続・最後の男

深冬 芽以

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6 ダブルパンチ

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 体温計を忘れていたから、私の勘でしかないけれど、金曜日には三十九度を超えていただろう。それが、食べて、薬を飲んで、ぐっすりと寝て、汗をかいて、土曜日の朝には三十八度くらいまで下がったようだった。

 目に見えて、智也の顔色もいい。

 私は智也が朝ご飯を食べて、薬を飲み、もう一度眠ったのを確認して、部屋を出た。

 夜中に一度、朝に一度、パジャマを着替えた時に、シーツとタオルケットを取り換えた。智也を起こさないようにと洗濯機を回すのをやめたから、コインランドリーに行って洗濯と乾燥まで済ませてしまいたかった。

 アパートから徒歩十五分ほどの場所にイ〇ンがあり、コインランドリーも入っていた。選択している間、店内のミ〇ドで朝ご飯を食べるつもりだった。

 智也が寝込んでいる時に不謹慎ではあるけれど、こんな風に休日の朝食を外で食べるなんて贅沢は、私には滅多に出来ないことだった。

 チーズドックとブレンドコーヒーのセットだけでは足りず、ドーナツを一つとコーヒーをお代わりして、四十五分間をまったりと過ごした。

「どこ、行ってたんだよ」

 部屋のドアを開けるなり、智也が言った。

 昨日よりずっと、声が出ている。

「起きてたの?」

 とは言っても、智也はベッドの中。

「どこに行ってたんだよ」

「コインランドリー。シーツとか洗って乾かしている時間ないと思って」

「言ってけよ」

 不機嫌そうに言うと、寝返りを打って背を向けた。

 私はベッドの下に座り、彼の頭に触れた。

 昨日から、ずっとこうしている。

「どうしたの?」

「起きていなかったら、心配するだろ」

「電話すればいいじゃない」

「充電切れてた」

「充電すれば?」

「……面倒臭せぇ」



 ホント、大きい子供だな。



 眠っているからと放っておかれたことが気に入らないだけだろう。

 子供たちも熱を出した時、よく眠っているからと買い物に出たりすると、こんな風にいじける。

 とにかく、ずっとそばにいて、心配してほしくて、ものすごく具合が悪そうに咳き込んでみたり、ちょっと姿が見えないとぐずってみたりする。さすがに真はもうそこまで手を焼かせないけれど、それでも、自分が具合悪い時に私が亮と仲良くしていると、一丁前の嫉妬の視線で私たちを見ている。

 まぁ、せめてそんな時くらいはと甘やかしすぎてしまう私も悪いのかもしれないけれど。

「少しは楽になった?」

 私は智也の頭を撫でながら、聞いた。

「汗かいたなら、着替える?」

 智也がゆっくりと身体を回転させ、私を見た。

「彩」

「ん?」

 智也が私の手首を掴み、自分の口元に運ぶ。そして、手の甲にキスをした。

 唇は、熱い。
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