ダブル・ミッション 【女は秘密の香りで獣になる2

深冬 芽以

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Mission 18*喧嘩

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「大吾と寝たのか」

 俺は怒っていた。

 理由は帰り際に言った大吾の言葉。

『伊織ってすげーあったかくて抱き心地いいのな』

 挑発なのはわかっている。

 だから、伊織に否定してほしかった。

『一緒に寝るはずない』と。

 けれど、伊織は期待を裏切って、気まずそうに目を逸らした。

「変な言い方しないでよ」

「じゃあ、どういう言い方ならいいわけ?」

「大吾は……心配して来てくれて……」

「で、一緒に寝るんだ」

 昨日、俺と会う前に伊織と会ったとあづみから聞いて、焦った。

 俺が織田さんと会っていた時に見せた泣き顔を思い出した。

『私以外の女は見て欲しくない』

 何度か電話したけど出なくて、あづみをタクシーに乗せた後でようやく繋がった。

 出たのは大吾。

 俺の浮気が疑われていること、伊織と大吾が一緒にいることに気が気じゃなくて、急いで伊織の家に行った。

「何も……なかったし……」と、伊織が言った。

「何もなければ一緒に寝てもいいんだ?」

 大吾が伊織のベッドに潜り込んだんだろうと、わかっている。

 けれど、俺以外の男が伊織に触れたことが嫌でたまらない。

『お前は浮気なんかしない、ってさ』

 玄関先で大吾が言った。

『けど、今は怒ってるから会わないんだと』

『だから、説明したいんだろ』

『今日は体調も悪そうだし、明日出直せよ』

 体調が悪いと言われて、心配にもなったし休ませてやりたいとも思った。

『お前も帰るんだろうな?』

『心配するな。俺は伊織を傷つけたりはしないから』

 わざとらしい笑顔でピシャリとドアを閉められて、俺は渋々帰った。けれど、やっぱり気になって眠れなくて、カフェが開くなり朝食を買って来た。

 そこで見たのが、寝起きの大吾とシャワーを浴びた伊織の姿。

 俺にだって怒る権利はあるはずだ。

 俺の言葉に、伊織がムッとした表情を見せた。珍しい。

「どうして私ばかり怒られなきゃいけないの?」

 俺が番号を新しくした時は、もっと冷めた感じだった。まだ、お互いの気持ちを言葉にする前。

「圭だって私に黙って石川さんと会ったじゃない。友達と会う、だなんて言って。笠原さんと会ったことだって、すぐに教えてくれなかったし!」

 思えば、伊織が感情のままに泣いたり怒ったりする姿を、しばらく見たことがない。

 実の両親だと思っていた二人の離婚の前は、喜怒哀楽を隠せない子供だった。

 そう思うと、伊織が感情のままに怒る姿が愛おしく思えた。

 もっと怒って、もっと嫉妬して、もっと俺を求めて欲しい。



 俺はMか……?



「俺があづみと会った仕返しで大吾を泊めたわけ?」
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