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23 決別、そして、拉致
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「堀藤彩さんと結婚する」
俺は言った。
「彼女には中学生と小学生の息子がいるから、結婚と同時に二人と養子縁組して、俺が父親になる」
姉さんは嬉しそうに目を見開いて、けれど、すぐに伏せた。隣の両親の形相を見れば、仕方がない。
彩の入院を知った翌日。
俺は釧路に戻り、有休を取りやめて働いた。
そして、翌日の午後には再び札幌に降り立ち、その足で姉さんの家に来た。
姉さんに頼んで、両親を呼んでもらっていた。
「誰になんと言われようと、絶対だ」
息子を見る目とは思えない、血走った眼球を真っ直ぐ見据えて、言った。
彩の両親、真、亮は結婚を認めてくれた。
今までの俺なら、それで良かった。
事後報告どころか、姉さんから伝えられなければ両親は俺の結婚を知ることもなかったはずだ。
だが、今の俺はそれではダメだと思う。
彩に両親のことを聞かれて口ごもったり、誤魔化したりはしたくない。
「何度言ったらわかるの。あんな女と結婚しても、智也には何の――」
「――メリットだらけだ」と、俺は母さんの言葉を遮った。
「好きな女と結婚できるんだ。十分だろ」
「なに、子供染みたことを言っているの! 結婚はそんなに――」
「――認めてもらおうとは思っていない。報告だけだ」
「智也!」
ヒステリックな母親の金切り声に、いつもほどの苛立ちを感じなかったのには、自分でも驚いた。
最後だと思えば、なんてことはない。
「父さんと母さんを蔑ろにするのは、彩が嫌がるだろうから報告しただけだ。認めてもらおうとも、祝福してもらおうとも思っていない。だから、俺たちに関わるのもやめてくれ。戸籍上では縁を切れないのが残念だが、相続放棄の書類にでも何でもサインをするから、今日から子供は姉さんだけだと思ってくれ」
彩の『私の為に両親と縁を切る、とか重い』というのは本心だったかもしれない。
だが、それは、正確には『重い』ではなく『苦しい』だったはず。
自分のせいで俺が両親と仲違いするのを心苦しく思っていたのは間違いないだろう。
けれど、『彩の為』ではなく『俺の為』だったら?
例え、こうして顔を合わせるのがこの世で最後だったとしても、上っ面だけの優しい言葉をかける気にもなれない。
両親との決別を前にしても、俺が想うのは彩のことばかりだった。
術後の経過は良いだろうか。
立って歩けるようになったろうか。
ちゃんと食事が出来ているだろうか。
病院のベッドで、心細い想いをしていないだろうか……。
「そこまで、その、彩さんが好きか」
黙って聞いていた父さんが、言った。
「ああ」と、俺は端的に答えた。
「そうか」と、父さんも端的に呟いた。
それから、小さくため息をついて、今度はハッキリと言った。
「好きにしたらいい」
「お父さん!」
母さんの怒りの矛先が、父さんに変わった。
「私は許さないわよ! あんな女、冗談じゃ――」
「いい加減にしろ!」
父さんに一喝されて、母さんの口が閉じた。
「子供を放って、好き勝手してきたツケだ。諦めろ」
自覚はあったらしい。
「嫌よ! 何の為に会社を大きくしてきたの!? いずれ、智也が継ぐと思うから、ここまでやって来たんでしょう! 智也が継がなければ、全部片山さんに持っていかれるのよ!? 冗談じゃないわ!!」
片山さんとは、母さんたちの共同経営者。
俺は、その片山さんの娘と見合いさせられた。
「仕方がないだろう! 片山は俺たちより若いし、娘も経営に関わっている。智也に継ぐ気がない以上、会社は片山に任せて――」
「ふざけないで! 身を粉にして働いたのは、片山さんの為じゃないわ!!」
俺は言った。
「彼女には中学生と小学生の息子がいるから、結婚と同時に二人と養子縁組して、俺が父親になる」
姉さんは嬉しそうに目を見開いて、けれど、すぐに伏せた。隣の両親の形相を見れば、仕方がない。
彩の入院を知った翌日。
俺は釧路に戻り、有休を取りやめて働いた。
そして、翌日の午後には再び札幌に降り立ち、その足で姉さんの家に来た。
姉さんに頼んで、両親を呼んでもらっていた。
「誰になんと言われようと、絶対だ」
息子を見る目とは思えない、血走った眼球を真っ直ぐ見据えて、言った。
彩の両親、真、亮は結婚を認めてくれた。
今までの俺なら、それで良かった。
事後報告どころか、姉さんから伝えられなければ両親は俺の結婚を知ることもなかったはずだ。
だが、今の俺はそれではダメだと思う。
彩に両親のことを聞かれて口ごもったり、誤魔化したりはしたくない。
「何度言ったらわかるの。あんな女と結婚しても、智也には何の――」
「――メリットだらけだ」と、俺は母さんの言葉を遮った。
「好きな女と結婚できるんだ。十分だろ」
「なに、子供染みたことを言っているの! 結婚はそんなに――」
「――認めてもらおうとは思っていない。報告だけだ」
「智也!」
ヒステリックな母親の金切り声に、いつもほどの苛立ちを感じなかったのには、自分でも驚いた。
最後だと思えば、なんてことはない。
「父さんと母さんを蔑ろにするのは、彩が嫌がるだろうから報告しただけだ。認めてもらおうとも、祝福してもらおうとも思っていない。だから、俺たちに関わるのもやめてくれ。戸籍上では縁を切れないのが残念だが、相続放棄の書類にでも何でもサインをするから、今日から子供は姉さんだけだと思ってくれ」
彩の『私の為に両親と縁を切る、とか重い』というのは本心だったかもしれない。
だが、それは、正確には『重い』ではなく『苦しい』だったはず。
自分のせいで俺が両親と仲違いするのを心苦しく思っていたのは間違いないだろう。
けれど、『彩の為』ではなく『俺の為』だったら?
例え、こうして顔を合わせるのがこの世で最後だったとしても、上っ面だけの優しい言葉をかける気にもなれない。
両親との決別を前にしても、俺が想うのは彩のことばかりだった。
術後の経過は良いだろうか。
立って歩けるようになったろうか。
ちゃんと食事が出来ているだろうか。
病院のベッドで、心細い想いをしていないだろうか……。
「そこまで、その、彩さんが好きか」
黙って聞いていた父さんが、言った。
「ああ」と、俺は端的に答えた。
「そうか」と、父さんも端的に呟いた。
それから、小さくため息をついて、今度はハッキリと言った。
「好きにしたらいい」
「お父さん!」
母さんの怒りの矛先が、父さんに変わった。
「私は許さないわよ! あんな女、冗談じゃ――」
「いい加減にしろ!」
父さんに一喝されて、母さんの口が閉じた。
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自覚はあったらしい。
「嫌よ! 何の為に会社を大きくしてきたの!? いずれ、智也が継ぐと思うから、ここまでやって来たんでしょう! 智也が継がなければ、全部片山さんに持っていかれるのよ!? 冗談じゃないわ!!」
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「仕方がないだろう! 片山は俺たちより若いし、娘も経営に関わっている。智也に継ぐ気がない以上、会社は片山に任せて――」
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