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12 家族とは
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義兄さんには家族がいない。
姉さんと結婚する少し前に両親一緒に事故に巻き込まれて亡くなった。義兄さんは一人っ子で、両親が亡くなったことで姉さんとの結婚を急ぎ、急ぎ過ぎて先に子供が出来てしまった。
その子を亡くした後も、二人は子供を切望した。なかなか子供が出来なかったけれど、関係が悪化することはなくて、見ていて恥ずかしいほど仲が良かった。
そんな義兄さんだから、俺を実の弟のように可愛がってくれている。
「……連れてくるよ」
「あ、真くんと亮くんも一緒にな。真心の初恋の相手に挨拶をしたいからな」と言った義兄さんの表情に穏やかさはない。
娘のこととなると、冷静ではないらしい。
「娘を持つ父親は大変だな」
そう言って義兄さんに背を向けた俺は、ジャケットのポケットからスマホを取り出していた。
彩に会いたい。
せめて、声が聞きたい。
駅のすぐそばの小さな公園には誰もいなかった。俺は一つしかないベンチに腰掛け、彩の番号に発信した。
出ないかもしれない。
妹家族が来ているのだから、賑やかにしていて着信に気が付かないかもしれない。
けれど、出るかもしれない。
呼び出し音を数え、六回目が聞こえた時、スマホを耳から離した。受話器のマークをタップしようとした時、通話時間が表示された。
慌てて、スマホを耳に当てる。
「もしもしっ?」
『智也? 今日は夏子の家に行くんじゃなかったの?』
変わりない彩の声に、身体から力が抜けた。
そんなつもりはなかったが、両親を前に身体が強張っていたらしい。
「今から行く」
両親とのことを話したくなくて、嘘を言った。
『ケーキ、買えた?』
「ああ。鯉のぼりのロールケーキ」
『真心ちゃんと勇気くん、喜ぶよ』
姉さんの家に行くなら、子供の日仕様のケーキを買って行くといい、と言ったのは彩。
プーッとクラクションの音が聞こえた。
「どこにいるんだ?」
『買い物に来たの。終わったから帰るとこ』
「そっか」
わずかな沈黙。
再びクラクション。よほど迷惑な車がいるのだろう。連休中は、道路も駐車場も事故が多い。
『……どうしたの?』
「なにが?」
『久し振りに夏子の旦那さんと飲むんでしょ?』
「……ああ。いや――」
自分でも誤魔化しきれていないのはわかっている。気持ちのどこかで、彩に俺の気鬱さを察してもらいたいと思っている。
子供だな……。
「嘘言った。姉さん家から逃げてきたんだ」
『逃げる?』
「父さんと母さんも来てて、さ」
『そう……』
何があったのか、彩は聞かない。彩の気遣いは心地良いが、もどかしくもある。
もっと、踏み込んできて欲しい。
「――家族ってなんだろうな」
『……』
「悪り……。変なこと言ったな」
『人それぞれなんじゃない?』
「え?」
『家族の在り方なんて、人それぞれだよ。みんな理想の家族みたいなものがあって、そうなれるように頑張るんじゃない?』
「理想の家族……」
姉さんと結婚する少し前に両親一緒に事故に巻き込まれて亡くなった。義兄さんは一人っ子で、両親が亡くなったことで姉さんとの結婚を急ぎ、急ぎ過ぎて先に子供が出来てしまった。
その子を亡くした後も、二人は子供を切望した。なかなか子供が出来なかったけれど、関係が悪化することはなくて、見ていて恥ずかしいほど仲が良かった。
そんな義兄さんだから、俺を実の弟のように可愛がってくれている。
「……連れてくるよ」
「あ、真くんと亮くんも一緒にな。真心の初恋の相手に挨拶をしたいからな」と言った義兄さんの表情に穏やかさはない。
娘のこととなると、冷静ではないらしい。
「娘を持つ父親は大変だな」
そう言って義兄さんに背を向けた俺は、ジャケットのポケットからスマホを取り出していた。
彩に会いたい。
せめて、声が聞きたい。
駅のすぐそばの小さな公園には誰もいなかった。俺は一つしかないベンチに腰掛け、彩の番号に発信した。
出ないかもしれない。
妹家族が来ているのだから、賑やかにしていて着信に気が付かないかもしれない。
けれど、出るかもしれない。
呼び出し音を数え、六回目が聞こえた時、スマホを耳から離した。受話器のマークをタップしようとした時、通話時間が表示された。
慌てて、スマホを耳に当てる。
「もしもしっ?」
『智也? 今日は夏子の家に行くんじゃなかったの?』
変わりない彩の声に、身体から力が抜けた。
そんなつもりはなかったが、両親を前に身体が強張っていたらしい。
「今から行く」
両親とのことを話したくなくて、嘘を言った。
『ケーキ、買えた?』
「ああ。鯉のぼりのロールケーキ」
『真心ちゃんと勇気くん、喜ぶよ』
姉さんの家に行くなら、子供の日仕様のケーキを買って行くといい、と言ったのは彩。
プーッとクラクションの音が聞こえた。
「どこにいるんだ?」
『買い物に来たの。終わったから帰るとこ』
「そっか」
わずかな沈黙。
再びクラクション。よほど迷惑な車がいるのだろう。連休中は、道路も駐車場も事故が多い。
『……どうしたの?』
「なにが?」
『久し振りに夏子の旦那さんと飲むんでしょ?』
「……ああ。いや――」
自分でも誤魔化しきれていないのはわかっている。気持ちのどこかで、彩に俺の気鬱さを察してもらいたいと思っている。
子供だな……。
「嘘言った。姉さん家から逃げてきたんだ」
『逃げる?』
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『そう……』
何があったのか、彩は聞かない。彩の気遣いは心地良いが、もどかしくもある。
もっと、踏み込んできて欲しい。
「――家族ってなんだろうな」
『……』
「悪り……。変なこと言ったな」
『人それぞれなんじゃない?』
「え?」
『家族の在り方なんて、人それぞれだよ。みんな理想の家族みたいなものがあって、そうなれるように頑張るんじゃない?』
「理想の家族……」
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