ダブル・ミッション 【女は秘密の香りで獣になる2

深冬 芽以

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Mission 10*主導権

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 お風呂に入って、朝食を食べ、ホテルを出たのは昼少し前。

 圭は着替えに家に帰り、私は食材を買ってから家に帰った。今日は圭のリクエストでハンバーグ。

 家に着くと、スマホが震えた。メッセージを開く。大吾から。

『首尾は?』

『予定通り』

『準備を進める』

『よろしく』

 昨夜、大吾の存在を咲さんに明かすべきか迷って、やめた。

 私にとっては無二の友人で絶対的な信頼を置けるけれど、世間一般の目からすれば違う。

 大吾の就職した会社は、派遣会社。大吾はSEとして色々な会社に出向き、要望通りの仕事をこなす。時には犯罪まがいの仕事も。

 クラッキングだ。

 目的の情報を盗み、依頼人に渡し、報酬を得る。

 いくら大吾が優秀で、どんなに慎重に身を守っていても、咲さんはきっと大吾のしてきたことを調べ上げる。

 そう思って、言えなかった。



 圭には言っておくべきだよね……?



 友人とはいえ男性で、誤解を招くことは避けたい。

 ふっと、数時間前のセックスを思い出した。



 よりによってあんな体勢でする――?



 寸前で、圭は私の膣内なかから出て行った。昨夜もそうだったらしい。



 それにしたって……。



 ただでさえ、避妊は完ぺきではない。



 赤ちゃんできたら……どうするのよ……。



『相手が俺なら、結婚も子供もありだろ』

 圭の言葉を思い出した。



 結婚とか……考えてるのかな、圭。



 ピンポーン

 インターホンが鳴り、ハッとした。

 モニターには圭。

「三浦さんから電話があった」

 玄関に入るなり、圭が言った。

「何て?」

「大事な話があるから、月曜の朝は三十分早く出社してほしいって」と言いながら、圭は買い物袋を差し出す。

 中はビールやサワー。

「大事な話?」

「ああ。お前は咲さんのトコだろ? 俺一人で聞いてくるわ」

「わかった。私もなるべく早く行く」

 私は飲み物を冷蔵庫に入れ、冷えたコーラのペットボトルを出した。圭に渡す。

「そういや、Themisテミスのプログラムを書き換えるって、どのくらいかかるんだ?」

「ソースコードを見ないと何とも……」

「ソースコード?」

「プログラムの設計書って言えばわかりやすいかな? コンピューターへの指示書でもいいけど」

「今更だけどさ――」と言って、圭はコーラを一口飲む。

「お前が、咲さんの言う『小賢しい真似』をしたのは、Themisテミスの使用許可を得て、仕事の主導権を取るためだったんだよな?」

「そうね」

「じゃあ、咲さんは『SK』の正体を知らないのか?」

「え――?」

 顔を上げると、圭は真剣な表情で私を見ていた。



 圭、何か気づいて――?



「『あの時』のお前の反応を見れば、心当たりがあるんだろうってことくらいわかるさ」



『君を待っていたよ。さあ、ゲームを始めよう』



 悟之さんからのメッセージ。

「俺に知られたくない相手だってこともな」

「そんな……」

「伊織、今はまだ言えないならそれでもいい。けど、言えない理由が俺との関係を心配してのことなら、その必要はないからな」

「圭……」



 悟之さんのことを話してしまおうか……。



 ほんの一瞬、迷い、そして、やめた。

「もう少しだけ待って……」

「伊織」

「お願い……」

「わかったよ。ただ、無茶はするなよ」

「ん……」

 圭が私のおでこにキスをして、髪をクシャクシャッと乱した。

「ところでさ、織田さんに俺たちのこと話してもいいか?」

「織田さん?」



 なんで、圭が織田さんのこと……。



「気に入られちゃったみたいで、よく飲みに誘われるんだよ。彼女がいるとは言ったんだけど、諦めてくんなくて」



 織田さんが圭のことを――?



 私の頭の中に、一つの策が思い浮かんだ。



 けど……。



 迷う。

「相手がお前だって言えば、さすがに諦めると思うからさ」


 他に方法がある?

 時間を掛ければある。

 けれど、Themisテミスに取り掛かってしまったら、そんな時間は――。

「伊織?」



 圭にそんなことさせたくない。



「どうした?」



 だけど……。



「おい?」



 織田さんが圭を利用しようとしているのなら――?



「圭」

 顔を上げると、危うく圭の顎に頭突きしそうになった。

「織田さんと付き合って――」
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