続・最後の男

深冬 芽以

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19 すれ違う未来

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 智也は未だに、千堂課長に過剰反応する。

 智也と付き合う前に千堂課長と何があったか、具体的に話したことはないし、聞かれたこともない。

 けれど、千堂課長に対しての嫉妬心は半端なく、私が課長の名前を出すと不機嫌になる。

 課長には凪子さんがいて、凪子さんも私と課長のことを承知で、私と親しくしてくれている。

 何が不満なのか。

 そう思う反面、智也が嫉妬してくれることが嬉しくもある。

『しっかし……、冨田と千堂が結婚か』

「会社の人たち、ビックリするだろうねぇ」

『ビックリなんてもんじゃないだろ』

「しかも、デキ婚」

『世の中、わかんねーな』

 社内で二人の関係を知っているのは、多分、私と谷主任だけ。その主任も、凪子さんの妊娠はまだ知らない。

 驚くみんなを冷静に観察できるのは、ちょっとした優越感だ。

「お祝い、どうしよっか」

『冨田に、婚姻届にサインさせるのが先だろ』

「今頃、サインしてるかもよ? それを千堂課長が知るのはいつか、わからないけど」

『……なるほど? 千堂がいつまで『待て』できるか、見ものだな』

「他人事だと思って……」

 智也は『待て』なんて出来ないくせに、と思った。



 いや、そうでもないか……?



 肝心なところで弱腰なところがある。

『そういや、お前の体調は大丈夫か?』

「ん?」

『頭が痛いとか腰が痛いとか言ってたろ』

「ああ、うん。年かねぇ」

 私は、ははは、と笑った。

『続くようなら病院、行けよ』

「うん? 大丈夫だよ」

『いや、マジで』

「腰痛は割と昔っからだし――」

『……』

「智也?」

 本気で病気の心配をしているのだろうか。

 そうなら申し訳ないと思った。

「腰痛なんて、湿布貼っとけば――」

『――湿布貼ってセックスとか、ヤだろ』



 そっちかいっ!!



 私の身体を真剣に心配してくれていると勘違いした自分が恥ずかしい。と同時に、がっかりもした。

「……シなきゃいいじゃない」なんて、意地悪なことを言ってみる。

『そういうこと、言うんだ?』

 二か月前にセックスしてから、次に会う予定は来月だから、四か月くらいシないことになる。

 遠距離を始めてから、こんなに空いたことはなかったかもしれない。

『お前はシなくても、いーんだ』

「……別に」

『別に、なんだよ?』

 智也が何を言わせようとしているのかは、わかる。二択で。

 どちらでもいいのだろうけれど、言ってしまったら負けのような気になった。

「……それより――」

『あーや』

 ずるい。

 智也にそう呼ばれると、弱いことを知っていて、わざとだ。

「言いたくない」と、私は反抗して見せた。

「どーせ私は湿布臭いし?」

『そんなこと言ってねーだろ』

「……」

『彩』

「……」

『あーや』

 鼓膜を震わす甘い声に、全身が毒される。
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