ダブル・ミッション 【女は秘密の香りで獣になる2

深冬 芽以

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Mission 11*ハニートラップ

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 我ながら、クサい台詞……。

 伊織には絶対に聞かせたくないな……。



 そんな台詞が、織田さんには効果覿面だった。彼女は顔を赤らめて、俺を見る。少し前の俺なら、キスをしてホテルに直行だったが、今はもう考えられない。

「もしそうなら、間違いなく織田さんに気があるよ」と言って、身体を離す。

「残念ながら、太一くんはそんなこと言いませんでしたぁー」 


 
 太一くん……。

 SELFデザイン専務の末吉太一のことだよな。



「太一くんっていうんだ? 織田さんの――」

「飲み放題のラストオーダーになります」

 いきなり現れた店員の言葉で、織田さんの気が逸れた。

 俺たちはもう一杯ずつビールを注文し、他愛のない会話をしながら料理を平らげた。

 二件目をせがまれる前に織田さんをタクシーに乗せ、五千円札を握らせて、見送った。



 接待費……は無理だよな……。



 俺はため息をつき、伊織にメッセージを送った。

『今、どこ?』

 五分経っても既読にならない。

 俺は三浦さんにメッセージを送った。

『まだ、伊織と一緒にいますか?』

 数秒で既読になり、更に数秒で返信があった。

『三十分後に店の前に来て』

 メッセージと一緒に店の地図。

 歩いて十分ほどの場所だった。隣にはファミレス。俺は店から出て来る二人が見えるように窓側の席に座って待った。

 二人が出てきたのは、四十五分後だった。

「伊織!」

 俺が来ることを知らされていなかったようで、伊織は驚いていた。

「え? なんで……?」と言って、三浦さんの顔を見る。

「奈津さん?」

「帰って目一杯甘えなさい!」

 泣き腫らしたように赤い伊織の目を見て、俺はタクシーを停めた。

「ありがとうございます。三浦さん」

 俺は伊織をタクシーに押し込み、運転手に伊織のマンションの住所を伝えた。

 車中、伊織は終始無言だったけれど、俺の手を強く握って離さなかった。

「そんな顔するくらいなら、他の女と付き合えなんて言うなよ」

 本当に珍しく、伊織から抱きついてきた。肩を震わせて、泣いているのがわかる。
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