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課長の意地悪の理由は、明日の金曜日に有給を申請したこと。
『仕事休んで看病してもらえるなら、俺も熱出そうかな』
申請書を出した時、理由を言うと課長が呟いた。
『あら、いい度胸ね? 私のお粥が食べたいの?』
腕を組んで、冨田課長が言った。
『今夜にでも作ってあげるわよ? その代わり、残さず食べなさいよ』
恋人からの脅迫染みた申し出に、千堂課長は空笑いをしていた。
先週のバレンタインの後、冨田課長から、時間のある時に料理を教えて欲しいと頼まれた。
それとは別に、千堂課長からも、冨田課長に料理を教えてあげて欲しいと頼まれた。
千堂課長も料理が出来るのだから二人でやればいいと思ったが、どうやら冨田課長が嫌がったらしい。
千堂課長は冨田課長のお粥を丁重に断り、私の有休を許可してくれた。
真と亮、そして両親は、快く送り出してくれた。
「こじらせたら大変だから」と。
奥山商事との契約にこぎつけたことを報告しようと電話をかけた時、智也の声に違和感を持った。
『ちょっと風邪気味でさ』と、智也は何でもなさそうに言った。
『のど飴でも舐めとくわ』
寝込んだら看病しろ、なんて言っていたけれど、実際に風邪を引いたら平気な振りをする。
私に心配をかけまいとしているのだろうけれど、翌日の電話で風邪が悪化しているのがわかった。
その翌日、昨日にはほとんど声が出ないからと、メッセージが届いた。
そして、今朝。私は有給の申請をした。
智也には知らせていない。
来なくていい、と言われそうだったし、いきなり押しかけて浮気チェックでもしてやろうかなんて意地悪な考えもあったから。
まぁ、九割は心配だからだ。
だから、金曜日の昼に智也のアパートが空のことに、驚いたし、怒りが込み上げてきた。
昨日、あれだけ安静に寝ているようにとしつこくメッセージを送ったのに、仕事に行ったのだ。この前トラブった顧客に呼ばれている、とは聞いていた。
私は荷物を置いて、釧路支社に電話をかけ、智也の行き先を聞いた。
智也は自分で運転して、出かけたという。
私は駅前でタクシーを捕まえて、大雑把な住所と会社名を告げた。
綿を小さく千切ったような、ふわふわの雪が降り始め、瞬く間に積もっていく。
タクシーのワイパーの速度も上がっていく。
フロントガラスに落ちては振り落とされていく。
十一時二十八分。
先方との約束は十時半とのことだから、智也は既に帰社途中か、まだでもそろそろだろう。
案の定、駐車場に会社の車があった。
車のそばで待っていれば、会える。
帰りは私が運転しよう、と思った。
お金を払ってタクシーを降りると、ちょうど玄関を出てくる智也の姿が目に入った。
智也はクリスマスに私が贈ったマフラーを首に巻き、顔の半分を埋め、肩を竦めている。余程、体調が悪いのだとわかった。
「とも――」
声をかけようとして、躊躇した。
智也のすぐ後に出て来た女性が、智也を呼び止めたから。
『仕事休んで看病してもらえるなら、俺も熱出そうかな』
申請書を出した時、理由を言うと課長が呟いた。
『あら、いい度胸ね? 私のお粥が食べたいの?』
腕を組んで、冨田課長が言った。
『今夜にでも作ってあげるわよ? その代わり、残さず食べなさいよ』
恋人からの脅迫染みた申し出に、千堂課長は空笑いをしていた。
先週のバレンタインの後、冨田課長から、時間のある時に料理を教えて欲しいと頼まれた。
それとは別に、千堂課長からも、冨田課長に料理を教えてあげて欲しいと頼まれた。
千堂課長も料理が出来るのだから二人でやればいいと思ったが、どうやら冨田課長が嫌がったらしい。
千堂課長は冨田課長のお粥を丁重に断り、私の有休を許可してくれた。
真と亮、そして両親は、快く送り出してくれた。
「こじらせたら大変だから」と。
奥山商事との契約にこぎつけたことを報告しようと電話をかけた時、智也の声に違和感を持った。
『ちょっと風邪気味でさ』と、智也は何でもなさそうに言った。
『のど飴でも舐めとくわ』
寝込んだら看病しろ、なんて言っていたけれど、実際に風邪を引いたら平気な振りをする。
私に心配をかけまいとしているのだろうけれど、翌日の電話で風邪が悪化しているのがわかった。
その翌日、昨日にはほとんど声が出ないからと、メッセージが届いた。
そして、今朝。私は有給の申請をした。
智也には知らせていない。
来なくていい、と言われそうだったし、いきなり押しかけて浮気チェックでもしてやろうかなんて意地悪な考えもあったから。
まぁ、九割は心配だからだ。
だから、金曜日の昼に智也のアパートが空のことに、驚いたし、怒りが込み上げてきた。
昨日、あれだけ安静に寝ているようにとしつこくメッセージを送ったのに、仕事に行ったのだ。この前トラブった顧客に呼ばれている、とは聞いていた。
私は荷物を置いて、釧路支社に電話をかけ、智也の行き先を聞いた。
智也は自分で運転して、出かけたという。
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綿を小さく千切ったような、ふわふわの雪が降り始め、瞬く間に積もっていく。
タクシーのワイパーの速度も上がっていく。
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案の定、駐車場に会社の車があった。
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帰りは私が運転しよう、と思った。
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智也はクリスマスに私が贈ったマフラーを首に巻き、顔の半分を埋め、肩を竦めている。余程、体調が悪いのだとわかった。
「とも――」
声をかけようとして、躊躇した。
智也のすぐ後に出て来た女性が、智也を呼び止めたから。
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