続・最後の男

深冬 芽以

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 智也からの電話の後で、私は夏子に電話をかけた。疲れ切った声で『大丈夫』と言われても、説得力がない。

 勇気くんは昨日、インフルエンザの診断を受けて、三十九度五分まで上がった熱は、今は三十八度八分まで下がったという。

 今のところ、真心ちゃんは元気らしい。

 私はプリンやゼリーなどの勇気くんが食べやすいものと、夏子と真心ちゃん用に冷凍食品や菓子パン、お弁当にお総菜などを買い込んで、届けに行った。

『うつるといけないから』と夏子が言い張るから、私は買ったものを玄関ドアの横に置き、インターホンを鳴らして帰った。

『ありがとう。助かった!』

 夏子からのメッセージ。

 幼い子供が体調を崩して何が一番困るかと言えば、買い物。

 具合が悪くて子供にぐずられるのもツラいけれど、基本的には抱っこか添い寝で解決する。けれど、具合の悪い子供を連れて買い物には出掛けられない。眠っているからと置いて出るのはもってのほか。

 私も子供たちが体調を崩した時は、よく母親に買い物を頼んだ。

 子供が体調を崩す時は、大抵冷蔵庫が空だった。

「とりあえず、買い物をして届けたから、あとは引きこもって勇気くんの熱が下がるのを待つしかないと思う」

 自分の買い物をしようと、近くのスーパーに車を停めて、電話をかけた。

「真心ちゃんと夏子がうつらなきゃいいけど」

『助かったよ。ありがとう』

「ううん」

『ホント、ありがとう』

 こうして電話で話すことが多いと、声の調子で分かる。智也の異変。

「智也、どうしたの?」

『なにが?』

「何かあった?」

『……風邪、ひいたかな』

 らしくない、間。

『寝込んだら、看病に来いよ』

 思い過ごしかもしれない。そうじゃなくても、智也が私に言わないのだから、言いたくないことなのだろう。

「暖かくして、早く寝なさい」

『彩の身体で暖めて』

「ぐっすり寝て汗をかいたらすっきりするわよ。汗をかいたら着替えてね」

『汗かくようなこと、しよーぜ』

「バカ言ってないで、さっさと寝て!」

『はーい』

 もどかしい。

 そばにいたら、話してくれるのかもしれない。

 そばにいないから、話せないのかもしれない。



 あ、薬飲むように言うの忘れた……。



 メッセージを打とうとして、やめた。



 薬の前に、何か食べないと……。



 電話をしようとして、やめた。



 子供じゃないんだから、わかるか……。



 子供たちからのリクエストのすき焼きの材料を買い、車に戻り、スマホを見た。

 智也からの電話やメッセージはない。

 言う通りに寝たのだろう。

 私はネットで丘珠空港のサイトを開き、閉じた。
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