ダブル・ミッション 【女は秘密の香りで獣になる2

深冬 芽以

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Mission 23*決着

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『僕のしていることに、紗耶は関係ない』

「本当に!?」

『関係ない!』

「もう、やめて!!」

 笠原さんの悲鳴のような叫びが、部屋に響く。

『やめるんじゃない。終わらせるんだ』

「伊織! 異常終了クラッシュ――じゃない! 初期化イニシャライズだ!!」

 大吾が叫ぶ。

「お前のプログラムごと、T&Nの全情報データが消えるぞ!」

 今度もまた、伊織は動じない。



 これも想定内……か!?



「笠原さん」

 伊織は椅子を回転させて、笠原さんに言った。

「まだ、悟之さんを助けたいですか?」



 自分を『関係ない』と拒絶した男を――。



『欺瞞、だな。君に僕は止められないよ』

「助けて」

 笠原さんに迷いはなかった。

「悟之を助けて!」

 伊織は笑って頷くと、スマホを耳に当てた。

「お願いします」



 誰に――?



『何をっ――』

 スピーカーから聞こえてきたのは、木島の動揺した声。

「私の勝ちよ」

『何をした!』

跳ね返しカウンターくらいで驚き過ぎじゃない?」

『そんな時間は――』

「あなたの敗因は、手札を読み間違えたことよ」

『手札!?』

「そ。切り札エースは圭じゃない」

『じゃあ、誰が――』

『初めまして』

 大吾よりも低く、長谷川よりも太く、木島よりも穏やかな声。そして、誰よりも冷たい声。



 こいつが電話の相手か――?



『誰だ!?』

『僕が誰かを気にする余裕があるんですか? あと十秒ですよ』

 木島の元で何が起こっているのかはわからないが、あと十秒で決着がつくことだけはわかった。

 そして、その十秒は俺たちには十秒でも、木島にはきっと一秒ほどにしか感じなかっただろう。

『では、さようなら』

 切り札エースは去った。

 同時に、木島との通信も途絶えた。

「何がどうなったんだ?」

 部屋にいる、伊織以外の全員の疑問を、大吾が口にした。

「悟之さんのPCがただのガラクタになっちゃったの」と言いながら、伊織が椅子から立ち上がる。

 不安そうな笠原さんの足元に膝をついた。

「これで、悟之さんの犯罪の証拠は全て消えました」

「え……?」

「あとは、彼自身が決断するだけです」

 笠原さんはベッドから滑り落ちるように床に膝をついた。

「ありがとう」

 涙ぐむ笠原さんの肩を抱いて立ち上がると、伊織は笑った。

「行ってあげてください」

 笠原紗耶は、とても大切そうにお腹を抱えて、部屋を飛び出して行った。
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