ダブル・ミッション 【女は秘密の香りで獣になる2

深冬 芽以

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Mission 18*喧嘩

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「大吾はっ! 本当に心配して来てくれただけよ」

「本当に心配してたら同じベッドで寝るんだ」



 俺も大概、子供っぽいな。



 わかってはいても、やっぱりムカつく。

「つーか、あづみと会うことを知ってたんなら、何で俺に直接理由を聞かないんだよ。何回電話しても出ねーし、出たと思ったら大吾だし」

「……なんで……石川さんなのよ……」

 威勢よく怒っていた伊織の目に、涙が浮かぶ。

「だから、笠原さんと同じ会社に――」

「わかってる! だけど、どうしてそれが石川さんなのよ!」

「……なに、言ってんだよ」

 様子がおかしい。

 伊織が深く頭を垂れ、髪で表情が見えない。

 漠然と、不安になる。

「石川さん、圭から連絡もらったの初めてだって喜んでたよ」

「は?」

「いつもヨリを戻す時は自分からだったけど、今回は圭から連絡をくれた……って」

 事実だ。

 高校時代に一度付き合ってから、彼氏と別れる度に連絡をしてきた。けれど、お互いに身体だけだとわかっているから、あづみに彼氏が出来ると会わなくなり、連絡が来ても俺に彼女がいたら会わなかった。

 要するに、暇つぶしだ。

「それは笠原さんのことを聞きたかったからで――」

「わかってる……。わかってるの……」

 絞り出すような、震える声。

「わかってるなら――」

「けど……嫌なんだもん」

「何が」

「石川さんは嫌だったの……」

 意味が分からない。



 伊織はあづみが嫌いだってことか?



「意味、わかんないんだけど」

 無意識にため息が漏れた。

「帰って……」

「は?」

「帰って!」

 顔を上げた伊織は涙で濡れた目で俺を睨みつけると、立ち上がった。

「圭なんか大っ嫌い!!」

「はあ? お前だって大吾と寝たくせに、なんで俺ばっか責められなきゃなんねーんだよ!」

『大っ嫌い』に、思わず感情的になってしまった。俺も立ち上がる。

「俺だって好きであづみに会ったわけじゃねーよ! お前の仕事の役に立つと思ったからだろ!」

「わかってる! それでも、嫌だったの! あの人だけは嫌だったの!!」

「何、ガキみたいなこと言ってんだよ!」

 伊織が両手で俺の腕を引っ張り、玄関に向かう。

「どうせガキだもん! 地味だし、真面目で面白くもないし!」

「は? そんなこと言って――」

「どうせ! 私は圭には似合わないもん!!」

「伊織!」

 俺は伊織の腕を振り解くと、抱き締めた。

「どうしたんだよ!」

「放して!」

 ビックリするほどの力で突き飛ばされて、思わずよろける。

 その間に伊織が玄関のドアを開け、俺の靴を放り出す。

「おい!」

 もう一度突き飛ばされて、俺はあっけなく部屋から追い出されてしまった。

「伊織!」

 ガチャッと、容赦なく鍵を掛ける音。

 俺は訳が分からないまま十秒ほどドアを見つめ、それから靴を履いた。
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