続・最後の男

深冬 芽以

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11 彼女の本音

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 普段の声が低めなだけに、感じている声とのギャップがある。だから、興奮する。

 二十四時間前は一瞬で酔いの醒めるメッセージを受け取って、青ざめていた。それを思い出すと、今、こうして彩を抱けて良かったと思う。

 ああー……、と落胆の声が聞こえ、キスをしながらリモコンに手を伸ばした。声のする方に向けて、一番上の赤いボタンを押すと、部屋は静まり返った。

 少し乱暴にリモコンをテーブルに落とし、空いた手で彼女の胸に触れた。

 彩の指が俺の髪に絡む。

「彩……」

 唇を顎、首、鎖骨へと移動させていく。

 膨張した下半身を彼女の太腿に押し付ける。と、擦りつけるように足が動かされ、その刺激に腰を浮かせた。彼女が膝を立てて、触れてくる。

 布越しに撫でられ、さらに大きく硬くなる。

 俺は彩の肩を両手で掴むと、身体を引き起こした。

「ゴム、ベッドだから」

 俺たちは昼寝後の乱れたベッドに潜り込み、さらに乱した。

 そんなつもりはないと言っても、やっぱり慰められたんだと思う。

 抱いているのは俺なのに、抱かれているような心地よさと安心感。俺はきっと、一生、彩の包容力には敵わない。

「彩の言った通りだな」

 腰の動きを止めて言うと、彩がゆっくりと目を開いた。肩で息をしながら。

「俺は可哀想じゃない」

 彩はフフッと笑い、手を伸ばした。頬に彼女の掌の感触。熱くて、汗ばんでいて、柔らかい。

「腕時計が……」

「え?」

「壊れちゃったの」



 腕時計……?



 そう言えば、していない。確か、赤いベルトの腕時計をしていた。ブランドものなんかじゃなくて、太陽電池でも電波時計でもない。安くて普通の、時計。

「智也が選んでよ」

 彩がゆっくりと瞼を落とす。

「高価なものじゃなくていいから」

 目尻に、僅かに水滴。

「智也が選んでくれたものなら、どんなものでも嬉しいから」

 全く、彩には敵わない。

 翌日。

 俺は彩に腕時計をプレゼントした。

 これまで彩にプレゼントしたのは、ホワイトデーに書きやすいペン、クリスマスに仕事用の鞄、ホワイトデーに名刺入れ。どれも彩のリクエストで、彩が選んだ。そして、どれも一万円以下。

 高ければいいわけではないけれど、俺は不満だった。

 だから、彩の腕に俺が贈った時計が装着された時、この上なく満足した。

 シチ〇ンのク〇スシー、ペアで十二万五百八十円。

 一つ当たりで言えば、益井に贈ったネックレスよりも、俺が今使っているハミ〇トンよりも安い。が、そんなことは気にならなかった。

「ボーナス払いにしなくて良かったの?」

 揃いの腕時計をつけて店を出ると、彩が聞いた。

「部長様をなめるなよ?」

 益井の時はボーナス払いじゃなきゃ買えなかったものを、今は一回払いで買える。そんな自分も誇らしかった。
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