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Mission 14*もう一人の裏切者
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しおりを挟む「好きなんですね……。悟之さんのこと」
悟之さんが蓮兄に振られた笠原さんの気持ちを利用したのだと思っていた。最初はそうだったろう。けれど、今の笠原さんは間違いなく悟之さんを愛している。
「だったら尚更――」
「悟之に愛されているあなたにはわからないわ」
愛されている……?
憎まれている……の間違いじゃなくて……?
「私は悟之にとって都合のいい手駒ってだけ。SIINAの人間で、社長に振られて惨めで、親しい友達もいない。優しい言葉で近づいて、触れて、家事が得意だから一緒に暮らすことになった。それだけ」
「それだけ……って」
「悟之の目的のために私は都合が良過ぎたから一緒にいてくれているだけで、彼が愛しているのは今もあなただけ」
笠原さんの表情と言葉には覚えがあった。
圭との関係に勝手に『セフレ』と名前を付けて、勝手に落ち込んでいた私。
「私の知っている悟之さんは、女を手駒だの都合がいいだのでそばに置くような人じゃないです」
「え……?」
「少なくとも、計算でセックスできるような人じゃない」
「なっ――」
笠原さんが顔を赤らめる。
「そんな人なら、笠原さんは悟之さんを好きになったりしないでしょう?」
私はアイスコーヒーを口に含んだ。
「会うかどうかを決めるのは悟之さんです。直接連絡を取ることも出来ますけど、私はあなたから伝えて欲しいんです」
「どうして……」
「私は何も知らなくて……。説得も出来なかったから……」
四年前。
私は悟之さんがしようとしていることを知らなかった。知っていたら、止められたと思う。少なくとも、止めるように説得は出来た。
けれど、私は何も知らなくて、彼を止められなかった。
そして、あんな別れ方をすることになった。
せめて、彼を止める努力が出来ていたら、こうはならなかったのではないかと思う。
「黙って悟之さんの背中を見送るのか、向かい合う努力をするのかはお任せします」
「私が……あなたの言葉を伝えると思うの……?」
俯く笠原さんの表情は、私からは見えなかった。見えたのは、自分を抱き締めるようにしっかりと腕を組み、少し肩を震わせる姿。
「伝えるかもお任せします」
私は伝票を持って立ち上がった。
「身体……大事にしてください」
オレンジジュースに沈む氷が、カランと音を立てて水面を揺らした。
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