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25 家族
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しおりを挟む台所と居間を行ったり来たりする彩が、俺の前にそっとビールの缶を置いた。義兄さんの前にも。
「瑛ちゃんは? 焼酎にする?」
「はい」
「いつも飲んでるの、適当に買ってあるから」
「はい。いただきます」
瑛ちゃんはビールを飲み干して立ち上がり、台所へ行く。
「お義母さん、このハム食べてもいいですか?」
「あ、忘れてた! 持ってって。あ、それ、切れてるの?」
「切れてますよ」
瑛ちゃんが焼酎のグラスと真空パックの生ハムを持って戻ってくる。
「智くんも、ビール以外のは台所から好きに持って来て飲みなさい」
「あ、はい。ありがとうございます」
お義父さんは上機嫌で日本酒をすする。
「彩、お父さんは日本酒がもうちょっと飲みたいな」
「飲み過ぎじゃないの? すぐ寝ちゃうよ?」
「せっかくみんなで楽しいお酒を飲んでるんだから、いいじゃないか」
すでに酔いが回っているようで、顔が赤い。
「璃子! あんたは飲んでないで、少しは動きなさい」
「えー。新しいお義兄さんとの親交を深めるのも義妹としての大事な役目でしょう?」
「なに、都合のいいこと言ってるの」
彩はあまり酒を飲まないが、璃子ちゃんは大分強かった。お義母さんは台所で一仕事を終えると、後片付けは任せた、と言って缶ビールを飲み始めた。お義父さんは早々に潰れて、眠ってしまった。
腹いっぱい食べて、遊び疲れた勇気は、帰りたくないと言いながら眠ってしまった。真心も名残惜しそうだったが、帰り支度を始めた。少し会わない間に、すっかりお姉ちゃん
っぽくなった。
「智くんは泊まっていったらいいじゃない。彩の部屋だけど、くっつけば寝られるでしょ」
「えっ?」
「いいじゃないですか。もう少し一緒に飲みましょう」と、瑛ちゃん。
「瑛太のシャツとパンツ、新品のあるからそれ使っていーし」と、璃子ちゃん。
そんなこんなで、突然妻の実家に泊まることになった。
「姉さん、帰り道わかるか?」
すっかり酔った義兄さんにナビが出来るか心配になって聞いた。
「大丈夫よ。来る時にナビにルートを入れておいたから」
「夏子、今日はありがとう」と、彩。
「また来てね」と、お義母さん。
「夏子さんたちも家族なんだから」
まったく、お義母さんは人たらしだ。
俺や姉さん、義兄さんの欲しい言葉をあっさりくれる。
「ありがとうございます」
ペコッとお辞儀をして頭を上げた姉さんが、もう一度頭を下げた。今度は、深く。
「至らない弟ですが、どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ、不束者ですがよろしくお願いします」と、お義母さん。
「本当に、また遊びに来てくださいね」
「はい。ありがとうございます」
こうして、姉さんが俺の親代わりを務めるのは、高校三年の三者懇談が最後。担任は『親』との懇談を望んだが、二十歳を過ぎていた姉さんが『智也の保護者は私です』と言い切った。
あの頃を思い出して胸が痛むのは、酒のせいだ。
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