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24 願い
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しおりを挟む「きっと、子供が出来たらお前を取られると思ってんじゃないか? ああ見えて、まだまだ――」
「――智也! 私は――」
本当のことを、告げるべきだ。
本気で結婚を、と望んでくれているのなら、私も本気で、結婚出来ない理由を告げるべきだ。
そう思ったのに、智也は言わせてくれない。
「お父さんと、真と約束したから、子供は作らない」
「違う、智也――」
智也が立ち上がり、私を抱き締めた。
苦しいほど、強く。
けれど、傷を労わってくれているのがわかる。
「男と男の約束だ。絶対に、守る。それに、真と亮がいれば十分だ」
「智也!」
ちゃんと、言わなければ。そう思って、智也の腕から逃れようとするが、出来ない。
「まぁ、カッコいいこと言っても、俺も彩に構ってもらえなくなるのが嫌なだけなんだけどな?」
言うまでもないのだろう。
智也は、知ってる――――。
お母さんから、聞いていないはずがない。
知っていて、それでも…………。
私は、縋るように、智也の背中に腕を回した。
「とも……や……」
「愛してるよ、彩。お前がいてくれたら、いい」
「ふ……」
私のすすり泣く声が漏れ、智也が私の額にチュッと音を立てて口づけた。
「だから、俺との子供は諦めてくれ」
「……ううっ……」
嗚咽を止めるなんて、出来なかった。
智也は、黙って私を抱き締めてくれていた。
頭を、頬を、肩を、背中を撫でてくれた。
長い時間、ダイニングの椅子に座っているのはツラいだろうと、ソファまで手を引いてくれた。
それから、ソファの上で、また抱き締めてくれた。
どのくらい、そうして智也にもたれていたのか、泣き疲れてほんの一瞬意識が遠のいた。ハッとして瞼を持ち上げる。
規則正しく音を刻む智也の鼓動が、心地良い。
けれど、長時間同じ体勢でいるのは、まだツラくて、私は傷に手を添えて身体を起こした。
「大丈夫か?」
心配そうに私の顔を覗き込む、智也。
会社では決して見せることのない、不安気な表情。
「大丈夫」
そう言ったものの、大丈夫ではなかった。
引き攣るような、痺れにも似た痛み。
「ベッドに行こう」
私は首を振る。
「ちゃんと、話すから」
「今じゃなくても――」
頑なに首を振る私に、智也はそれ以上は言わなかった。代わりに、ソファで横になるように言い、ベッドからタオルケットを持って来てくれた。
私はソファに横になり、智也の太腿に頭をのせた。
智也は私の髪を指に絡めたり、掌で頭を撫でたりして、私が話し出すのを待ってくれた。
どう切り出すか少し考えて、だけど、上手くまとまらず、とにかく思うままを話そうと思い直した。
智也は心のままを話してくれた。
私もそれに応えたい。
「私が先に死んだらどうなるんだろう……って怖くなったの」
「え?」
「手術が必要だって言われた時、私が死んだら子供たちはどうなるんだろうって怖くなったの」
智也の手が頭から頬に下りて来て、私はその彼の手に触れた。指と指が絡む。
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