ダブル・ミッション 【女は秘密の香りで獣になる2

深冬 芽以

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Mission 7*秘密

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「俺たち、幼馴染なんです」

 私が対応に困っていると、圭が話し始めた。

「就職してからは会ってなかったんですけど。SIINAで再会したんです」

「へぇ、全然気づかなかった。で? 二人で仲良く探偵ごっこ? それとも、スパイごっこかしら?」

 三浦さんが頬杖をつく。

 わざと私たちへの印象を悪くしようとしているように見える。



 私たちが信頼に値するか見極めている……?



「SIINAを……守りたいんです」と、私は言った。

「どうして?」

「社長の椎名蓮は、私の実の兄です」

 私の告白に、三浦さんは顔を上げた。圭も驚いている。

「え?」

「両親の離婚で一緒に暮らしたことはないんですけど……」

 私は三浦さんが好きだ。考えをハッキリと言葉にするところも、面倒見が良くて誰にでも優しいところも。だから、全ては話せなくても、信頼を示したい。

「だから、私がSIINAを陥れることはありません」

「社長は知ってるの? このこと」

「データが改ざんされていることは報告しましたけど、竹井さんのことは知りません」

「そう……」

 ドアがノックされて、店員がビールとエイヒレをテーブルに置き、空のジョッキを持って行った。

 私たちは冷えたビールで口を潤した。

「今週、芹沢くんが社長の手伝いで通常業務から外れていたのは、この件を調べるため?」と、三浦さんが圭を見て聞いた。

「はい」

「どう思う?」

「正直言って、データ改ざんの目的がわかりません。すべてのデータが水増しされているのなら横領と言えますが、そうとも限りませんし。ただ、闇雲に改ざんしているようでもない。それに、メディア部のデータには改ざんが見られないことも不思議です」

「うん。私も同感よ。一見、単なる入力ミスなのよね。けど、竹井くんを脅迫してまで改ざんさせたのだから、何か明確な目的があったはずなのよ」

 私は二人の会話を聞きながら、考えていた。



 犯人の明確な目的……。



「竹井さんは、自分が改ざんしたデータを三浦さんが修復していることを知っていたんですか?」

「気づいていたと思う。けど、それについて話したことはないわ。竹井くんは恋人に抗えなかったけれど、ただ言いなりになっていたわけでもないようなの。何か……証拠になるものを持っていると思う」



 証拠……?



「竹井さんの恋人について、何か聞いていませんか? 名前とか仕事とか」

「残念ながら」と、三浦さんが苦笑いをする。

「あ! でも、一度だけその恋人らしい男を見たことがあるの。飲んでたし、後姿だったからうろ覚えなんだけど、一緒にいた若い子たちから『専務』って呼ばれていたと思う」

「専務?」と、私と圭が声を揃えて聞いた。

「そう。竹井くんがその男を見て、すごく驚いた顔で固まっちゃって、『あの人が恋人?』って聞いたんだけど答えてくれなかったの。違うなら違うって言うじゃない? だから、多分そうだと思う」



 専務……。



「竹井くんの様子だと、恋人がどこかの会社の専務なのも知らなかったんじゃないかな。もしくは嘘をつかれていたか。その二、三日後に、彼が女性とホテルに入るところを見たらしいから、疑って尾行みたいなことをしたのかもしれないわね」

「なるほど……」

「芹沢くんも気を付けてね」

 三浦さんがエイヒレを咥えて言った。

「へ?」

「伊織ちゃん、怒らせると怖そうだから。間違っても浮気なんてしちゃダメよ」

「しませんよ。やっと手に入れたんですから」

 テーブルの下で、圭が私の手を握る。ビールを十杯飲むより、身体が火照る。
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