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13 軋む心
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けれど、二十分後。
私は一人でタクシーの中にいた。
追い出されたのだ。もちろん、益井課長に。
十五分経ってもトイレから戻って来ない荻野さんを心配して様子を見に行くと、彼女の姿はなかった。
総務の女性が、益井課長が荻野さんに帰るように言っていたのを聞いていた。
事実かを確認すると、益井課長は悪びれもせずに認め、私一人で謝罪に行けと言い放った。
ハッキリ言って、ムカついた。
で、まんまと挑発に乗った私は、谷主任のアドバイスも無視してタクシーに乗り込んだというわけだ。
私もまだまだだな……。
門前払い覚悟で、私は奥山商事の受付に名を名乗った。
ところが、あっさり面会を許された。
通されたのは、渡部企画部長の部屋。
「おひとりですか?」
部屋には、部長と氷川主任。
私は小さく唾を飲み、腰を直角に折った。
「うちの荻野が、大変失礼なことをしました。申し訳ありません!」
シンッと静まり返る部屋に、私の声が響く。
「本来であれば、荻野が直接謝罪に伺うべきなのですが、自分のしでかしたことに動揺していまして、お見苦しい姿を――」
「――それでも、あなたが一人で謝罪に来るのはおかしいでしょう? 千堂課長の指示ですか?」
静かに、けれど威厳のある低い声で言ったのは、部長。
「千堂とはすぐに連絡がつきませんでしたので、私の独断でお伺いさせていただきました」
「益井課長はどうしたんです? 課が違うとはいえ、我が社の担当でしょう?」
ですよね……。
当然の反応に、私は言葉を見失った。
部長がため息をつき、主任と顔を見合わせる。
「予想はしていましたが、まさか本当にあなた一人で謝罪に来るとは……」
「申し訳ありません」
「失礼ですが、一担当者であるあなたの謝罪一つで済むと思われるのは、心外です。堀藤さん個人がどうというわけではありません。むしろ、この状況で一人で来られた勇気と誠意には敬服します。が、我が社を軽んじているとしか思えない御社の対応には、納得できません」
「申し訳……ありません」
私に言えるのは、それだけだった。
部長の仰る通りだ。
「今回の荻野さんの言動は、指導係であるあなたの謝罪で済まされるような問題ではありませんよ。彼の結婚に傷でもついたら、どう責任を取られるつもりですか」
「……仰る通りです」
三日前の、金曜日。
同僚と飲んでいた荻野さんは、偶然、担当する奥山商事の企画課主任の男性と会った。すでにほろ酔い気分だった荻野さんは、主任と、主任と一緒にいた数名の男性を誘い、一緒に飲んだ。
そこまでは、まぁ、よくある話。問題はそこからだ。
解散しようとした主任の腕を掴み、こともあろうにホテルに誘ったのだ。同僚たちの前で。
丁重に断る主任に対し、荻野さんは『それでも男か!』と管を巻き、抱きついたらしい。
荻野さんは同僚によってタクシーに押し込まれ、強制帰宅となったのだが、一部始終を見ていた主任の友人が帰宅後に妻にその話をして、妻は友人にその話をした。最悪なことに、その友人とは主任の婚約者だった。
私は一人でタクシーの中にいた。
追い出されたのだ。もちろん、益井課長に。
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事実かを確認すると、益井課長は悪びれもせずに認め、私一人で謝罪に行けと言い放った。
ハッキリ言って、ムカついた。
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シンッと静まり返る部屋に、私の声が響く。
「本来であれば、荻野が直接謝罪に伺うべきなのですが、自分のしでかしたことに動揺していまして、お見苦しい姿を――」
「――それでも、あなたが一人で謝罪に来るのはおかしいでしょう? 千堂課長の指示ですか?」
静かに、けれど威厳のある低い声で言ったのは、部長。
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ですよね……。
当然の反応に、私は言葉を見失った。
部長がため息をつき、主任と顔を見合わせる。
「予想はしていましたが、まさか本当にあなた一人で謝罪に来るとは……」
「申し訳ありません」
「失礼ですが、一担当者であるあなたの謝罪一つで済むと思われるのは、心外です。堀藤さん個人がどうというわけではありません。むしろ、この状況で一人で来られた勇気と誠意には敬服します。が、我が社を軽んじているとしか思えない御社の対応には、納得できません」
「申し訳……ありません」
私に言えるのは、それだけだった。
部長の仰る通りだ。
「今回の荻野さんの言動は、指導係であるあなたの謝罪で済まされるような問題ではありませんよ。彼の結婚に傷でもついたら、どう責任を取られるつもりですか」
「……仰る通りです」
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