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16 俺を変えた女
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しおりを挟む『――てわけで、堀藤さんが一人で謝罪に行ったんですけど、それで納まるような話でもなくて。けど、益井課長は無関係を決め込んで――』
彩から謹慎になったと聞いて、俺はすぐに谷に電話をかけた。谷は、俺が彩から詳しく聞いていないことに驚いていた。
当然だ。
こんな大事なことを恋人に、しかも、社内の人間でもある俺に言わないなんて、さすがに無視できない。
『堀藤さんも最初は黙ってたんですけど、息子さんが怪我をしたって連絡が入ったのに仕事を優先させようとする益井課長にキレちゃって――』
「怪我? 誰が?」
『え? あ、中学校からの電話だったみたいなんで、上のお子さん?』
真が怪我をしたなんて、聞いていない。
大したことがなかったから言わなかったのか、謹慎もあって言いにくかったのか。どちらだとしても、スルー出来ることではないが。
『溝口部長』
「……ん? ああ」
『益井課長の堀藤さんへの言動は、普通じゃないですよ。部長との過去がどうとか、そんなレベルの話じゃなく、尋常じゃないと思います』
「ああ。……だな」
俺もずっと考えていた。
益井のしていることは、俺への未練かとも思える言動だが、そもそも十年前に俺を裏切ったのはあいつだ。それに、人一倍プライドの高い女だ。自分と別れたせいで女運がなくなったのなら可哀想だ、くらいの嫌味は言うかもしれないが、自分を惨めにさせるような言動は、らしくない。
『正直、この程度の騒ぎで終わる気がしません』
「どういう意味だ?」
『そのまんまですよ。今回は荻野さんが原因でしたけど、そのうち益井課長本人が何かやらかしそうな気がします』
谷の予感が外れてくれることを、願った。
その週、彩から真の怪我について触れることはなかった。
彩のことはもちろん、法事で両親と顔を合わせることもあって、かなり苛立っていた。
だから、急に益井が釧路支社に現れた時、思わず彩とのことを問い詰めそうになった。だが、益井の方は俺が知っていることを知らないのか、全く話題にしてこなかった。
「五百程度を安価で引き受けてくれる工場を探しているの」
そう言って、益井は釧路支社で取引のある工場のファイルを見たがった。
情報は社内のデータベースで管理されていて、誰でも閲覧できる。それなのに、わざわざ釧路まで来たのは、彩が謹慎中なのをいいことに、俺にちょっかいを出すつもりなのではと、勘ぐった。
実際、益井から食事に誘われたし、俺のアパートに泊めて欲しいとさえ言った。
俺は営業部全員と益井を連れて居酒屋に行き、駅前のホテルを一部屋、会社の名前で予約した。駅に行く部下に益井をホテルに案内するように頼み、俺はさっさと帰った。
今となっては、益井の誘いに乗った振りをして、探るべきだった。
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