになったのか教えてくれた。この時まだ、彼は顎はまだ外れていなかった
「毒消しそうを上げた後彼女の荷物を見ると空っぽでしたので・・・。まぁ、それが理由でお金を取らなかったのですがね」
ガコっと痛々しい音が聞こえた瞬間日向はこの世の終わりのような顔をしていた。まぁ、それもそうだろう。氷炎の日向が餓死で死ぬとなると飛んだ黒歴史もいいところだろう。
沈黙が少しの間流れていたが痺れを切らしたのか魔王が彼の顎にアッパーを決めるともう一度痛々しい音が聞こえた。
「そろそろ行きませんか?」
少し退屈そうな顔をしながら話す魔王と未だに心が折れている日向。顎を摩っている彼と荷物の整理をしているシルヴィ。この四人がコミケ町につくのは一体いつになるのやら・・・
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