170 / 176
Mission 23*決着
8
しおりを挟む
トゥルルルル……
社長室の電話が鳴り、綾香さんが受話器を取る。
「SIINA社長室です」
直通電話のよう。
「え……? ええ。今、行きます」
受話器を置き、綾香さんが言った。
「笠原さんが来ているわ。木島の自首について話したいって言うから、迎えに行ってきます」
休日のビルは社員証なしには入れない。
綾香さんが社長室を出て行った。
五分ほどで、綾香さんが笠原さんと一緒に戻ってきた。二人の手には買い物袋が二つ。
「木島から陣中見舞だそうよ」と言って、綾香さんが袋を持ち上げて見せた。
「陣中見舞い!?」
「『今夜も徹夜させてしまうかもしれないから』だそうです」
今日の笠原さんは眼鏡をしていなかった。髪はいつも通り後ろで束ねているが、淡い赤のシュシュをつけていた。
昨夜とは別人のように、表情が明るかった。
それだけではない。
彼女の左手の薬指には指輪がはめられていた。
「腹、減ってたんです」
俺は笠原さんと綾香さんの手から袋を奪い、中を物色した。
「いただきます」
俺は袋の中身を、打ち合わせテーブルの上に広げた。
弁当やおにぎり、サンドイッチ、パン、サラダ、総菜、飲み物。
「古賀さんに渡すように、木島から預かりました」と言って、笠原さんがUSBメモリを差し出した。
「それを見てもらえたら、木島が自首した理由がわかるそうです」
伊織はすぐさまノートパソコンにメモリを挿した。何か思うことがあったのか、自分のノートパソコンを持って来ていた。
「俺も、貰うかな」
蒼さんが、俺の正面に座り、缶コーヒーを開ける。俺は五目おにぎりを頬張った。
「芹沢。来月一日から戻れな」
「え?」
今月はあと四日。
「もう、SIINAでの仕事はないだろ」
「はい……」
少し、名残惜しく感じた。
伊織と再会し、結婚までこぎつけることが出来たのは、SIINAでの三か月があったお陰だ。
だが、SIINAは事実上T&Nに吸収される。
俺も、SIINAの社員も、今のままではいられない。
「これまで通り、SIINAに関してはお前に任せる」
「はい」
「SIINA関係が片付いたら、辞令がある。今以上に忙しくなるから、新婚生活を落ち着かせておけよ」
「辞令……ですか?」
経営戦略部には俺を含めた三人の主任がいる。その上は部長。部長の退職まで、あと十年はある。それ以前に、年上の先輩主任を差し置いて、二十代の俺が部長など、あり得ない。
部署替え……か?
考えたこともなかった。
「どこに飛ばされるんですか?」
「まだナイショ」と、俺の心配を面白がるように、蒼さんがニッコリ笑って言った。
社長室の電話が鳴り、綾香さんが受話器を取る。
「SIINA社長室です」
直通電話のよう。
「え……? ええ。今、行きます」
受話器を置き、綾香さんが言った。
「笠原さんが来ているわ。木島の自首について話したいって言うから、迎えに行ってきます」
休日のビルは社員証なしには入れない。
綾香さんが社長室を出て行った。
五分ほどで、綾香さんが笠原さんと一緒に戻ってきた。二人の手には買い物袋が二つ。
「木島から陣中見舞だそうよ」と言って、綾香さんが袋を持ち上げて見せた。
「陣中見舞い!?」
「『今夜も徹夜させてしまうかもしれないから』だそうです」
今日の笠原さんは眼鏡をしていなかった。髪はいつも通り後ろで束ねているが、淡い赤のシュシュをつけていた。
昨夜とは別人のように、表情が明るかった。
それだけではない。
彼女の左手の薬指には指輪がはめられていた。
「腹、減ってたんです」
俺は笠原さんと綾香さんの手から袋を奪い、中を物色した。
「いただきます」
俺は袋の中身を、打ち合わせテーブルの上に広げた。
弁当やおにぎり、サンドイッチ、パン、サラダ、総菜、飲み物。
「古賀さんに渡すように、木島から預かりました」と言って、笠原さんがUSBメモリを差し出した。
「それを見てもらえたら、木島が自首した理由がわかるそうです」
伊織はすぐさまノートパソコンにメモリを挿した。何か思うことがあったのか、自分のノートパソコンを持って来ていた。
「俺も、貰うかな」
蒼さんが、俺の正面に座り、缶コーヒーを開ける。俺は五目おにぎりを頬張った。
「芹沢。来月一日から戻れな」
「え?」
今月はあと四日。
「もう、SIINAでの仕事はないだろ」
「はい……」
少し、名残惜しく感じた。
伊織と再会し、結婚までこぎつけることが出来たのは、SIINAでの三か月があったお陰だ。
だが、SIINAは事実上T&Nに吸収される。
俺も、SIINAの社員も、今のままではいられない。
「これまで通り、SIINAに関してはお前に任せる」
「はい」
「SIINA関係が片付いたら、辞令がある。今以上に忙しくなるから、新婚生活を落ち着かせておけよ」
「辞令……ですか?」
経営戦略部には俺を含めた三人の主任がいる。その上は部長。部長の退職まで、あと十年はある。それ以前に、年上の先輩主任を差し置いて、二十代の俺が部長など、あり得ない。
部署替え……か?
考えたこともなかった。
「どこに飛ばされるんですか?」
「まだナイショ」と、俺の心配を面白がるように、蒼さんがニッコリ笑って言った。
1
あなたにおすすめの小説
フッてくれてありがとう
nanahi
恋愛
【25th Anniversary CUP】にて、最終ランキング3位に入りました。投票してくださった皆様、読んでくださった皆様、ありがとうございました!
「子どもができたんだ」
ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。
「誰の」
私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。
でも私は知っている。
大学生時代の元カノだ。
「じゃあ。元気で」
彼からは謝罪の一言さえなかった。
下を向き、私はひたすら涙を流した。
それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。
過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──
嘘コクのゆくえ
キムラましゅろう
恋愛
アニーは奨学金とバイトで稼いだお金で魔法学校に通う苦学生。
生活は困窮、他の学生みたいに愛だの恋だのに現を抜かしている暇などない生活を送っていた。
そんな中、とある教授の研究室で何らかの罰としてアニー=メイスンに告白して来いと教授が学生に命じているのを偶然耳にしてしまう。
アニーとは自分のこと、そして告白するように言われていた学生は密かに思いを寄せる同級生のロンド=ハミルトンで……
次の日、さっそくその命令に従ってアニーに嘘の告白、嘘コクをしてきたロンドにアニーは……
完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。
誤字脱字が罠のように点在するお話です。菩薩の如き広いお心でお読みいただけますと幸いです。
作者は元サヤハピエン主義を掲げております。
アンチ元サヤの方は回れ右をお勧めいたします。
小説家になろうさんにも時差投稿します。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
上司に恋していいですか?
茜色
恋愛
恋愛に臆病な28歳のOL椎名澪(しいな みお)は、かつて自分をフッた男性が別の女性と結婚するという噂を聞く。ますます自信を失い落ち込んだ日々を送っていた澪は、仕事で大きなミスを犯してしまう。ことの重大さに動揺する澪の窮地を救ってくれたのは、以前から密かに憧れていた課長の成瀬昇吾(なるせ しょうご)だった。
澪より7歳年上の成瀬は、仕事もできてモテるのに何故か未だに独身で謎の多い人物。澪は自分など相手にされないと遠慮しつつ、仕事を通して一緒に過ごすうちに、成瀬に惹かれる想いを抑えられなくなっていく。けれども社内には、成瀬に関する気になる噂があって・・・。
※ R18描写は後半まで出てきません。「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しています。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる