ダブル・ミッション 【女は秘密の香りで獣になる2

深冬 芽以

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Mission 10*主導権

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 咲さんが言ったように、私の腹の中は真っ黒だった。

 私と圭の関係を知っていながら黙っていた咲さんと蒼さんに腹が立っていたし、圭の番号を乗っ取って嫌がらせしてきた人間にも怒っていた。

 恐らく、悟之さんだろう。



『この女が悟之さんの恋人だろう』

 昨日、大吾に写真を見せられた。

『この人……』

 見覚えのある女性だった。



 この人が悟之さんの恋人……。



『SIINAへのクラッキング犯は悟之さんで間違いなさそうだな』

『そうね……』

『どうする?』

『そうね――』



「さて、そろそろ本題に入りましょうか?」

「ちょっと待ってください。まだ、肝心なことが聞けてないんですけど」

 圭が咲さんの言葉を遮って言った。

「伊織がSIINAに潜入した目的は何ですか?」

「ああ。言ってなかったっけ?」

「その話の前に――」と、更に蒼さんが遮る。

「腹減ったからルームサービス頼まない?」

「そう言えば、そうね」

 立ち上がろうとする咲さんの肩に触れ、蒼さんが立ち上がった。

「咲は話し続けて?」



 優しい男性ひとだなぁ。

 圭も優しいけど、また違うんだよなぁ。



 無意識に蒼さんを目で追っていると、圭に足を踏まれた。ハッとして圭を見ると、明らかに不機嫌な表情をしていた。

「話を続けましょうか」と言って、咲さんがクスッと笑う。

「伊織の任務は情報売買に関する調査よ――」

 咲さんは蓮兄から相談を受けたところから話し、圭は黙って聞いていた。

 私は四人分のコーヒーを淹れ直した。

「以前は侑の部下だったんだって?」

 コーヒーを運ぶのを、蒼さんが手伝ってくれた。

「はい」

「優秀だとは聞いていたけど、予想以上だよ」

「ありがとうございます」

 視線を感じて振り返ると、またも圭が険しい目つきで私たちを見ていた。

「芹沢の奴、君にベタ惚れだ」と言って、蒼さんが私の耳元に顔を近づけた。

 耳に息がかかり、背筋がぞわぞわする。

 圭が下唇を噛むのが見えた。

「職場のみんなに見せてやりたいよ。あの顔」



 この人……、わざとだ――!



「蒼……ふざけ過ぎよ」

 咲さんが冷ややかな目で見ていた。

「咲も妬いてくれんの?」

「いいの? 妬いて」

 蒼さんが両手を上げ、パッと私から一歩遠のいた。

「冗談だよ」と言い、振り返って最後のカップにコーヒーを注ぐ。

「咲のことにしても芹沢のことにしても、何かあったら相談して?」

 蒼さんが袖口から名刺を出した。プライベートな番号が書き加えられている。

「ありがとうございます」

 私は圭と咲さんに気づかれないように、ジャケットのポケットに受け取った名刺を忍ばせた。
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