続・最後の男

深冬 芽以

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25 家族

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「新築で探さないのか?」

 千堂がトイレに立っている間に、冨田――千堂の嫁に聞いた。

「一気に二人生まれるのよ? 何から何まで二人同時よ? 新築なんて贅沢言ってられないわよ」と、千堂の嫁はわずかに膨らんだ腹を擦りながら言った。

 確かに。

 うちの会社は、給料は決して安くないが、それでも双子を育てていくとなると大変だろう。

「ってか、彩は知ってるの?」

「いや。決まってからにしようと思って」

「あんたね! 結婚したんならこのマンションも夫婦の共有財産よ? 売ることも、売値も、ちゃんと相談しなきゃ」

「彩は親しい相手に高値で交渉できるタイプじゃないからな」

「確かに。じゃ、やっぱり彩を交えて話し合いましょ?」

 千堂の嫁にやり込められてはたまらない。俺だって、次なる住まいへの資金は大事だ。

「結納金代わりだ。俺が交渉させてもらう」

 俺と千堂の嫁との価格交渉は一時間ほど続いたが、腹の中の子供が空腹を訴えたため、今日は持ち越しとなった。

「焼肉食べたい!」

 十分贅沢じゃないのか、と思ったが、口には出さずに二人を見送った。

 冷凍庫に眠っていたパスタをレンジでチンして、食った。

 この三週間、時間があれば彩の実家近くに売地や売家がないか探している。

 本当に家を建てるつもりなのか、彩は半信半疑のようで、電話でも話題にならなかった。が、俺は本気だ。

 本来であれば準備を整えて、一緒に暮らす目処が立ってからの予定だった。それが、彩にフられて音信不通になった恐怖心から、とりあえず入籍をするという、格好の悪い出だしになった。



 家を買って、札幌に戻る手はずを整え、挽回する!



 目が疲れてベッドに入り、ようやく指輪の刻印を見た。

『ARIGATOU』

 シンプルな一言が彩らしい。

『Thank you』じゃないのが、また彩らしい。



 ちょっと格好つけすぎたかな。



 彩は俺の刻印を見て、どう思ったろう。

 そんなことを考えながら、瞼を閉じた。

 翌日。

 俺は緊張気味に姉さん一家を待っていた。酒を飲むから、車は置いていく。

「智くん、具合悪いの?」

 真心が聞いた。

「智くんは、緊張してるのよ」と、姉さんがニヤニヤしながら言った。

「夏子、苛めんな」

「はーい」



 緊張するだろ、普通。



 自慢じゃないが、恋人の家族にすら会ったことがなかった。それが、いきなり家族大集合だ。



 酒の味、わかっかな……。



 なんて杞憂は、乾杯までだった。

 彩の家族には、俺も姉さんも、義兄さんも圧倒された。

 初対面とは思えない、久し振りに会った親戚くらいの距離感。

 真心と勇気も、兄ちゃん四人の騒がしさに目を丸くしたのは一瞬で、すぐに一緒になって騒ぎ出した。

 勇気がはしゃぎすぎて、ずっと奇声を発している。

「すみません、うるさくて」

 姉さんがよそ行きの顔で言った。

「全然! 仲良くなってくれて良かった」

「男四人でいたらゲームばっかりだから、真心ちゃんと勇気くんが来てくれて良かったです。私たち、四日までいるので、また遊びに来てください」と、璃子ちゃん。

 子供たちがそう呼んでいるので、俺もそう呼ぶことにした。

「旦那さんの実家にはいかないんですか?」

「はい。毎日顔を合わせてますから」

 璃子ちゃんと旦那さんの瑛ちゃんは、札幌で知り合って結婚したが、今は瑛ちゃんの実家のある道央に住んでいる。実家は自営業で、瑛ちゃんは次期社長。璃子ちゃんも事務を手伝っているらしい。

「それに、両親とあんまり仲良くないんで、休みっていうとこっちに来るんですよ」

「そうなんですか」
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