続・最後の男

深冬 芽以

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11 彼女の本音

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 俺が益井に贈ったものとは比べ物にならないほど高価そうなネックレスが男の顔にぶつかって床に落ち、ピアスが入っているであろう箱がぶつかりコーヒーがこぼれた。

 バンッと千円札をテーブルに叩きつけ、冨田はヒールを鳴らして店を出た。

 その姿を見て、思った。



 俺も、向かい合おう。



 冨田と吐くまで酒を飲んだ翌日、俺は紙袋に突っ込んでおいた益井の私物を持って会いに行った。

「俺がやったネックレスを着けて、言ったんだ。『智也ならわかってくれるでしょう?』って。流石にゾッとしたな。けど、相手の男とは結婚の話も出てるって言うし、結局何も言わなかった」

「ネックレスは?」

「結婚祝いってことにされたよ。ま、返されたって捨てるだけだったろうし? カード代引き落とされた通帳を見た時には、流石に腹が立ったけど」

 横から伸びてきた腕に肩を抱かれ、俺は首を回した。いつの間にか彩がソファの上に座っていた。俺の肩に額を押し付けて、俯いている。

 俺は彼女の胸にもたれかかった。

「同情したか?」

 彩が首を振る。

「可哀想な俺を慰めてくれるんじゃないのか?」

 さっきより激しく首を振る。

「彩……」

 彼女の腕の中で身を捩り、顔を覗き込む。と、彼女の方が先に顔を上げた。その表情は、なんとも凛々しい。

「智也のどこが可哀想なのよ!? あんな女と結婚なんてしなくて良かったじゃない。ってか! 浮気に気づかなかったとか、鈍すぎだし!」

 優しく慰めてもらえるのかと期待した俺を裏切り、彩は険しい表情で鼻息を荒くして続けた。

「十年前とは言え、滅茶苦茶ムカつくんだけど! 今でも智也を名前で呼ぶし! なにが『智也も同じことをしたと思うわよ』よ!」

 思わず、プッと吹き出してしまった。

 益井の台詞を言った彩のすまし顔が、ツボにはまった。

「いや! 笑い事じゃないし!! ほんっとムカつく!」



『ムカつく』って、二回言った。



「あっはははは……!」

「智也!」

 堪えきれなくなって腹を抱えて笑う俺の肩に、彩のパンチが飛んできた。

「だって……。今の、益井の真似もう一回やって」

「やらないから!」

「めっちゃ似てた」

「嬉しくないから!」

「やべ……。苦し……」

「智也!」

 笑い過ぎて涙が出る。

「お前……、この流れで……」

 まったく、彩は最高だ。

 俺は彩に抱きつくと、そのままソファに押し倒した。

「普通は同情して慰めるだろ」

「可哀想だなんて思ってないもの」

「ひでーの」

「智也」

 急に真顔で見つめられて、俺もつられる。

「私、益井課長、嫌いだわ」

「は?」

「智也のことにしても、仕事のやり方にしても、ムカつくし」

 三回目。

 余程、ムカついているのだろう。

「ホント、大っ嫌い」

 そう呟く彩の唇に舌を這わせると、彼女の腕が俺の首に絡んだ。同時に、彼女が唇を開いて、俺を出迎えた。

「んっ……」

 握手するように舌を絡ませ、味わうと、彩の艶っぽい声が漏れた。
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