【ルーズに愛して】指輪を外したら、さようなら

深冬 芽以

文字の大きさ
14 / 147
2.OLC

しおりを挟む
「まっさかー」と、麻衣が笑う。

 既に酔いが回ってきているのか、顔が赤い。

 麻衣はお酒が好きだけれど、弱い。

 基本的には、私たちと一緒の時しか、飲まない。

「食事の後、後輩に何か言われた?」

「何も?」

「ふぅん……」



 その後輩、麻衣に惚れてるな……。



 麻衣以外の全員がそう思ったはずだが、あえて何も言わなかった。

 麻衣は強情なところがある。

 後輩を意識させるようなことを言えば、ムキになって後輩と距離を置くかもしれない。

「彼女に逃げられた男だったのかな」と、龍也が言った。

「麻衣は追いかけられなくて良かったねぇ」

 私は棒読みっぽく、言った。

「ま、何にしても、あの男とはもう会うなよ」

 陸の言葉に、麻衣が頷いた。

「婚活も悪いとは言わないけど、焦らない方がいいよ?」

 私の言葉に、麻衣が頷く。

「そうだよ! 結婚する前に、思いっきり仕事して遊んだ方がいいよ。結婚して子供が出来たら、簡単には別れられないし、失敗したと思っても遅いんだから」

 さなえの言葉に、その場の空気が冷えた。

 さなえは平然と唐揚げを頬張る。

 チラリと見ると、大和が気まずそうにビールを飲んでいた。



 夫婦喧嘩か……?



 大和が黙っているということは、やらかしたのは大和の方だろう。

 夫婦なんだから喧嘩もするだろうけれど、大和にベタ惚れで結婚したさなえが愚痴を言うのも聞いたことがなかったから、驚いた。

「さなえ、チゲ雑炊シェアしない?」と、麻衣が言った。

「うん。食べたい」

 麻衣がボタンを押して店員を呼ぶ。

「焼き鳥も頼んで。俺、食ってない」

「私、梅酒」

「ライムサワー」

「イカの一夜干し」

「みんな、自分で言って」

「大和、ご飯ものも食べなきゃ悪酔いするよ? ピザでいい?」

 さなえが言った。

「ああ」と、大和が呟いた。



 なにがあったんだか……。



 付き合いが長いとはいえ、それぞれに抱えているもの全てを知っているわけではない。

 偶然にも私はあきらの秘密を知り、あきらにも私の秘密を知られてしまったけれど、自分から言うつもりなんてなかった。



 軽蔑されたくない――。



 唯一、私が安らげるOLCこの場所を失いたくない。

 集まって一時間半が過ぎた頃、さなえのスマホが鳴った。

「もしもし。……いいえ。…………わかりました。すぐに迎えに行きます。……はい。すみません。……はい。お願いします」

「母さん?」

 電話を終えたさなえに、大和が聞いた。

「うん。大斗がぐずってるって。先に帰るね」

「俺も――」

「いいよ、大丈夫。お義母さんが家まで送ってくれるって」

 さなえはバッグとジャケットを抱えて、立ち上がった。

「ごめんね、みんな。また、ね」

「気を付けてね」

「さなえ――」

 見送ろうとして立ち上がろうとする大和の肩に手を置いて、さなえは阻止した。

「大和、飲み過ぎないでね」

「ああ」

「大斗くん、お大事にね」

「ありがとう」

 さなえが後ろ手にキチッと襖を締めた。だから、みんな見送りに出るタイミングを逃してしまった。

「悪いな、バタバタで」と、大和が言った。

「何言ってんの」と、私は言った。

「チゲ雑炊は食べられたから、良かった」と、麻衣が言った。

「珍しいね、夫婦喧嘩なんて」と、あきらが言った。

「あれって、やっぱそうなの!?」と、龍也。

「さなえがあんなこと言うの、初めて聞いたな」と、陸。

「ま、色々あるわよね。言いたくなきゃいいけど?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ボクとセンセイの秘密

七町 優
恋愛
高校2年のボクと24歳のセンセイの秘密を描いたストーリーです。 タイトルで分かるとは思うのですが、恋愛ストーリーです。 一応登場人物たちのいる学校は関西という設定です。 なので関西弁での会話が多くなります。 ボクとセンセイの濃いような淡いような恋愛ストーリーをお楽しみください。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!? 『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』 小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。 ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。 しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。 彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!? 過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。 *導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。 <表紙イラスト> 男女:わかめサロンパス様 背景:アート宇都宮様

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

処理中です...