続・最後の男

深冬 芽以

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4 再会

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 この一年で、彩と姉さんは急速に親しくなった。ちょくちょく子連れで会っているらしい。

 とりあえず、彩に任せておけば大丈夫だろう。

「今の、彼女?」

 ドアの一歩向こうから、母さんが聞いた。

「関係ない」

「夏子とも親しいの?」

「関係ない!」

「お父さん、入院してるの。札幌の病院なんだけど、一度顔を見せてあげて欲しいの」

「……」

 驚いた。

 それは否定しない。

 けれど、ほんの一瞬のこと。

「命にかかわるような病気?」

「そんなんじゃないの。けど、家族なんだから――」

 母さんこの人はいつもこうだ。

 こっちの都合はお構いなし。

 ずっと放ったらかしにしていたくせに、突然現れて平然と『家族』になろうとする。

 俺は、両親の、この身勝手さが堪らなく嫌いだ。

「孫がインフルだってのに手伝いにも行かなくて、なにが家族だよ」

「智くん」



 彩に、会いたい。



「俺の家族は姉さんだけだ」

「そんなこと言わないで。お父さんだって智くんに――」

「俺は会いたくない」



 彩に、会いたい。



「智くん!」

「今更『家族』になんかなれるかよ」

 そうだ。

 俺たちが『家族』だったことなんかない。

「飛行機の時間があるから、今日は帰ります。また、来るから」

 そう言って、母さんはさっさとアパートの階段を下りて行った。

「は――。何しに来たんだよ……」

 俺はドアを閉め、鍵をかけ、その場に座り込んだ。



 彩に、会いたい。



 姉さんの結婚式以来、十年ぶりの再会はたったの十分。昨夜の電話で、俺が両親を拒絶していることはわかっているはずだ。それなのに、滞在十分で俺と和解する気だったのなら、なんともおめでたい。

 母さんは、俺に会いに来た、という事実が欲しかっただけだ。

 自分は息子と和解すべく、はるばる足を運んだのに、息子は受け入れてくれなかった。

 そういう筋書きだ。

 母さんあの人は自分の言動を正当化したいだけ。自己満足だ。

 その証拠に、母さんあの人は俺と姉さんを放ったらかしにしてきたことに、一度も『ごめん』と言ったことがない。

『仕事だから』

 いつもそう言うだけだった。

 その言葉が、親としての責任を放棄しても許される免罪符かのように。

 一度も言ったことがない。

『一緒に暮らせなくてごめんね』

 一度もだ。



 同じ『母親』でも、全然違うな……。



 彩のような母親に育てられていたら、きっとこんなに結婚を躊躇せずに済んだんだろう。

 彩が俺の母親と違うことはわかっている。

 問題は、俺だ。

『家族』の在り方がわからない俺が、父親に、血の繋がらない子供二人の父親になろうなんて、無謀でしかない気がする。

『いつ、結婚するの?』



 結婚、出来んのかなぁ……。 



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