【ルーズに愛して】指輪を外したら、さようなら

深冬 芽以

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6.決意

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『で、何しに来たんだよ。ようやく離婚届にサインする気になったか』

 美幸はクスッと笑った。

『今頃、あなたの職場じゃあなたが別居中の妻と復縁するんじゃないかって噂でもちきりかしら』

『は?』

『彼女は知ってるの? 私たちが別居している理由』

『お前には関係ない』

『関係ないのは彼女よ』

 言葉の意味がわからない。

 別居して一年半。

 自分が結婚していることも忘れてしまいそうなほど、関わりを絶っていた。

 俺は、美幸と会うどころか、声を聞くのも嫌だった。

 先日の結婚式の連絡で美幸からメールが届いた時も、最初は無視しようと思った。けれど、もういい加減、現実を向き合う時だと腹を括った。

 それは、ただただ、早く離婚を成立させて、千尋との関係を変えたいと思ったから。


 口ではそれを望まないようなことを言っていても、離婚を成立させて、ちゃんとプロポーズしたら受け入れてくれると思っていた。

 店員がサンドイッチとパスタを持って来た。


『パスタ、好きでしょう?』

 美幸の指示で、店員はサンドイッチを美幸の前に、パスタを俺の前に置いた。

『たまにはこうして一緒にランチを食べるのもいいわね』と言って、美幸が卵のサンドイッチを頬張った。

『冗談じゃない』

 俺はフォークにパスタを巻き付ける。

『何度も言っているでしょ? 私は離婚には応じない。諦めて、気楽な別居生活を楽しみましょう?』

 要するに、美幸は俺と千尋に釘を刺しに来たのだ。

 離婚はしない、と。

 千尋には大して効果があるとは思えないが、俺には効果覿面だ。

 こんなことをされたら、ただでさえ頑なな千尋の気持ちを変えるのは不可能になってしまう。

 結婚はおろか、復縁するなら別れましょう、と言われかねない。

『俺の恋人を牽制するくらいなら、お前の恋人の妻に離婚してくれと泣きついたらどうだ?』

『冗談でしょ? 私は彼の離婚なんて望んでないもの』

『まともじゃねーな。今更だが』

 俺はパスタを口に運んだ。さっさと食べ終えたくて、それはもう、一生懸命に。

『理解してもらおうなんて思ってないわ』

『都合良過ぎだろ』

『いいじゃない。夫婦なんだから』

『なら、目的くらい教えろよ』

『目的?』

『好きでもない男と結婚して、離婚はしない。本気で好きな男の離婚も望まない。だけど、関係は続けたい。そんな不毛な愛情の先に、何がある?』

 一年前、千尋が作ってくれたきのこの和風パスタを思い出す。

 あっさりしていて、心身共に疲れ果てていた俺の胃袋を温めて満たしてくれた。
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