続・最後の男

深冬 芽以

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「きっと、子供が出来たらお前を取られると思ってんじゃないか? ああ見えて、まだまだ――」

「――智也! 私は――」

 本当のことを、告げるべきだ。

 本気で結婚を、と望んでくれているのなら、私も本気で、結婚出来ない理由を告げるべきだ。

 そう思ったのに、智也は言わせてくれない。

「お父さんと、真と約束したから、子供は作らない」

「違う、智也――」

 智也が立ち上がり、私を抱き締めた。

 苦しいほど、強く。

 けれど、傷を労わってくれているのがわかる。

「男と男の約束だ。絶対に、守る。それに、真と亮がいれば十分だ」

「智也!」

 ちゃんと、言わなければ。そう思って、智也の腕から逃れようとするが、出来ない。

「まぁ、カッコいいこと言っても、俺も彩に構ってもらえなくなるのが嫌なだけなんだけどな?」

 言うまでもないのだろう。



 智也は、知ってる――――。



 お母さんから、聞いていないはずがない。



 知っていて、それでも…………。



 私は、縋るように、智也の背中に腕を回した。

「とも……や……」

「愛してるよ、彩。お前がいてくれたら、いい」

「ふ……」

 私のすすり泣く声が漏れ、智也が私の額にチュッと音を立てて口づけた。



「だから、俺との子供は諦めてくれ」



「……ううっ……」

 嗚咽を止めるなんて、出来なかった。

 智也は、黙って私を抱き締めてくれていた。

 頭を、頬を、肩を、背中を撫でてくれた。

 長い時間、ダイニングの椅子に座っているのはツラいだろうと、ソファまで手を引いてくれた。

 それから、ソファの上で、また抱き締めてくれた。

 どのくらい、そうして智也にもたれていたのか、泣き疲れてほんの一瞬意識が遠のいた。ハッとして瞼を持ち上げる。

 規則正しく音を刻む智也の鼓動が、心地良い。

 けれど、長時間同じ体勢でいるのは、まだツラくて、私は傷に手を添えて身体を起こした。

「大丈夫か?」

 心配そうに私の顔を覗き込む、智也。

 会社では決して見せることのない、不安気な表情。

「大丈夫」

 そう言ったものの、大丈夫ではなかった。

 引き攣るような、痺れにも似た痛み。

「ベッドに行こう」

 私は首を振る。

「ちゃんと、話すから」

「今じゃなくても――」

 頑なに首を振る私に、智也はそれ以上は言わなかった。代わりに、ソファで横になるように言い、ベッドからタオルケットを持って来てくれた。

 私はソファに横になり、智也の太腿に頭をのせた。

 智也は私の髪を指に絡めたり、掌で頭を撫でたりして、私が話し出すのを待ってくれた。

 どう切り出すか少し考えて、だけど、上手くまとまらず、とにかく思うままを話そうと思い直した。

 智也は心のままを話してくれた。

 私もそれに応えたい。

「私が先に死んだらどうなるんだろう……って怖くなったの」

「え?」

「手術が必要だって言われた時、私が死んだら子供たちはどうなるんだろうって怖くなったの」

 智也の手が頭から頬に下りて来て、私はその彼の手に触れた。指と指が絡む。
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