続・最後の男

深冬 芽以

文字の大きさ
202 / 231
22 結婚の条件

しおりを挟む
「そんなに彩が欲しいですか?」

「はい!」

「親ばかなことを言っておいてなんですけど、面倒臭いでしょう? いつもは自信なさ気なのに、急に強気になってみたり、頑固だし、意地っ張りだし、理屈っぽいし。お世辞にも美人でもスタイルがいいわけでもない。家庭的ではあるけれど、それは、長く専業主婦をしてきたからで、ズボラなところもあるし。男の子の親なだけあって、口が悪くなることもあるし」

 正確に娘を分析していて、適当なフォローも出来ない。

 要するに、俺が彩のどこを好きかと聞かれているのだろう。

 調子のいい言葉を並べることは簡単だが、きっとそんなことでは信頼を得られないと思った。

 ここは、彩を見習わずに正直にあるべきだ。
「正直に言って、面倒臭いです。何を考えているのかわからないし、言ってもくれない。別れ話も、空港で言い逃げだったし。すごくムカつきました。だけど、どうしても別れる気にはなれなかった。……彩がいなかった頃のことが、思い出せないんです。ずっと一人でも平気だったのに、どうして平気だったのか思い出せない。今も……、家族じゃないから会えないって受付で言われて、どうしてもっと早くプロポーズしなかったのかって……後悔しました。家族なら、堂々と会いに行けたのに……」

 さすがに、お母さんの前で泣くのは恥ずかしすぎて、俯いたまま歯を食いしばった。

 病院の受付で、『家族ではない』ことを理由に門前払いされたショックとか悔しさとか、無力感が拭えない。

「真と亮の父親が、再婚しました」

「え――?」

 歯を食いしばったまま顔を上げると、お母さんがコーヒーをすすっていた。すでに、二杯目。

「若い女に子供が出来て結婚したそうです。それで、養育費の減額を頼まれたんです。しかも、あの男は新しい嫁を子供たちに合わせました。で、その嫁が言ったそうです。『進学の費用は新しいお父さんに出してもらえ』と」

『高校とか大学とか、俺と亮にお金かかるよ』



 それで、真はあんなことを言ったのか。

 

 子供になんてことを言うんだ、と思った。

 そんなことを聞いたら、彩のことだ。智也に学費を出してもらうなんて申し訳ない、とでも思ったろう。

「そんな状態で俺と別れるとか、彩らしいですね」

「ホント、バカでしょう? 私なら、逆プロポーズしてるところなのに。……けど、そんな時に健康診断の結果がきて、益々考えこんじゃったのね」

「バツイチ子持ちの上に病気の女なんて、とか?」

「そうそう! 別に命を縮めるような病気でもないのに」

 それでも、彩は思ったはずだ。

 また病気になったらどうしよう、とか、今度は命に係わる病気だったら、とか。

 あれこれ考えて辿り着いた答えが、迷惑をかける前に別れよう、だった。

 彩らしいと言えば、らしい。が、到底そんな言葉では片づけられない。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【ルーズに愛して】指輪を外したら、さようなら

深冬 芽以
恋愛
 インテリアデザイナーの相川千尋《あいかわちひろ》は、よく似た名前の同僚で妻と別居中の有川比呂《ありかわひろ》と不倫関係にある。  ルールは一つ。  二人の関係は、比呂の離婚が成立するまで。  その意味を深く考えずに関係を始めた比呂だったが、今となっては本気で千尋を愛し始めていた。  だが、比呂の気持ちを知っても、頑なにルールを曲げようとしない千尋。  千尋と別れたくない比呂は、もう一つのルールを提案する。  比呂が離婚しない限り、絶対に別れない__。 【ルーズに愛して】シリーズ ~登場人物~  相川千尋《あいかわちひろ》……O大学ルーズサークルOG                 トラスト不動産ホームデザイン部インテリアデザイン課主任                   有川比呂《ありかわひろ》……トラスト不動産ホームデザイン部設計課主任                千尋の同僚                結婚四年、別居一年半の妻がいる  谷龍也《たにたつや》……O大学ルーズサークルOB              |Free Style Production《フリー スタイル プロダクション》営業二課主任  桑畠《くわはた》あきら……O大学ルーズサークルOG               市役所勤務、児童カウンセラー  小笠原陸《おがさわらりく》……O大学ルーズサークルOB                 |Empire HOTEL《エンパイアホテル》支配人    小笠原春奈《おがさわらはるな》……陸の妻                   |Empire HOTEL《エンパイアホテル》のパティシエ  新田大和《にったやまと》……O大学ルーズサークルOB                新田設計事務所副社長                五年前にさなえと結婚  新田《にった》さなえ……O大学ルーズサークルOG  新田大斗《にっただいと》……大和とさなえの息子  亀谷麻衣《かめやまい》……O大学ルーズサークルOG               楠行政書士事務所勤務               婚活中  鶴本駿介《つるもとしゅんすけ》……楠行政書士事務所勤務

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

やさしいキスの見つけ方

神室さち
恋愛
 諸々の事情から、天涯孤独の高校一年生、完璧な優等生である渡辺夏清(わたなべかすみ)は日々の糧を得るために年齢を偽って某所風俗店でバイトをしながら暮らしていた。  そこへ、現れたのは、天敵に近い存在の数学教師にしてクラス担任、井名里礼良(いなりあきら)。  辞めろ辞めないの押し問答の末に、井名里が持ち出した賭けとは?果たして夏清は平穏な日常を取り戻すことができるのか!?  何て言ってても、どこかにある幸せの結末を求めて突っ走ります。  こちらは2001年初出の自サイトに掲載していた小説です。完結済み。サイト閉鎖に伴い移行。若干の加筆修正は入りますがほぼそのままにしようと思っています。20年近く前に書いた作品なのでいろいろ文明の利器が古かったり常識が若干、今と異なったりしています。 20年くらい前の女子高生はこんな感じだったのかー くらいの視点で見ていただければ幸いです。今はこんなの通用しない! と思われる点も多々あるとは思いますが、大筋の変更はしない予定です。 フィクションなので。 多少不愉快な表現等ありますが、ネタバレになる事前の注意は行いません。この表現ついていけない…と思ったらそっとタグを閉じていただけると幸いです。 当時、だいぶ未来の話として書いていた部分がすでに現代なんで…そのあたりはもしかしたら現代に即した感じになるかもしれない。

なし崩しの夜

春密まつり
恋愛
朝起きると栞は見知らぬベッドの上にいた。 さらに、隣には嫌いな男、悠介が眠っていた。 彼は昨晩、栞と抱き合ったと告げる。 信じられない、嘘だと責める栞に彼は不敵に微笑み、オフィスにも関わらず身体を求めてくる。 つい流されそうになるが、栞は覚悟を決めて彼を試すことにした。

Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ 慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。    その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは 仕事上でしか接点のない上司だった。 思っていることを口にするのが苦手 地味で大人しい司書 木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)      × 真面目で優しい千紗子の上司 知的で容姿端麗な課長 雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29) 胸を締め付ける切ない想いを 抱えているのはいったいどちらなのか——— 「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」 「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」 「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」 真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。 ********** ►Attention ※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです) ※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。 ※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

年下研修医の極甘蜜愛

虹色すかい
恋愛
医局秘書として市内の病院に勤務する廣崎彩27歳。普段はスマートに仕事をこなすクールな彼女だが、定期的にやって来る「眠れない夜」に苦しんでいる。 そんな彩に、5年越しの思いを寄せる3歳年下の藤崎仁寿。人当たりがよくて優しくて。仔犬のように人懐っこい笑顔がかわいい彼は、柔和な見た目とは裏腹に超ポジティブで鋼のような心を持つ臨床研修医だ。 病気や過去の経験から恋愛に積極的になれないワケありOLとユーモラスで心優しい研修医の、あたたかくてちょっと笑えるラブストーリー。 仁寿の包み込むような優しさが、傷ついた彩の心を癒していく――。 シリアスがシリアスにならないのは、多分、朗らかで元気な藤崎先生のおかげ♡ ***************************** ※他サイトでも同タイトルで公開しています。

Home, Sweet Home

茜色
恋愛
OL生活7年目の庄野鞠子(しょうのまりこ)は、5つ年上の上司、藤堂達矢(とうどうたつや)に密かにあこがれている。あるアクシデントのせいで自宅マンションに戻れなくなった藤堂のために、鞠子は自分が暮らす一軒家に藤堂を泊まらせ、そのまま期間限定で同居することを提案する。 亡き祖母から受け継いだ古い家での共同生活は、かつて封印したはずの恋心を密かに蘇らせることになり・・・。 ☆ 全19話です。オフィスラブと謳っていますが、オフィスのシーンは少なめです 。「ムーンライトノベルズ」様に投稿済のものを一部改稿しております。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

処理中です...