続・最後の男

深冬 芽以

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6 ダブルパンチ

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 で、次に考えたのは、この口の中のモノをどうするか。

 実は、私は飲んだことがない。

 だから、飲むのが正解か、ティッシュにでも出すのが正解か、はたまた洗面所で吐き出すのが正解か、わからなかった。

 ただ、これもまた無意識に、口の中で小さく柔らかくなっていくモノをきれいにしようと、舌で舐めると、液体がゆっくりと喉を伝い、この瞬間に飲み込むか吐き出すかの二択を迫られ、またまた無意識に飲み込んでしまった。



 ……無理――!!



 そう思ったら、私は勢いよく立ち上がり、洗面所に駆け込んだ。

 ウエッとか声が出なかったのが救いだ。

 私は口の中の液体を吐き出し、口をゆすいだ。三回。

 苦い、とか、汚い、とかではなく、生理的に、無理、と思ってしまった。

 そして、また、ハッとした。



 私、酷くない――?

 勝手に飲み込んでおいて、吐き出すとか、智也にしたら気分悪いんじゃ……。 



「彩? 大丈夫か?」

 智也の声を間近に感じて、振り向いた。戸口にもたれるようにして、智也が私の様子を窺っていた。

「わり……。ちゃんとゴム着けときゃ良かったな」

「あ、ううん。大丈夫」

「つーか、気持ち良過ぎなんだって……」

 智也がおでこを私の肩に押し付けるようにもたれかかって来た。

「ますますシたくなるし」

 腰を抱かれて、気が付いた。さっきは落ち着きを取り戻した智也のモノが、また少し興奮状態になっている。

 同時に、彼の身体の熱を肌に感じ、本調子には程遠いとわかった。

「しっかり熱が下がったらね!」

 私は智也の肩をポンポンと叩いた。

「……寝る」

「ん。あ、お昼ご飯はうどんで――、あ!」

「なに?」

「めんつゆ買うの忘れた」

 昨日は寝ている智也を待たせて急いで買い物をしたから、何か買い忘れがある気はしていた。

 私にはよくあること。

 作り始める前に気が付いて良かった。

「マジで。じゃ、うどんじゃなくても――」

「いいよ。買って来る」

「わざわざ行かなくてもいいだろ」

「私も食べたいし。他にも買い忘れがある気もするし。智也は寝てて!」

 私は智也の腕を引っ張ってベッドに連れて行き、冷蔵庫の中を覗いた。

「うどんに卵入れて」

「ん」

 私はメモ紙に、めんつゆと卵、天かすと書いて、ポケットに入れた。

「ちゃんと寝ててね」

「ん」

 私は玄関を出て、鍵を閉めた。

 ちょうど階段を上って来た女性と目が合って、私はドアの前で彼女が通り過ぎるのを待った。

 雪が吹き込んで、すれ違いにくい。

 五十代後半くらいの白のダウンコートを着た女性は、階段を上りきると立ち止まり、じっと私を見た。

 私が邪魔なのかなと思ったけれど、階段前に立たれると出て行けない。

「そこ、溝口さんの部屋ですよね」

 女性が、言った。

「え? あ、はい。溝口に御用ですか?」

「……」
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