95 / 231
11 彼女の本音
7
しおりを挟む
俺が益井に贈ったものとは比べ物にならないほど高価そうなネックレスが男の顔にぶつかって床に落ち、ピアスが入っているであろう箱がぶつかりコーヒーがこぼれた。
バンッと千円札をテーブルに叩きつけ、冨田はヒールを鳴らして店を出た。
その姿を見て、思った。
俺も、向かい合おう。
冨田と吐くまで酒を飲んだ翌日、俺は紙袋に突っ込んでおいた益井の私物を持って会いに行った。
「俺がやったネックレスを着けて、言ったんだ。『智也ならわかってくれるでしょう?』って。流石にゾッとしたな。けど、相手の男とは結婚の話も出てるって言うし、結局何も言わなかった」
「ネックレスは?」
「結婚祝いってことにされたよ。ま、返されたって捨てるだけだったろうし? カード代引き落とされた通帳を見た時には、流石に腹が立ったけど」
横から伸びてきた腕に肩を抱かれ、俺は首を回した。いつの間にか彩がソファの上に座っていた。俺の肩に額を押し付けて、俯いている。
俺は彼女の胸にもたれかかった。
「同情したか?」
彩が首を振る。
「可哀想な俺を慰めてくれるんじゃないのか?」
さっきより激しく首を振る。
「彩……」
彼女の腕の中で身を捩り、顔を覗き込む。と、彼女の方が先に顔を上げた。その表情は、なんとも凛々しい。
「智也のどこが可哀想なのよ!? あんな女と結婚なんてしなくて良かったじゃない。ってか! 浮気に気づかなかったとか、鈍すぎだし!」
優しく慰めてもらえるのかと期待した俺を裏切り、彩は険しい表情で鼻息を荒くして続けた。
「十年前とは言え、滅茶苦茶ムカつくんだけど! 今でも智也を名前で呼ぶし! なにが『智也も同じことをしたと思うわよ』よ!」
思わず、プッと吹き出してしまった。
益井の台詞を言った彩のすまし顔が、ツボにはまった。
「いや! 笑い事じゃないし!! ほんっとムカつく!」
『ムカつく』って、二回言った。
「あっはははは……!」
「智也!」
堪えきれなくなって腹を抱えて笑う俺の肩に、彩のパンチが飛んできた。
「だって……。今の、益井の真似もう一回やって」
「やらないから!」
「めっちゃ似てた」
「嬉しくないから!」
「やべ……。苦し……」
「智也!」
笑い過ぎて涙が出る。
「お前……、この流れで……」
まったく、彩は最高だ。
俺は彩に抱きつくと、そのままソファに押し倒した。
「普通は同情して慰めるだろ」
「可哀想だなんて思ってないもの」
「ひでーの」
「智也」
急に真顔で見つめられて、俺もつられる。
「私、益井課長、嫌いだわ」
「は?」
「智也のことにしても、仕事のやり方にしても、ムカつくし」
三回目。
余程、ムカついているのだろう。
「ホント、大っ嫌い」
そう呟く彩の唇に舌を這わせると、彼女の腕が俺の首に絡んだ。同時に、彼女が唇を開いて、俺を出迎えた。
「んっ……」
握手するように舌を絡ませ、味わうと、彩の艶っぽい声が漏れた。
バンッと千円札をテーブルに叩きつけ、冨田はヒールを鳴らして店を出た。
その姿を見て、思った。
俺も、向かい合おう。
冨田と吐くまで酒を飲んだ翌日、俺は紙袋に突っ込んでおいた益井の私物を持って会いに行った。
「俺がやったネックレスを着けて、言ったんだ。『智也ならわかってくれるでしょう?』って。流石にゾッとしたな。けど、相手の男とは結婚の話も出てるって言うし、結局何も言わなかった」
「ネックレスは?」
「結婚祝いってことにされたよ。ま、返されたって捨てるだけだったろうし? カード代引き落とされた通帳を見た時には、流石に腹が立ったけど」
横から伸びてきた腕に肩を抱かれ、俺は首を回した。いつの間にか彩がソファの上に座っていた。俺の肩に額を押し付けて、俯いている。
俺は彼女の胸にもたれかかった。
「同情したか?」
彩が首を振る。
「可哀想な俺を慰めてくれるんじゃないのか?」
さっきより激しく首を振る。
「彩……」
彼女の腕の中で身を捩り、顔を覗き込む。と、彼女の方が先に顔を上げた。その表情は、なんとも凛々しい。
「智也のどこが可哀想なのよ!? あんな女と結婚なんてしなくて良かったじゃない。ってか! 浮気に気づかなかったとか、鈍すぎだし!」
優しく慰めてもらえるのかと期待した俺を裏切り、彩は険しい表情で鼻息を荒くして続けた。
「十年前とは言え、滅茶苦茶ムカつくんだけど! 今でも智也を名前で呼ぶし! なにが『智也も同じことをしたと思うわよ』よ!」
思わず、プッと吹き出してしまった。
益井の台詞を言った彩のすまし顔が、ツボにはまった。
「いや! 笑い事じゃないし!! ほんっとムカつく!」
『ムカつく』って、二回言った。
「あっはははは……!」
「智也!」
堪えきれなくなって腹を抱えて笑う俺の肩に、彩のパンチが飛んできた。
「だって……。今の、益井の真似もう一回やって」
「やらないから!」
「めっちゃ似てた」
「嬉しくないから!」
「やべ……。苦し……」
「智也!」
笑い過ぎて涙が出る。
「お前……、この流れで……」
まったく、彩は最高だ。
俺は彩に抱きつくと、そのままソファに押し倒した。
「普通は同情して慰めるだろ」
「可哀想だなんて思ってないもの」
「ひでーの」
「智也」
急に真顔で見つめられて、俺もつられる。
「私、益井課長、嫌いだわ」
「は?」
「智也のことにしても、仕事のやり方にしても、ムカつくし」
三回目。
余程、ムカついているのだろう。
「ホント、大っ嫌い」
そう呟く彩の唇に舌を這わせると、彼女の腕が俺の首に絡んだ。同時に、彼女が唇を開いて、俺を出迎えた。
「んっ……」
握手するように舌を絡ませ、味わうと、彩の艶っぽい声が漏れた。
1
あなたにおすすめの小説
【ルーズに愛して】指輪を外したら、さようなら
深冬 芽以
恋愛
インテリアデザイナーの相川千尋《あいかわちひろ》は、よく似た名前の同僚で妻と別居中の有川比呂《ありかわひろ》と不倫関係にある。
ルールは一つ。
二人の関係は、比呂の離婚が成立するまで。
その意味を深く考えずに関係を始めた比呂だったが、今となっては本気で千尋を愛し始めていた。
だが、比呂の気持ちを知っても、頑なにルールを曲げようとしない千尋。
千尋と別れたくない比呂は、もう一つのルールを提案する。
比呂が離婚しない限り、絶対に別れない__。
【ルーズに愛して】シリーズ
~登場人物~
相川千尋《あいかわちひろ》……O大学ルーズサークルOG
トラスト不動産ホームデザイン部インテリアデザイン課主任
有川比呂《ありかわひろ》……トラスト不動産ホームデザイン部設計課主任
千尋の同僚
結婚四年、別居一年半の妻がいる
谷龍也《たにたつや》……O大学ルーズサークルOB
|Free Style Production《フリー スタイル プロダクション》営業二課主任
桑畠《くわはた》あきら……O大学ルーズサークルOG
市役所勤務、児童カウンセラー
小笠原陸《おがさわらりく》……O大学ルーズサークルOB
|Empire HOTEL《エンパイアホテル》支配人
小笠原春奈《おがさわらはるな》……陸の妻
|Empire HOTEL《エンパイアホテル》のパティシエ
新田大和《にったやまと》……O大学ルーズサークルOB
新田設計事務所副社長
五年前にさなえと結婚
新田《にった》さなえ……O大学ルーズサークルOG
新田大斗《にっただいと》……大和とさなえの息子
亀谷麻衣《かめやまい》……O大学ルーズサークルOG
楠行政書士事務所勤務
婚活中
鶴本駿介《つるもとしゅんすけ》……楠行政書士事務所勤務
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
やさしいキスの見つけ方
神室さち
恋愛
諸々の事情から、天涯孤独の高校一年生、完璧な優等生である渡辺夏清(わたなべかすみ)は日々の糧を得るために年齢を偽って某所風俗店でバイトをしながら暮らしていた。
そこへ、現れたのは、天敵に近い存在の数学教師にしてクラス担任、井名里礼良(いなりあきら)。
辞めろ辞めないの押し問答の末に、井名里が持ち出した賭けとは?果たして夏清は平穏な日常を取り戻すことができるのか!?
何て言ってても、どこかにある幸せの結末を求めて突っ走ります。
こちらは2001年初出の自サイトに掲載していた小説です。完結済み。サイト閉鎖に伴い移行。若干の加筆修正は入りますがほぼそのままにしようと思っています。20年近く前に書いた作品なのでいろいろ文明の利器が古かったり常識が若干、今と異なったりしています。
20年くらい前の女子高生はこんな感じだったのかー くらいの視点で見ていただければ幸いです。今はこんなの通用しない! と思われる点も多々あるとは思いますが、大筋の変更はしない予定です。
フィクションなので。
多少不愉快な表現等ありますが、ネタバレになる事前の注意は行いません。この表現ついていけない…と思ったらそっとタグを閉じていただけると幸いです。
当時、だいぶ未来の話として書いていた部分がすでに現代なんで…そのあたりはもしかしたら現代に即した感じになるかもしれない。
楽園 ~きみのいる場所~
深冬 芽以
恋愛
事故で手足が不自由になった悠久《はるか》は、離婚して行き場を失くしていた義姉の楽《らく》を世話係として雇う。
派手で我儘な女王様タイプの妻・萌花《もか》とは正反対の地味で真面目で家庭的な楽は、悠久に高校時代の淡い恋を思い出させた。
「あなたの指、綺麗……」
忘れられずにいた昔の恋人と同じ言葉に、悠久は諦めていたリハビリに挑戦する。
一つ屋根の下で暮らすうちに惹かれ合う悠久と楽。
けれど、悠久には妻がいて、楽は義姉。
「二人で、遠くに行こうか……。きみが一緒なら、地獄でさえも楽園だから――」
二人の行く先に待っているのは、地獄か楽園か……。
なし崩しの夜
春密まつり
恋愛
朝起きると栞は見知らぬベッドの上にいた。
さらに、隣には嫌いな男、悠介が眠っていた。
彼は昨晩、栞と抱き合ったと告げる。
信じられない、嘘だと責める栞に彼は不敵に微笑み、オフィスにも関わらず身体を求めてくる。
つい流されそうになるが、栞は覚悟を決めて彼を試すことにした。
Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ
慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。
その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは
仕事上でしか接点のない上司だった。
思っていることを口にするのが苦手
地味で大人しい司書
木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)
×
真面目で優しい千紗子の上司
知的で容姿端麗な課長
雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29)
胸を締め付ける切ない想いを
抱えているのはいったいどちらなのか———
「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」
「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」
「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」
真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。
**********
►Attention
※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです)
※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。
※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
年下研修医の極甘蜜愛
虹色すかい
恋愛
医局秘書として市内の病院に勤務する廣崎彩27歳。普段はスマートに仕事をこなすクールな彼女だが、定期的にやって来る「眠れない夜」に苦しんでいる。
そんな彩に、5年越しの思いを寄せる3歳年下の藤崎仁寿。人当たりがよくて優しくて。仔犬のように人懐っこい笑顔がかわいい彼は、柔和な見た目とは裏腹に超ポジティブで鋼のような心を持つ臨床研修医だ。
病気や過去の経験から恋愛に積極的になれないワケありOLとユーモラスで心優しい研修医の、あたたかくてちょっと笑えるラブストーリー。
仁寿の包み込むような優しさが、傷ついた彩の心を癒していく――。
シリアスがシリアスにならないのは、多分、朗らかで元気な藤崎先生のおかげ♡
*****************************
※他サイトでも同タイトルで公開しています。
Home, Sweet Home
茜色
恋愛
OL生活7年目の庄野鞠子(しょうのまりこ)は、5つ年上の上司、藤堂達矢(とうどうたつや)に密かにあこがれている。あるアクシデントのせいで自宅マンションに戻れなくなった藤堂のために、鞠子は自分が暮らす一軒家に藤堂を泊まらせ、そのまま期間限定で同居することを提案する。
亡き祖母から受け継いだ古い家での共同生活は、かつて封印したはずの恋心を密かに蘇らせることになり・・・。
☆ 全19話です。オフィスラブと謳っていますが、オフィスのシーンは少なめです 。「ムーンライトノベルズ」様に投稿済のものを一部改稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる