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17 一難去ってまた一難
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「ごめ――」
『本当はすげぇ会いたいし、カップ麺なんかより彩の飯が食いたいけど、マジで真に嫌われたくないから、今は我慢するわ』
ぶっきら棒な、ちょっと拗ねてる子供みたいな言い方。
恰好つけて、理解ある言い方をされるよりずっと、気持ちが楽になった。
ビリッとカップ麺の蓋が発泡スチロールから剥がされる短い音がした後、ボタボタボタッ、と水が何かにぶつかる音がした。
「何、食べるの?」
『やき弁』
「こんな時間にやきそば弁当って、もたれない?」
『コンビニで目について、無性に食べたくなってさ』
「その気持ちはわかるけど」
北海道民にお馴染みのやきそば弁当は、真と亮も大好きで、かなりの割合で我が家にストックされている。けれど、食べたいと思った時にはないことも多く、そうなるとやけに食べたくなる。
そして、電話越しに智也がやきそば弁当を混ぜる音を聞かされ、鼻の奥に濃厚なソースの香りを感じた。
「私も食べたくなっちゃったじゃない」
『食えば?』
「こんな時間に食べられるわけないじゃない!」
ズルズルズルッ、と麺を吸い込む音。
「なんか、ムカつくわぁ」
『なんれだよ!?』
「食べてるの聞いてるとお腹空いちゃうから、寝る! お休み」
『彩!』
「ん?」
ゴクゴクッ、と電話越しにもわかる智也がビールを飲む音。
『――大丈夫か?』
「うん?」
『益井のこと……噂にはなるだろ』
「ああ……、うん」
『冨田と千堂が事実を伝えるだろうけど、お前が益井にパワハラを受けていたのはみんなも知ってるんだから、今カノが元カノを追い出した、みたいに面白おかしく噂されるだろうし』
「うん……。うん?」
あれ? と思った。
「会社の人たちに私と智也のことがバレたの、話したっけ?」
噂にはなっていたけれど、決定的に認める形になったのは、私が智也を『私の男』だと口走ってしまったから。もちろん、私はそのことを智也には言っていない。
恥ずかしすぎて、言えるはずがない。
『……谷から聞いた』
「あ、そうなんだ。ごめんね? バラすつもりはなかったんだけど、ちゃんと否定もしなかったから――」
『お前がなんて言ったかも、聞いた』
「――……えっ!?」
あれ?
あの時、谷主任もいたっけ!?
いた……か。
……いたな。
電話で良かった。
恥ずかしさのあまり、かなり変な顔をしている。
いい年をして、就業時間中の社内で、同僚の前で、年下の上司との交際を公言してしまった。それも、元カノの挑発に乗って。
「……忘れて」
『無理』
さっきの仕返しのように、智也が即答した。
『生で聞きたかったな』
「笑い事じゃないから! 本気で恥ずかし――」
『笑ってねーよ。本気で嬉しかった』
そんな風に言われると、余計に恥ずかしくなる。
「ホント、忘れて……」
『絶対、忘れない』
「もう……サイアク」
『俺は最高だけどな』
嬉しそうに、少し弾んだ彼の声に、恥ずかしいけれど、忘れて欲しいけれど、智也が喜んでくれているのなら、まぁいいか、と思った。
口元がだらしなくにやけるのを止められない。
会いたい。触れたい。けれど、今は電話で良かった。そう、思った。
『本当はすげぇ会いたいし、カップ麺なんかより彩の飯が食いたいけど、マジで真に嫌われたくないから、今は我慢するわ』
ぶっきら棒な、ちょっと拗ねてる子供みたいな言い方。
恰好つけて、理解ある言い方をされるよりずっと、気持ちが楽になった。
ビリッとカップ麺の蓋が発泡スチロールから剥がされる短い音がした後、ボタボタボタッ、と水が何かにぶつかる音がした。
「何、食べるの?」
『やき弁』
「こんな時間にやきそば弁当って、もたれない?」
『コンビニで目について、無性に食べたくなってさ』
「その気持ちはわかるけど」
北海道民にお馴染みのやきそば弁当は、真と亮も大好きで、かなりの割合で我が家にストックされている。けれど、食べたいと思った時にはないことも多く、そうなるとやけに食べたくなる。
そして、電話越しに智也がやきそば弁当を混ぜる音を聞かされ、鼻の奥に濃厚なソースの香りを感じた。
「私も食べたくなっちゃったじゃない」
『食えば?』
「こんな時間に食べられるわけないじゃない!」
ズルズルズルッ、と麺を吸い込む音。
「なんか、ムカつくわぁ」
『なんれだよ!?』
「食べてるの聞いてるとお腹空いちゃうから、寝る! お休み」
『彩!』
「ん?」
ゴクゴクッ、と電話越しにもわかる智也がビールを飲む音。
『――大丈夫か?』
「うん?」
『益井のこと……噂にはなるだろ』
「ああ……、うん」
『冨田と千堂が事実を伝えるだろうけど、お前が益井にパワハラを受けていたのはみんなも知ってるんだから、今カノが元カノを追い出した、みたいに面白おかしく噂されるだろうし』
「うん……。うん?」
あれ? と思った。
「会社の人たちに私と智也のことがバレたの、話したっけ?」
噂にはなっていたけれど、決定的に認める形になったのは、私が智也を『私の男』だと口走ってしまったから。もちろん、私はそのことを智也には言っていない。
恥ずかしすぎて、言えるはずがない。
『……谷から聞いた』
「あ、そうなんだ。ごめんね? バラすつもりはなかったんだけど、ちゃんと否定もしなかったから――」
『お前がなんて言ったかも、聞いた』
「――……えっ!?」
あれ?
あの時、谷主任もいたっけ!?
いた……か。
……いたな。
電話で良かった。
恥ずかしさのあまり、かなり変な顔をしている。
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「……忘れて」
『無理』
さっきの仕返しのように、智也が即答した。
『生で聞きたかったな』
「笑い事じゃないから! 本気で恥ずかし――」
『笑ってねーよ。本気で嬉しかった』
そんな風に言われると、余計に恥ずかしくなる。
「ホント、忘れて……」
『絶対、忘れない』
「もう……サイアク」
『俺は最高だけどな』
嬉しそうに、少し弾んだ彼の声に、恥ずかしいけれど、忘れて欲しいけれど、智也が喜んでくれているのなら、まぁいいか、と思った。
口元がだらしなくにやけるのを止められない。
会いたい。触れたい。けれど、今は電話で良かった。そう、思った。
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