続・最後の男

深冬 芽以

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 翌日。

 宇喜原商店への納品を終え、スーパーで昼飯と晩飯の弁当を買い、アパートに帰った。

 大粒の、ふわふわした軽い雪が真っ直ぐに落ちてくる。一歩を踏み出す度に、サクサクッと軽い音がした。

 五十代後半から六十代前半くらいの夫婦らしき男女が正面から歩いて来た。二人は無言で、女性は男性の腕に手を添えていた。男性がチラリと女性を見て、被っているコートのフードに積もる雪を手で落とした。女性は顔を上げて男性に何か言う。男性はゆっくりと頷き、女性は穏やかに微笑んだ。

 少し前までは、いい年をして手を繋いだり腕を組んで歩く夫婦を見ると、僅かな嫌悪感を持った。

 けれど、今は羨ましいと思う。

 それはきっと、十年、二十年後にあんな風に寄り添って歩きたいと思うようになったから。寄り添って歩きたい相手が出来たから。



 彩の方が恥ずかしがって嫌がりそうだな。



 フッと息を漏らすと、口元の雪が進路変更を余儀なくされた。

 アパートの階段を上り、コートの雪を落として顔を上げると、部屋の前に人影が見えた。



 彩!?



 そうであって欲しいと目を凝らして見て、今度は目を疑った。

「智くん?」

 母親だった。

 彼女はゆっくりと俺に近づき、戸惑いながら微笑んだ。

「久し振りね……?」

 昨夜の電話でも思った。記憶より細く、皺が寄っているとでも言うか、老いを感じさせる声。そして、見た目にも。

「何の用?」

「話があって」

 俺は母さんとは目を合わさず、鍵を差し込んだ。

「お父さんのことで、話があるの」

「姉さんに話せよ」

「電話したんだけど、勇気ゆきがインフルエンザになっちゃったみたいで、忙しそうだったから……」

 俺は思わず振り返った。

「勇気が? それで、手伝いもしないで釧路こんなところに来たのかよ!?」

「うつったら困るから、来なくていいって夏子が――」

「だとしてもっ――!」

 義兄にいさんは年明けから春まで、出張に行っている。姉さん一人じゃ、大変だろう。

 俺は乱暴にドアを開け、靴箱の上に弁当の袋を置くと、スーツの内ポケットからスマホを取り出した。

 呼び出し音二回で、繋がった。

『もしもし』

「彩? 今日、何か予定あったか?」

 今日か明日のどちらかで、真が英検を受けに行くと言っていたはず。どちらかまでは覚えていなかった。

『え? 今日は何も? お昼食べてから買い物に行こうと思ってたくらい』

「悪いんだけど、姉さんに電話してみてくんないか? 勇気がインフルになったみたいなんだけど、義兄さん留守のはずなんだよ」

『わかった』

「頼むな」

『ん』
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